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認知再構成法を用いた介入評価/ストレス文献memo
2022年3月10日更新
目的:感情対処傾向の変容効果を検証
認知再構成法を用いたWeb版教育プログラムを実施した.介入評価
研究デザイン
対照群を設置しない非ランダム化前後比較
研究対象者
感情労働の中でも最もストレスが高いとされる表出抑制を,多く体験しているのが若い看護師で,年齢・性別・勤務病棟(手術室勤務を除く)不問の経験年数10年未満.
サンプルサイズは,効果量0.25,有意水準5%,検出力0.8
ドロップアウト率を2割程度考慮て,必要対象者数を36名程度.介入および調査実施期間は,2017年1月~2017年4月
3. 介入概要(Web版教育プログラム内容)
認知再構成法(cognitive restructuring)を用いて対処を行うプログラム
不規則な勤務体制なためWebを活用しパソコンやスマートフォン等から随時アクセス可能なプログラムにより,実施場所や実施時間の自己選択の幅を確保した.
4.使用した測定法(尺度)
看護師版感情対処傾向尺度(金子ら,2017)
看護場面における対患者(家族を含む)関係で体験した看護師の感情に患者志向・自己志向の両側面から相互対処の傾向を明らかにするもの.
4つの下位尺度「患者感情優先対処」「自己感情優先対処」「両感情調整対処」「両感情回避対処」17項目を5件法
STAI日本語版(State-Trait Anxiety Inventory)(清水・今栄,1981)
状態-特性不安を測定する尺度として,Spielberger et al.(1970)のSTAI(State-Trait Anxiety Inventory:状態-特性不安検査)の日本語版として清水・今栄(1981)の作成した尺度
不安=「状態不安」+「特性不安」
「状態不安」=自律神経の興奮などを伴う一時的,状況的なのみ使用.20項目を4件法
SOC(Sense of Coherence:首尾一貫感覚)(Antonovsky, 1987/2001)
自分自身の生活世界に対する見方・向き合い方の感覚を測定する尺度(Sense of Coherence: SOC)
SOCの強い人は感情的刺激に対してよりポジティブにとらえ感情調整も容易
測定は12項目7件法
対象者の基本属性
年齢,看護経験年数,性別,勤務病棟,基礎教育機関の5項目
5. 分析方法
教育プログラムの介入効果を測定するために,
3種類の心理測定尺度と
介入前調査,介入後調査,介入後1ヵ月の3回調査時における,被験者内の経時的変化
一元配置の分散分析(反復測定)を用いBonferoni多重比較により時期間の変化を検討
※Bonferoni = 多重比較検定の一つで、すべての対比較を行う検定のこと。 対比較の数に応じて有意水準を調整するため、対比較の数が多くなると検出力が低くなる。
統計学的検定では、様々な場面で多重性の問題が発生する。
多重性の問題は統計担当者が一番頭を悩ませる問題
多重比較をすると問題なのが、全体的なαエラーが増大する
αエラーの増大を防ぐために、対処する方法で最も有名なのがボンフェローニ法(Bonferroni法)と呼ばれる「有意水準を補正する」方法
例
有意水準が0.05で、検定を2回実施したい時。
1.それぞれの検定の有意水準を0.05/2=0.025に調整する。
2.検定を2回実施した場合、Bonferroni法で有意水準を調整して検定したら、P値が0.025を下回って初めて有意になる
共変量
分散分析を行うときに解析に含めるデータのうち,連続量で量的に表される変数のこと.
回帰分析で呼ぶところの説明変数(独立変数)と同等
共変量は通常、分散分析(ANOVA)とDOEで使用
共変量を追加することでモデルの精度を大きく高めることができ、さらには最終的な分析結果にも大きな影響を与えます。また、モデル内の誤差が削減され、因子検定の検定力も上がります。
経験年数と年齢は相関が高い⇒共変量
※内容をシンプルに明確化するため、敢えて割り切った語尾を使用しております。
出典:金子多喜子ら;感情労働に伴う感情対処育成のためのweb版教育プログラムの検討,日本看護科学会誌,2019(39)45-53