ストレス研究memo
職場におけるバーンアウトのリスクとストレス要因
2024年5月7日更新
職場での持続的なストレスは、バーンアウト症候群を引き起こす主要な要因とされています。バーンアウト症候群とは、情緒的消耗、脱人格化、個人的達成感の低下の三つの症状によって特徴付けられる状態です。これらの症状は、職業上の高いストレスが長期間にわたって蓄積することで引き起こされる可能性があります。
日本におけるバーンアウトの評価
日本では、バーンアウトの傾向を診断するために、バーンアウト測定尺度(MBI)に基づいたチェックリストが広く用いられています。このチェックリストには、仕事への意欲減退や職場への否定的感情、専門家としての効力低下など、バーンアウトの典型的な症状が含まれており、個々の症状に応じてバーンアウトの程度を評価することが可能です。
バーンアウトとストレスの関係
学術研究によれば、ストレスとバーンアウトは密接に関連しています。特に、心理的ストレスが高まると、バーンアウトのリスクも高まることが示されています。例えば、医学生を対象にした研究では、学業ストレスが心理的ストレスおよびバーンアウトレベルを増加させることが明らかにされ、適切なストレス管理と感情知能の向上がバーンアウトの予防に有効であることが示唆されています。
医学生のストレスと心理的健康
医学生は、一般人と比較して心理的健康のレベルが似ているものの、医学訓練が始まると、心理的ストレスが高まりやすくなります。これは、医学および健康科学のコースにおける心理的ストレススコアが他の学部よりも高いことからも窺えます。この事実は、医学訓練が若い医学生にとって非常に挑戦的で要求の多いものであることを示唆しています。
バーンアウトの影響
医学生の間でバーンアウトの発生率は約43.3%にも上り、そのうち約35-45%が高い情緒的消耗を経験し、26-38%が脱人格化を経験し、45-56%がバーンアウトの症状を示しています。これらのデータは、学業ストレスが心理的苦痛およびバーンアウトに寄与することを示しており、個人的および専門的な問題につながる可能性があります。
個性における心理的健康とバーンアウト
特定の個性、特に神経症傾向を持つ学生は、心理的ストレスおよびバーンアウトを発展させやすいとされています。神経症的な特性は、否定的な感情を経験しやすく、情緒的不安定性やうつ病傾向が見られることが特徴です。これは、ストレスの多い医学訓練において、彼らがよりストレスを感じやすいことを意味します。
感情知能の役割
感情知能(EI)は、医学生や将来の医師の能力に重要な影響を与える要素として認識されています。高いEIを持つ個人は、抑うつや不安のレベルが低く、バーンアウトのリスクも低いことが示されています。そのため、医学生の感情知能を育成するプログラムの導入が推奨されています。
結論と今後の展望
この研究は、心理的ストレス、学業ストレス、個性、感情知能がバーンアウトに与える影響とその因果関係を明らかにしました。医学生における心理的ストレスの増加がバーンアウトのレベルを高めることが確認され、学業ストレスと神経症傾向が心理的ストレスを増大させることによってバーンアウトに寄与していることが示されました。また、感情知能はバーンアウトを直接的に軽減する効果があることも明らかになりました。今後は、これらの結果を基に、医学生の心理的健康を支援するための具体的な対策が求められます。
参考文献:Muhamad Saiful Bahri Yusoff, Siti Nurma Hanim Hadie ,Mohd Azhar Mohd Yasin (2021):The roles of emotional intelligence, neuroticism, and academic stress on the relationship between psychological distress and burnout in medical students;BMC Medical Education ( 21), 293