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深夜残業によるランナーズハイ現象と健康リスク
私が携わっている教育現場では、例年以上に多忙な日々が続いています。在宅でのデスクワークや授業準備も山積し、深夜までパソコン作業が続くことも珍しくありません。
深夜残業で起こる“ランナーズハイ現象”とは
深夜までの残業が続くと、筋肉の硬直や血行不良、極度の疲労感とともに「なぜか妙にハイテンションになる」という経験をされた方も多いのではないでしょうか。これは脳内麻薬と呼ばれるエンドルフィン等の神経伝達物質が関与しています。

脳にモルヒネのような受容体(receptor)があります
残業が長引くと分泌される「脳内麻薬」
アメリカの神経科学者らは、脳内にモルヒネ様物質を受け取る受容体(receptor)が存在することを発見しています。エンドルフィンはモルヒネ同様に痛みやストレスを緩和し、一時的な高揚感・多幸感を生じさせます。これは長時間運動時に起きる「ランナーズハイ」でも同様に確認されています。

実際にマラソン選手の血液を調べるとエンドルフィン濃度の上昇が確認されており、強い疲労やストレス時には脳から分泌が促されることが分かっています。
エンドルフィンの働きと深夜残業時のリスク
エンドルフィンの分泌は一時的な達成感やハイテンションをもたらしますが、健康障害を予防するものではありません。特にデスクワークによる深夜残業の場合、睡眠不足や慢性的疲労・メンタルヘルス低下など、翌日の作業効率や安全性に重大なリスクが生じます。エンドルフィンは「一時的な鎮痛剤」に過ぎないため、根本的な疲労回復や健康維持にはつながりません。
深夜残業と健康障害リスク
睡眠不足とストレス蓄積による障害
パソコンのディスプレイ画面から発するブルーライトは、不眠症や睡眠障害の原因となります。睡眠不足が続けば、集中力の低下、気力減退、心身の健康障害を招きます。健康経営を推進するには、質の良い睡眠と休息の確保が不可欠です。
ヒューマンエラー・事故リスクの増加
エンドルフィンによる一時的な高揚状態の後は、急激な疲労感・注意力低下を招きやすく、ヒューマンエラーや作業事故のリスクが高まります。
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けんこう総研では、企業・教育機関・医療介護現場の健康経営推進に向けて、ストレス管理研修やセルフケア支援、メンタルヘルス教育を専門的に実施しております。働き方改革や従業員の健康増進に関するご相談は、ぜひお気軽にご連絡ください。
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参考文献
- Boecker H, et al. “The Runner’s High: Opioidergic Mechanisms in the Human Brain”, Cerebral Cortex, 18(11):2523–2531, 2008.
- Shin LM, Liberzon I. “The neurocircuitry of fear, stress, and anxiety disorders”, Neuropsychopharmacology. 35(1):169-191, 2010.
- 厚生労働省『働く人のメンタルヘルス対策』