勤務中に気分を立て直す支援|運動習慣とメンタルヘルス

ストレス・セルフケアを組み合わせた健康経営研修

勤務中に気分を立て直す支援|運動習慣とメンタルヘルス

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勤務中に気分を立て直す支援|運動習慣とメンタルヘルス

職場では、仕事中に気分が沈んだり、緊張が続いたりする場面があります。

クレーム対応のあと、会議で強い指摘を受けたあと、ミスをしたあと、苦手な相手と話したあと、急な依頼が重なったあと。

その場では仕事を続けていても、内側では気持ちが切り替わらないままになっている社員がいます。

人事総務・健康経営担当者が見落としたくないのは、社員本人の気持ちの弱さではありません。

勤務中に気分を切り替える方法が、職場に用意されていないことです。

「休んでください」と言われても、実際には休憩を取りにくい。

「気分転換しましょう」と言われても、どこで何をすればよいのか分からない。

「相談してください」と案内されても、忙しい職場では声をかけるタイミングがない。

このような状態では、社員は気分の落ち込みや緊張を抱えたまま、次の仕事へ戻ることになります。

この記事では、運動習慣とメンタルヘルスの関係を、勤務中の気分回復支援として整理します。人事総務・健康経営担当者、管理職、社内支援者が、職場で無理なく使える形にして見ていきます。

勤務中の気分回復支援として軽い運動や深呼吸を取り入れるイメージ

勤務中に気分を立て直すには、社員が短く使える回復行動を職場に置いておくことが大切です。

勤務中に気分を切り替える方法がない職場があります

職場のストレス対策では、「ストレスを減らすこと」に目が向きやすくなります。

もちろん、長時間労働、人間関係の負担、ハラスメント、慢性的な人手不足などは見直したい負荷です。

ただ、仕事をしている以上、緊張する場面や気持ちが沈む場面を完全になくすことはできません。

そこで大切になるのが、ストレスを受けたあとに、心と体を立て直しやすい状態を職場に用意しておくことです。

現場では、気分を切り替える場所も時間も方法もないまま、社員が次の業務へ入っていることがあります。

職場で起きていること 社員に残りやすい反応 職場で用意したい支援
クレーム対応後にすぐ次の電話へ入る 緊張や怒りが残る 短い呼吸、上司への一言共有、1分の間を置く
会議で強く指摘されたあと席に戻る 落ち込み、反省の長引き 席に戻る前に身体をゆるめる時間をつくる
ミス対応後に通常業務へ戻る 自己否定、不安、確認過多 責める反省ではなく、次の一手を確認する
忙しい部署で休憩が取りにくい 疲労感、集中力低下 会議前後や作業の区切りに短い回復行動を入れる
相談するほどではない不調が続く 抱え込み、孤立感 日常的に話せる声かけや軽い身体活動を置く

勤務中の気分回復支援は、大げさな制度だけで行うものではありません。

社員が「少し戻れた」と感じられる短い行動を、職場の中に置くことから始まります。

運動習慣は、気分を立て直す助けになります

運動は、体だけでなく心にも影響します。

体を動かすと、心拍数が上がり、呼吸も少し速くなります。これは体にとって一時的な負荷です。

その負荷が本人に合っていれば、運動後には気分がすっきりしたり、眠りやすくなったり、前向きな気持ちを取り戻しやすくなったりします。

このように、心身にかかる負荷が回復や行動につながる場合、そのストレスはユーストレス、つまり良性ストレスとして考えることができます。

ただし、「運動すれば誰でも元気になる」と単純に言うのは危険です。

運動が苦手な人、体力に自信がない人、疲れ切っている人にとっては、運動を強くすすめられること自体が負担になる場合があります。

だからこそ、職場の健康経営では、運動を押しつけるのではなく、社員が自分に合った方法で体を動かせる環境をつくることが大切です。

ストレス後の気分を保ちやすい人がいます

運動習慣のある人は、ストレスを受けたあとでも、前向きな気分を保ちやすい可能性があります。

Frontiers in Physiologyに掲載された研究では、定期的に運動している人と、あまり運動していない人を比べ、心理的なストレスを受けたときの反応を調べています。

その結果、運動習慣のある人は、ストレス後に前向きな気分が大きく下がりにくいことが示されました。

ここで大切なのは、運動している人が「ストレスを感じない人」だったわけではない点です。

ストレスは受けます。

しかし、そのあとに気持ちを戻す力が働きやすい可能性があります。

職場で必要なのは、社員がストレスを一切感じない状態を目指すことではありません。

大変なことがあっても、心と体を立て直せる状態をつくることです。

勤務中の気分回復には、大きな運動は要りません

健康経営の現場では、「社員にもっと運動してほしい」と考える担当者は多いはずです。

けれども、勤務中の気分回復支援では、大きな運動や長い運動時間を前提にしない方が現場に入りやすくなります。

職場で使いやすいのは、短く、静かに、周囲の目が気になりにくい行動です。

  • 会議の前に肩や首を軽く回す
  • 電話対応後に一度深く息を吐く
  • 席を立って水を飲みに行く
  • 昼休みに5分だけ外を歩く
  • 座ったままで足首を動かす
  • 仕事の区切りで背中を伸ばす
  • クレーム対応後に、少し時間を置いて次の対応へ入る

これらは、運動が得意な人だけの方法ではありません。

忙しい人や疲れている人でも、短く使いやすい回復行動です。

勤務中の気分回復支援では、「運動しましょう」よりも、「今の緊張を少し戻す方法を持ちましょう」と伝える方が現場に合いやすくなります。

運動を強くすすめると逆効果になることがあります

運動が苦手な人にとって、「運動しましょう」という言葉は重く聞こえることがあります。

特に、体力に不安がある社員、忙しくて疲れている社員、過去に運動で嫌な思いをした社員にとっては、運動の提案そのものがストレスになる場合があります。

そのため、職場では「運動しなければならない」という伝え方ではなく、「少し体を動かすと、気分転換になることがあります」という伝え方が向いています。

管理職や人事総務が気をつけたいのは、運動を健康意識の高い人だけのものにしないことです。

避けたい伝え方 社員に起こりやすい反応 職場で使いやすい伝え方
もっと運動しましょう できていない自分を責めやすい 今の体調に合う動き方を選びましょう
健康のために参加してください 強制感が出やすい 参加しやすい方法をいくつか用意しています
ストレス解消には運動が一番です 運動が苦手な社員が距離を置く 呼吸、休息、軽い動きなど選べる方法があります
短時間だからできますよね 忙しい部署ほど言いにくくなる 業務の区切りに入れやすい形を一緒に考えましょう

健康経営は、社員を管理するためのものではありません。

社員が自分の体調に気づき、自分に合った回復方法を選べるようにするためのものです。

小さな運動は、自己効力感にもつながります

運動の効果は、筋力や体重だけで判断するものではありません。

体を動かすことで、「少しできた」「気分が変わった」「今日は外に出られた」という感覚が生まれます。

この小さな達成感は、心の回復にとって大切です。

特に、ストレスが続いている人は、自分で状況を変えられないと感じやすくなります。

そんなとき、短い散歩や軽いストレッチでも、「自分のために行動できた」という感覚を取り戻す助けになります。

この感覚は、自己効力感と呼ばれます。

自己効力感とは、「自分にもできる」と感じる力のことです。

健康経営の研修では、この自己効力感を育てることが大切です。

社員に大きな目標を求めるより、今日できる小さな行動を見つけてもらう方が、現場では定着しやすくなります。

一人で頑張る運動より、つながりを生む運動

運動は、一人で黙々と行うものだけではありません。

ウォーキング、ラジオ体操、軽いストレッチ、チームで行うスポーツなど、誰かと一緒に行う身体活動には、人とのつながりを生む働きもあります。

2023年のシステマティックレビューでは、スポーツ参加が成人のメンタルヘルスや社会的な健康と関連することが示されています。

特に、チームスポーツや集団での活動は、孤立感の軽減やつながりづくりに役立つ可能性があります。

職場では、ここが大切です。

健康経営の取り組みとして運動を入れる場合、目的は「運動量を増やすこと」だけではありません。

社員同士が自然に声をかけ合うきっかけをつくること。

孤立している人が参加しやすい場をつくること。

気分が沈んだときに、一人で抱え込まずに戻れる場をつくること。

これも、メンタルヘルス支援の一部になります。

職場で起きやすい困りごとに置き換えて考えます

運動とメンタルヘルスの話は、個人の健康習慣だけで終わらせないことが大切です。

職場では、次のような困りごとが起こりやすくなります。

  • 休憩時間が短く、体を動かす余裕がない
  • 座りっぱなしの仕事が多く、肩こりや疲労感が強い
  • クレーム対応後に、気分を戻す時間がない
  • 会議続きで緊張が残ったまま次の予定へ入る
  • 職員同士の会話が少なく、孤立しやすい
  • 健康イベントをしても、参加する人がいつも同じ
  • 忙しい部署ほど、セルフケアが後回しになる

こうした職場では、「運動しましょう」と呼びかけるだけでは不十分です。

社員が短時間でも体を動かせる時間、場所、声かけを用意しておくことが大切です。

つまり、運動を職場で活かすには、社員の努力だけに頼らず、無理なく参加できる環境を整えることが必要です。

気分回復支援として職場に置きたい行動

勤務中の気分回復支援は、特別な設備がなくても始められます。

大切なのは、社員が仕事中に使える形になっていることです。

場面 職場に置きたい行動 目的
会議前 肩回し、深呼吸、姿勢を整える 緊張を少し下げる
会議後 席に戻る前に一度立ち止まる 指摘や反省を抱えたまま戻らない
クレーム対応後 水分を取る、上司に一言共有する 感情の負荷を一人で抱えない
長時間PC作業後 首・肩・背中を軽く動かす 身体のこわばりに気づく
昼休み 短い散歩、外気に触れる 気分の切り替えをつくる
終業前 今日の疲れを一度確認する 疲労を持ち越しにくくする

気分回復支援は、社員を元気に見せるためのものではありません。

仕事中に起きた緊張や落ち込みを、次の業務へ持ち越しすぎないための支援です。

人事総務・健康経営担当者が見たいこと

勤務中の気分回復支援を職場に入れる場合、人事総務・健康経営担当者は、次の点を見ておきたいところです。

  • 社員が勤務中に短く気分を切り替える方法を持っているか
  • 休憩が形式だけでなく、実際に取れる状態になっているか
  • 運動が苦手な社員にも、呼吸や休息など別の選択肢があるか
  • クレーム対応や会議後に、感情の負荷を一人で抱えていないか
  • 管理職が「切り替えて」だけで済ませていないか
  • 健康イベントが、日常業務の中の回復行動につながっているか

勤務中の気分回復支援は、社員個人のセルフケアだけでは続きにくいものです。

管理職の声かけ、休憩の取りやすさ、業務の区切り、職場の雰囲気と合わせて考えることで、実務に入りやすくなります。

専門職でも迷うポイント

勤務中の気分回復支援は、専門職でも判断に迷うことがあります。

理由は、気分の落ち込みや緊張が、外から見えにくいからです。

社員が席に戻って仕事をしている。返事もしている。表面上は普段通りに見える。

この状態では、「もう大丈夫」と見られやすくなります。

けれども、内側では気持ちが切り替わらず、同じ場面を何度も思い出していることがあります。

専門職でも迷うのは、どこまでを通常の疲れとして見て、どこから職場として声をかけるかです。

そこで、まずは診断ではなく、回復行動があるかを見ます。

短い休憩が取れているか。呼吸を整えられているか。誰かに一言共有できているか。次の業務へ入る前に、少し間を置けているか。

この視点を管理職と共有しておくと、勤務中の気分回復支援が動かしやすくなります。

社内で動かしにくい理由

勤務中の気分回復支援が社内で動かしにくい理由は、関係者が見ているものが違うからです。

人事総務は、健康経営やストレス対策として見ています。

管理職は、業務時間や現場の忙しさを見ています。

社員本人は、「休んでいると思われたくない」「弱いと思われたくない」と感じていることがあります。

社内支援者や専門職は、気分の落ち込み、疲労、睡眠、相談しやすさを見ています。

それぞれの見方は、どれも間違いではありません。

ただ、同じ言葉で話せていないと、「気分転換は各自でしてください」で止まりやすくなります。

職場で必要なのは、社員任せの気分転換ではありません。

勤務中に使える回復行動を、職場の仕組みとして置いておくことです。

タニカワ久美子の企業研修での扱い方

タニカワ久美子の企業研修では、運動を「健康意識の高い社員が自主的に行うもの」として扱いません。

座りっぱなしの事務職、休憩を取りにくい介護現場、会議続きで体を動かす時間がない管理職など、現場ごとの働き方を前提にして、無理なくできる身体活動をストレス管理の入口にしています。

研修の場では、「運動が苦手です」「疲れているのに運動まで求められるとつらいです」という声が出ることがあります。

また、「勤務中に気分を切り替える方法がない」「クレーム対応後もすぐ次の仕事に入っている」「会議で落ち込んでも、そのまま席に戻るしかない」という声が出ることもあります。

この声は、職場の気分回復支援を考えるうえで重要です。

社員が弱いのではなく、気分を戻す方法が職場に置かれていないからです。

そのため、けんこう総研では、運動量を増やす話から始めません。

まず、肩を回す、立ち上がる、深く呼吸する、会議の前後に体をゆるめるなど、仕事の中でできる小さな回復行動から入ります。

社員にとって大切なのは、「もっと頑張ること」ではありません。

ストレスを受けたあとに、自分の状態を戻す方法を持っていることです。

運動習慣は、そのための一つの選択肢になります。

ユーストレスとして運動習慣を見る

ユーストレスとは、心や体に負荷はかかるけれど、その負荷が回復や前向きな行動につながるストレスのことです。

運動習慣は、そのわかりやすい例です。

体を少し動かすと、心拍数が上がり、筋肉も使います。これは負荷です。

しかし、その負荷がちょうどよければ、気分転換、達成感、睡眠の改善、体力の維持につながります。

反対に、強すぎる運動、強制される運動、人と比べられる運動は、ディストレスになることがあります。

つまり、運動の価値は「どれだけ頑張ったか」ではなく、「その人に合った負荷になっているか」で決まります。

この考え方は、職場のストレス対策にもそのまま使えます。

ユーストレスの定義、ディストレスとの違い、職場での活かし方については、ユーストレス(良性ストレス)とは|職場で活かすストレス資源の全体像で紹介しています。

まとめ|勤務中に気分を戻せる職場をつくる

運動習慣は、ストレスを完全になくす方法ではありません。

けれども、無理のない身体活動は、気分を整え、前向きな気持ちを保ち、心と体の回復を助ける行動になります。

健康経営で大切なのは、社員に運動を押しつけることではありません。

社員一人ひとりが、自分に合った回復方法を選べるようにすることです。

勤務中に気分が沈んだとき、緊張が続いたとき、強い対応のあとに疲れが残ったとき、職場に切り替える方法があるかどうか。

ここを整えることで、ストレス対策は個人の努力ではなく、職場の支援になります。

けんこう総研では、ユーストレスとディストレスの考え方をもとに、勤務中の気分回復支援、社員のセルフケア、管理職の声かけ、ストレスチェック後の職場改善につながるストレスマネジメント研修を行っています。

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出典

文責:タニカワ久美子

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