ストレス科学ラボ・用語バンク
ユーストレスの意味と企業での効果|健康経営の新潮流
ユーストレス(eustress)は、近年欧米の組織心理学・健康経営領域で再評価されている概念ですが、日本語での良質な解説や現場実装例はほとんどありません。本稿では、国内外の最新学術研究と企業現場での応用を交え、「日本初のユーストレス専門記事」としてお届けします。

ストレス状態や心拍変動(HRV)のデータをグラフで可視化することで、ユーストレスを科学的に評価し、健康経営の現場で活用できます
ユーストレスとは何か?
「ストレス=悪」と思われがちですが、ユーストレスは「良いストレス」「成長を促すストレス」として心理学的に明確に定義されています(Selye, 1974)。挑戦・達成・学び・成長といった前向きな心理状態や行動変容を促す働きを持ち、従来の「ディストレス(苦痛)」とは全く異なる作用をもたらします。
ユーストレスの科学的根拠とメカニズム
近年の研究では、適度なストレス刺激が認知機能やパフォーマンス向上、レジリエンス形成に不可欠であることが実証されています(Le Fevre et al., 2003/Merino et al., 2021)。「ヤーキス・ドッドソンの法則」では、一定のストレス負荷が個人・組織の能力開発に有効であるとされ、適応的ストレス反応を促す重要な要素として認識されています。
ユーストレスの特徴
- 挑戦・達成・学習へのモチベーション上昇
- ポジティブな感情体験(ワクワク感・やりがい)
- 認知機能や問題解決能力の向上
- 自己効力感とレジリエンスの強化
企業・組織におけるユーストレス活用の意義
現代の健康経営・人的資本経営では、単なる「ストレスの排除」ではなく、ユーストレスをいかに組織文化・人事施策に取り入れるかが注目されています。従業員の挑戦機会、ジョブクラフティング、キャリア開発支援など「適度なストレッチ目標」を設計することで、主体的成長・パフォーマンス向上につなげることが可能です。
現場での具体的導入ポイント
- ストレスチェック結果を「リスク抽出」だけでなく「成長資源」として分析
- 挑戦とサポートのバランスを保つ業務設計・人材育成
- エンゲージメント向上・離職防止施策としての活用
- 研修・1on1・フィードバック面談でのユーストレス活用
ユーストレスとディストレスの違い
ユーストレスは「ポジティブなストレス」、ディストレスは「有害なストレス」と区別されます。最新研究では、同じストレッサー(例:新しい仕事、プレゼン発表)でも、本人の意味づけ・サポート環境・自己効力感によって、ユーストレスにもディストレスにもなり得ることが示唆されています(Lazarus & Folkman, 1984)。
ユーストレス | ディストレス |
---|---|
挑戦・成長機会と感じる | 脅威・過負荷と感じる |
パフォーマンス・満足度向上 | 健康障害・燃え尽きのリスク |
エネルギー・集中力が高まる | 疲労・不安・回避傾向が強まる |
学術エビデンス・主要論文
- Selye, H. (1974). Stress without distress. New York: Lippincott.
- Le Fevre, M., Matheny, J., & Kolt, G. S. (2003). Eustress, distress, and their interpretation in occupational stress. Journal of Managerial Psychology, 18(7), 726–744.
- Merino, M. D., et al. (2021). Multidimensional approach to occupational stress during COVID-19. Int. J. Environ. Res. Public Health, 18(7), 3737.
- Lazarus, R. S., & Folkman, S. (1984). Stress, Appraisal, and Coping. Springer.
けんこう総研の強み|ユーストレス研修・コンサルティング
けんこう総研は、ユーストレスを科学的に評価・実装する日本有数の専門機関です。最新の心理尺度や組織開発理論を活用した研修・コンサルティングを通じて、御社の健康経営推進・人的資本最大化を支援します。
- エビデンス重視のストレス評価とPDCA設計
- 成長資源としてのユーストレス活用支援
- 離職防止・組織活性化のためのオーダーメイド施策
健康経営担当者・人事ご担当の皆さまへ:
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この記事を読んだ方によくある質問
Q1. ユーストレスは全てのストレスの中に含まれるのですか?
ユーストレスはすべてのストレスの一部ではなく、主観的に「前向きな挑戦」と感じられるストレス反応のみを指します。ストレスの質的な違いに着目する必要があります。
Q2. ユーストレスはどのように評価・測定されますか?
最新の研究では、感情的・身体的・行動的指標から成るMEDS尺度や、ストレス認知尺度(PSS)が推奨されています。従業員サーベイなどでも応用可能です。
Q3. ユーストレスを企業研修でどう活かすのですか?
挑戦的な目標設定やキャリア開発、フィードバック面談の質向上など、従業員がポジティブな負荷を感じる場面を意識的に設計し、現場のエンゲージメント向上に直結させます。
Q4. ユーストレスと健康経営の関係は?
ユーストレスは、従業員の主体的成長やレジリエンス向上を促すことで、人的資本経営・健康経営の推進に極めて重要な役割を果たします。