感情労働ストレスの呼吸法を社員任せにしない判断

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感情労働ストレス

感情労働ストレスの呼吸法を社員任せにしない判断

接客、窓口対応、医療、介護、教育、コールセンター、管理職の面談対応など、人と向き合う仕事では、自分の感情を抑えながら相手に合わせる場面が多くあります。

仕事中は落ち着いて対応していても、対応が終わったあとにどっと疲れる。肩や首に力が入る。呼吸が浅くなる。帰宅してから、ようやく緊張がほどける。

このような状態は、本人の気持ちの弱さではありません。

感情労働ストレスが、身体の緊張として残っている可能性があります。

この記事では、呼吸法や筋弛緩法の詳しい手順を教えるのではなく、人事総務・健康経営担当者が「身体に出ている感情労働ストレスを、社員のセルフケア任せにしていないか」を見るための視点を整理します。

感情労働ストレス研修を社内で検討するときの確認点は、感情労働ストレス研修の選び方でも整理しています。この記事では、呼吸法・筋弛緩法を職場でどう扱うかに絞ります。

感情労働ストレスは身体にも残る

感情労働ストレスは、心の中だけで起きるものではありません。

相手の怒りを受け止めながら冷静に話す。理不尽だと感じても丁寧に説明する。疲れていても笑顔で対応する。部下の不安を聞きながら、管理職として落ち着いた態度を保つ。

こうした対応が続くと、身体は緊張を保ちやすくなります。

呼吸が浅い。肩が上がっている。首やあごに力が入る。声が出しにくい。胸がつまる。対応後も手や腕に力が残る。

本人は「普通に仕事をしているだけ」と思っていても、身体には負担が出ていることがあります。

人事総務や管理職が見たいのは、社員が落ち着いて対応できているかだけではなく、その対応後に身体の緊張が残っていないかです。

呼吸法を「やっておいて」で終わらせない

呼吸法は、感情労働ストレスを整えるために役立つ方法の一つです。

ただし、職場で「呼吸法をやってください」と伝えるだけでは、実際には使われにくいことがあります。

社員が強い対応を終えた直後、次の業務にすぐ入らなければならない。休憩室に行く余裕がない。呼吸を整えること自体が、周囲から「暇そう」に見られそうで気になる。

この状態では、呼吸法は知識としては理解されても、職場では使えません。

人事総務が見るべきなのは、呼吸法を知っているかどうかではありません。

社員が、感情的に重い対応のあとに一呼吸おける職場状態になっているかです。

筋弛緩法も、個人の努力だけでは続かない

筋弛緩法は、身体に入っている力みに気づき、緊張をゆるめるための方法です。

感情労働ストレスが強い職場では、肩、首、手、あご、背中に力が入りやすくなります。

けれども、筋弛緩法も「各自でやってください」だけでは続きません。

社員が自分の身体の緊張に気づくには、まず「緊張していてもおかしくない仕事をしている」と理解できる必要があります。

その理解がないまま実技だけを渡すと、社員は「また自分で整えなければならない」と感じることがあります。

筋弛緩法を職場に入れるときに大切なのは、やり方そのものよりも、どの業務の後に身体の緊張が残りやすいのかを職場で見えるようにすることです。

職場で見たい判断材料

身体に出るサイン 現場で起きている可能性 人事総務・管理職が見る判断
呼吸が浅い 緊張した対応が続いている 対応後に一呼吸おける余地があるか
肩や首に力が入る 怒りや不安を抑えて対応している 身体の緊張を本人任せにしていないか
声が出しにくい 説明や謝罪、面談対応で気を張っている 重い対応が同じ人に偏っていないか
対応後にどっと疲れる 表情や態度を整え続けている 次の業務にすぐ戻らせていないか
帰宅後に緊張がほどける 職場で緊張を下げる場がない 職場内で回復できる余白があるか

身体から整える方法を、根性論にしない

呼吸法や筋弛緩法は、気合いで乗り切るための方法ではありません。

社員に「これをやれば大丈夫」と渡してしまうと、職場の負担が見えにくくなります。

大切なのは、身体から整える方法を、セルフケアとラインケアの間に置くことです。

社員自身は、自分の緊張に気づく。

管理職は、感情的に重い対応のあとに、社員がすぐ次の対応へ入っていないかを見る。

人事総務は、呼吸法や筋弛緩法を「個人の努力」ではなく、感情労働ストレスを早めに見えるようにする入口として扱う。

この分け方がないと、実技は良い方法であっても、現場では自己管理の追加課題になってしまいます。

実技が定着しない職場で起きていること

研修で呼吸法や筋弛緩法を扱っても、職場で定着しないことがあります。

その理由は、社員の意識が低いからとは限りません。

使う場面が決まっていない。管理職が実技の意味を理解していない。忙しい時間帯に「自分だけ整える」ことに気が引ける。感情労働の負担が共有されないまま、方法だけが渡されている。

この状態では、呼吸法も筋弛緩法も、職場の行動にはなりにくくなります。

人事総務が見るべきなのは、研修で実技を実施したかどうかではありません。

社員が、実際の業務場面で使える状態になっているかです。

専門職でも迷う判断ポイント

専門職でも迷うのは、どこまでを社員のセルフケアとして扱い、どこから職場の支援として見るかです。

呼吸法も筋弛緩法も、社員本人が行う方法です。

ただし、感情労働ストレスが強い職場では、本人だけに任せると続きにくくなります。

重い対応のあとに整える時間がない。管理職が「対応できているから大丈夫」と見ている。身体の緊張を、本人の疲れやすさとして片づけている。

この場合、必要なのは実技の追加ではありません。

その実技を使える職場状態かどうかを見ることです。

研修前に整理したいこと

研修前に整理したいのは、呼吸法や筋弛緩法の手順ではありません。

どの業務のあとに社員の呼吸が浅くなっているか。肩や首に力が残りやすい対応は何か。クレーム対応、面談、患者対応、保護者対応、部下対応のあとに、整える余地があるか。

ここを見ないまま実技研修を行うと、受講者は「呼吸法はよい」と理解しても、職場では使う場面がないまま終わります。

この記事で扱うのは、問題の見方までです。実際の職場では、業務内容、対応後の流れ、管理職の声かけ、社員が使いやすい場面を確認しながら、実技の入れ方を設計する必要があります。

タニカワ久美子が見る現場の違和感

タニカワ久美子が企業研修で見てきたのは、社員が「ストレスを感じていない」のではなく、身体の緊張を自覚できないまま働いている場面です。

ある管理職の方は、部下対応、顧客対応、上層部への報告の間で、いつも気を張っていました。

研修中に身体の緊張に目を向けたあと、「自分がずっと息を止めるように仕事をしていたことに気づきました」と話してくださいました。

これは、特別な例ではありません。

感情労働ストレスが強い職場では、落ち着いて対応できる人ほど、自分の身体の緊張に気づきにくくなります。

人事総務や管理職が見たいのは、社員が呼吸法を知っているかどうかではありません。呼吸が浅くなるほどの対応を、誰が、どの場面で、どれだけ担っているかです。

呼吸法・筋弛緩法を職場の判断材料にする

呼吸法や筋弛緩法は、感情労働ストレスが多い職場で役立つ方法です。

ただし、方法だけを社員に渡しても、職場の負担は変わりません。

感情的に重い対応のあとに、身体の緊張を整える余地があるか。社員が自分の緊張に気づける状態か。管理職が、その緊張を職場の負担として見ているか。

呼吸法や筋弛緩法を、社員任せのセルフケアで終わらせず、感情労働ストレスを見えるようにする判断材料として扱えていますか。


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文責:タニカワ久美子

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