ストレスは有害なのか|職場で減らす負荷と活かす負荷

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ストレスは有害なのか|職場で減らす負荷と活かす負荷

ストレスは、本当にすべて有害なのでしょうか。

職場のストレス対策では、「ストレスを減らす」「ストレスをなくす」という言い方がよく使われます。
もちろん、長時間労働、ハラスメント、休めない状態、強い不安が続く状態は、早く見つけて減らす必要があります。

一方で、すべてのストレスを悪いものとして扱うと、挑戦、集中、成長、達成感につながる負荷まで避けてしまうことがあります。
職場で重要なのは、ストレスを一律に悪者にすることではありません。
減らすべき負荷と、支援を整えれば活かせる負荷を分けて見ることです。

本記事では、ストレスが有害と考えられやすい背景と、職場で「減らすべきストレス」と「活かせるストレス」を見分ける視点を、人事総務・健康経営担当者向けに整理します。

ストレスはすべて有害なのか

結論から言うと、ストレスはすべて有害ではありません。

ストレスとは、仕事量、人間関係、責任、納期、評価、環境変化などに対して、心と体が反応することです。
大事な発表の前に緊張する、締め切りがあることで集中する、新しい仕事に挑戦して準備する。
このような反応は、行動を助けることがあります。

一方で、負荷が強すぎる、長く続く、相談できない、休めない、失敗が許されない状態では、ストレスは心身を消耗させます。

つまり、重要なのは「ストレスがあるか、ないか」ではありません。
そのストレスが、社員の成長や集中につながっているのか、それとも疲労や不調につながっているのかを見分けることです。

ストレス反応は、体が準備しているサインでもある

ストレスを感じると、心拍が上がる、呼吸が浅くなる、筋肉が緊張する、汗をかく、胃が重くなるといった反応が起こることがあります。
こうした反応は、不快に感じることがあります。

しかし、体の反応そのものがすべて悪いわけではありません。
大事な場面で心拍が上がるのは、体がその場面に対応しようとしている反応でもあります。

問題は、その反応が一時的で終わるか、長く続いて疲労や不調につながるかです。

状態 一時的なストレス反応 注意が必要なストレス反応
心拍・緊張 発表前や重要場面で一時的に高まる 仕事後も緊張が抜けない
集中 準備や確認行動につながる 焦りで判断が狭くなる
疲労 休めば戻る 休日でも回復しない
気分 終わった後に達成感がある 不安、無力感、イライラが続く

職場では、反応が起きたことだけで判断せず、回復できているかを必ず確認します。

なぜストレスは悪者扱いされやすいのか

ストレス研究の歴史では、ハンス・セリエの研究がよく知られています。
セリエは、身体がさまざまな負荷に反応する仕組みに注目し、汎適応症候群という考え方を示しました。
一般適応症候群と呼ばれることもあります。

この研究により、ストレスが健康や病気と関係する重要なテーマとして扱われるようになりました。
一方で、ストレスという言葉は非常に広く使われるようになりました。

強い苦痛、病気に関わる反応、日常生活の緊張、仕事上のプレッシャーまで、すべてが「ストレス」と呼ばれるようになったため、ストレスは悪いものという印象が強まりました。

しかし、日常の適度な緊張と、心身を傷つける過重な負荷は同じではありません。
人事総務・健康経営担当者は、この違いを分けて見る必要があります。

減らすべきストレスと、活かせるストレス

職場では、ストレスを「良い・悪い」という言葉だけで分けるより、減らすべきストレスと、条件を整えれば活かせるストレスとして見るほうが実務に使いやすくなります。

分類 職場での例 必要な対応
すぐ減らすべきストレス ハラスメント、過重労働、孤立、休めない状態 職場改善、相談対応、業務調整を行う
支援を整えれば活かせるストレス 新しい仕事、昇進、発表、責任ある役割 目標、支援、裁量、回復を整える
見直しが必要なストレス 本人は頑張っているが疲労が強い状態 面談、負荷調整、管理職支援を行う

この分類ができると、ストレスチェック後の職場改善、管理職研修、従業員向け研修が実務につながりやすくなります。

ストレスを有害にする職場条件

ストレスが有害になりやすいのは、負荷そのものが強い場合だけではありません。
支援がない、裁量がない、休めない、相談できない状態が重なると、ストレスは不調につながりやすくなります。

  • 業務量が慢性的に多い
  • 納期や責任が重すぎる
  • 上司に相談しにくい
  • 失敗を強く責める空気がある
  • 休憩や休日でも仕事の緊張が抜けない
  • 役割や評価基準があいまい
  • 成果を出しても次の負荷がすぐに来る

このような状態では、社員に「前向きに考えよう」と伝えるだけでは不十分です。
業務量、役割、支援、相談先、回復時間を見直す必要があります。

ストレスを活かせる条件

ストレスが成長や集中につながるには、条件があります。
単にプレッシャーをかければよいわけではありません。

条件 職場での意味
目標が明確 何を達成すればよいか分かる
本人に合った負荷 少し努力すれば取り組める範囲である
相談できる 困ったときに上司や同僚に話せる
裁量がある 進め方や優先順位を調整できる
回復できる 終わった後に休める、振り返れる
意味がある 仕事の目的や成長とのつながりが分かる

この条件が整うと、ストレスは単なる苦痛ではなく、行動や学びにつながる場合があります。
しかし、条件が欠けると、同じ負荷でも健康リスクになるストレスへ変わります。

管理職が注意したい声かけ

「ストレスは味方になる」という考え方は、使い方を間違えると危険です。
管理職がこの言葉を使うと、部下には「もっと我慢しろ」と聞こえることがあります。

避けたい声かけ 問題点 望ましい声かけ
ストレスは味方だから頑張って 本人の負担を軽く見てしまう 今の負荷は対応できる範囲ですか
プレッシャーがあるほうが伸びる 人による違いを無視している どの部分に一番負担を感じていますか
成長のためには我慢も必要 過重労働を正当化しやすい 成長につなげるために、何を調整しましょうか
前向きに考えよう 職場側の問題を本人の考え方に押しつけやすい 仕事量や相談先も一緒に確認しましょう

管理職に必要なのは、ストレスを美化することではありません。
部下の負荷が成長につながっているのか、健康リスクになっているのかを見分けることです。

健康経営で確認したい視点

人事総務・健康経営担当者は、ストレス施策を設計するときに、次の点を確認する必要があります。

  • 減らすべきストレスを「成長機会」と呼んでいないか
  • 社員に前向きさだけを求めていないか
  • 管理職が部下の疲労や回復不足を見られているか
  • ストレスチェック後の職場改善につながっているか
  • 支援、裁量、相談先、回復時間が整っているか
  • 挑戦を与える場合でも、業務量や期限が現実的か

健康経営で必要なのは、ストレスを一律に悪者にすることでも、無理に味方にすることでもありません。
社員の健康を損なう負荷は減らし、成長につながる負荷には支援と回復をセットで整えることです。

ユーストレスとの関係

成長や前向きな行動につながる良性のストレスは、ユーストレスと呼ばれます。
一方で、心身を消耗させるストレスは、ディストレスと呼ばれます。

この記事では、ストレスは有害なのかという視点から整理しました。
ユーストレスの定義、ディストレスとの違い、職場での活かし方については、
ユーストレス(良性ストレス)とは
で詳しく整理しています。

タニカワ久美子の企業研修ではどう扱うか

タニカワ久美子の企業研修では、ストレスを「すべて悪いもの」としては扱いません。
一方で、「ストレスは味方になる」と単純にも伝えません。

社員本人には、自分のストレス反応を、集中や達成感につながっているのか、疲労や不調につながっているのかを見分ける視点を伝えます。
管理職には、部下にプレッシャーをかけるのではなく、目標、支援、裁量、相談先、回復時間を整える視点を伝えます。

現場では、「成長のため」として任せた仕事が、実際には過重負荷になっていることがあります。
反対に、目標が明確で、相談できる相手がいて、終わった後に回復できる場合は、同じ負荷が学びや達成感につながることもあります。

この違いを整理できると、人事総務・健康経営担当者は、ストレスチェック後の職場改善、管理職研修、社員研修を実務につなげやすくなります。

まとめ|ストレスは有害にも、有益にもなり得る

ストレスは、すべてが有害なものではありません。
適度な緊張や責任感は、集中、準備、達成感、成長につながることがあります。

一方で、強すぎる負荷、長く続く緊張、支援不足、休めない状態は、心身を消耗させます。

職場で重要なのは、ストレスを「ある・ない」で判断しないことです。
そのストレスが社員の成長につながっているのか、疲労や不調につながっているのかを見分ける必要があります。

人事総務・健康経営担当者に必要なのは、ストレスを一律に悪者にすることでも、無理に味方にすることでもありません。
減らすべきストレスを減らし、支援を整えれば活かせるストレスを安全に扱うことです。

職場のストレス管理研修への活用

けんこう総研では、企業・介護施設・教育機関向けに、ユーストレスとディストレスの違い、ストレス反応、管理職ラインケア、ストレスチェック後の職場改善を含めたストレスマネジメント研修を行っています。

研修では、ストレスを「すべて悪いもの」として扱うのではなく、職場で減らすべき負荷と、支援を整えれば成長につながる負荷を分けて整理します。

社員の不調予防と職場の活力向上を両立させたい場合は、ストレスマネジメント研修をご覧ください。

引用・参考文献

  • Selye, H. (1974). Stress without Distress. J. B. Lippincott.
  • Le Fevre, M., Matheny, J., & Kolt, G. S. (2003). Eustress, distress, and interpretation in occupational stress. Journal of Managerial Psychology, 18(7), 726–744.

文責:タニカワ久美子

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