ストレス管理
「ストレス対策として運動しましょう」と伝えたとき、表情が曇る社員はいませんか。
歩くことや体操が気分転換になる人がいる一方で、運動が苦手な社員にとっては、その一言自体が負担になる場合があります。
とくに、運動が嫌いな人、運動習慣がない人、仕事で疲れている人へ一律に運動をすすめても、継続にはつながりにくくなります。
さらに、「また頑張ることを求められている」と受け取り、ストレスが増えることもあります。
また、「運動した方がよいのは分かっているけれど、身体が動かない」という社員もいます。
この状態を、本人の意志の弱さやモチベーション不足だけで説明することはできません。仕事中の緊張、睡眠不足、休憩不足、長時間座位、対人対応などが重なり、新しい行動を始めるだけの回復余力が残っていないことがあるからです。
そのため、健康経営で重要なのは、社員に運動を頑張らせることではありません。
呼吸、肩回し、立ち上がる、足首を動かす、短く歩く、あるいは今日は休むなど、本人の状態に合わせて選べる職場支援にすることです。
人事総務・健康経営担当者が確認したいのは、社員が運動に前向きかどうかではありません。
運動が苦手な社員や、今は運動する余力がない社員にも、無理なく選べるストレス対策になっているかが判断ポイントです。

運動がストレス解消になるとは限りません
適度な身体活動は、ストレス管理やメンタルヘルス支援に役立つことがあります。
たとえば、身体を少し動かすことで気分が切り替わったり、自分の疲労や身体のこわばりに気づきやすくなったりします。
しかし、同じ方法がすべての社員に合うわけではありません。
ウォーキングや筋トレを気分転換として楽しめる人もいます。
一方で、運動に苦手意識がある人は、「運動しましょう」と言われること自体をプレッシャーに感じる場合があります。
| 運動が好きな社員 | 運動が苦手・したくない社員 |
|---|---|
| 気分転換として受け取りやすい | 負担として受け取りやすい |
| 自分から始めやすい | 始める前に抵抗感が出やすい |
| 運動後の爽快感を得やすい | 疲労や恥ずかしさが残ることがある |
| 目標設定が励みになりやすい | 目標設定がプレッシャーになることがある |
| 疲れていても運動を選ぶことがある | 疲労時には新しい行動そのものが負担になることがある |
つまり、健康経営では「運動は良いこと」と一律に扱うのではなく、本人がその施策をどう受け取るかまで確認する必要があります。
運動したくない背景に、ストレス疲労や回復不足があることがあります
「運動したくない」という言葉だけを見ると、運動嫌いやモチベーション不足のように見えることがあります。
しかし実際には、仕事中の緊張、睡眠不足、長時間座位、休憩不足、対人ストレスなどが重なり、身体が新しい活動を受け入れる余力を失っている場合があります。
身体を大きく使ったわけではないのに、頭が重い、肩や背中が固い、眠っても疲れが抜けない、何かを始める気力が出ない。このような状態です。
| 本人の訴え | 背景として確認したいこと | 職場での見方 |
|---|---|---|
| 運動する気になれない | 仕事中の緊張が抜けていない | 意志ではなく回復状態を見る |
| 少し動くだけでも疲れる | 睡眠や休憩で回復しきれていない | 運動量を増やす前に休息を見る |
| 健康施策そのものが負担 | すでに業務負荷が高い | 追加タスクにしない |
| 以前はできたのに続かない | 現在の勤務状況や疲労が変化している | 本人の現在状態を確認する |
| 運動と聞くだけで嫌になる | 過去の失敗経験や恥ずかしさがある | 心理的抵抗も負担として扱う |
「運動したくない」という反応そのものが、今の社員状態を確認するサインになる場合があります。
やる気は、無理に作るより戻りやすい条件を整える
運動意欲が低い社員に「やる気を出してください」と伝えても、行動につながりにくいことがあります。
睡眠不足や強い緊張、業務負荷が続いていると、新しい行動を始める余力そのものが低下しているからです。
本人は「運動した方がよい」と理解していても、身体としては「今はこれ以上負荷を増やしたくない」と感じていることがあります。
| 避けたい考え方 | 起こりやすいこと | 見直したい方向 |
|---|---|---|
| もっと運動しましょう | さらに課題を追加されたように感じる | まず現在の疲労を確認する |
| 健康のために頑張りましょう | できない自分を責めやすい | 無理のない選択肢を示す |
| 目標歩数を上げましょう | 回復状態を無視しやすい | 疲労感・回復感も見る |
| 続けないと意味がない | 始める前から負担になる | 短時間でも戻れる方法を残す |
| 運動不足だから不調になる | 自己責任として受け取られやすい | 仕事中の負荷や休息も見る |
職場で必要なのは、社員のやる気を押し上げることではありません。
本人が自分の状態に合わせて、動く・軽く動く・休むを選べる状態をつくることです。
運動にはストレス軽減の可能性がありますが、効果には個人差があります
身体活動と心理的健康については、ストレス負荷、回復、心理的苦痛などとの関連を検討した研究があります。
したがって、運動そのものをストレス対策から外す必要はありません。
一方で、研究結果をそのまま「運動すれば誰でもストレスが減る」と職場へ当てはめることも適切ではありません。
研究対象、年齢、運動強度、生活環境などの条件が異なるためです。
さらに、実際の職場では、体力、疲労、運動経験、身体状態、心理的抵抗感にも個人差があります。
そのため、人事総務が判断したいのは「運動に効果があるか」という一般論だけではありません。
自社の社員にとって、どの程度の身体活動なら負担にならず、ストレス管理の選択肢として使えるかを考える必要があります。
運動が苦手な社員に心理的負担が出やすい理由
運動が苦手な人にとって、身体を動かすことは単なる健康行動ではありません。
過去の経験、恥ずかしさ、体力への不安、周囲との比較などが重なることがあります。
たとえば、次のような負担です。
- 運動しなければならないと思うだけで気が重い
- 人前で身体を動かすのが恥ずかしい
- できない自分を見られたくない
- 学生時代の体育に苦手意識がある
- 仕事で疲れているのに、さらに努力を求められていると感じる
- 参加しないと健康意識が低いと思われそうで不安になる
こうした状態で「ストレス解消のために運動しましょう」と伝えると、支援のつもりでも本人には負担として届くことがあります。
だからこそ、職場のストレス対策では、運動への心理的な抵抗を軽く見ないことが重要です。
無理な運動がストレス対策として逆効果になる場面
問題は、運動そのものではありません。
本人に合わない方法を、義務や評価のように感じさせてしまうことです。
| 逆効果になりやすい状況 | 本人に起こりやすい反応 | 職場で必要な配慮 |
|---|---|---|
| 運動を強制する | やらされ感や抵抗感が強くなる | 参加を義務化せず選択肢を用意する |
| 運動量を比較する | できない自分を責めやすくなる | 歩数や成果を競争にしない |
| 高い目標を設定する | 始める前から負担になる | 短時間・低負荷から始める |
| 人前で運動させる | 恥ずかしさや不安が出る | 座位・軽い動き・見学を選べるようにする |
| 疲労が強い時期にすすめる | さらに負荷を加えられたと感じる | 休息・睡眠・業務量も確認する |
したがって、ストレス対策として身体活動を取り入れる場合は、本人が「これならできそう」と思える範囲から始めます。
「運動」ではなく「身体を少し動かす」から始めます
運動が苦手な社員には、最初から運動習慣を作ろうとしない方が取り組みやすくなります。
なぜなら、「運動」という言葉から、スポーツ、筋トレ、ランニング、ジム通いなどを想像する人もいるからです。
そのイメージだけで抵抗感が生まれる場合があります。
そこで、「運動する」ではなく、仕事の途中で身体を少し戻すと考える方法があります。
| 運動として伝える表現 | 職場で取り入れやすい表現 |
|---|---|
| 運動しましょう | 肩の力を一度抜いてみましょう |
| 歩数を増やしましょう | 昼休み後に少し立ってみましょう |
| 体操をしましょう | 座ったまま足首を動かしてみましょう |
| 筋力をつけましょう | 腰が重くなる前に姿勢を変えてみましょう |
| 毎日続けましょう | できる日に短く試してみましょう |
このように言葉を変えるだけでも、社員の受け取り方は変わります。
低負荷セルフケアをストレス対策の入口にする
運動が苦手な社員や、疲労が強く運動する余裕がない社員には、負担の少ないセルフケアから始める方法があります。
ここでの目的は、消費カロリーや体力向上ではありません。
まず、自分の身体がどの程度緊張しているか、どの程度疲れているかに気づきます。
そのうえで、仕事の途中でも行いやすい小さな行動を選びます。
| 方法 | 目的 | 使いやすい場面 |
|---|---|---|
| 吐く呼吸 | 浅い呼吸と緊張に気づく | 会議前、報告前、緊張時 |
| 肩回し | 肩の力みに気づく | デスクワークの合間 |
| 足首の上下運動 | 長時間座位を一度切る | 座り仕事の合間 |
| 背中を伸ばす | 姿勢と呼吸を確認する | オンライン会議後 |
| 短く歩く | 仕事と身体を切り替える | 昼休み後、作業の区切り |
| 休む | 疲労をさらに上乗せしない | 睡眠不足や強い疲労がある時 |
つまり、これらは運動能力を示すための行動ではありません。
自分のストレス反応と回復状態に気づき、仕事の中で調整するための選択肢です。
疲労が強いときは、運動より回復を先にすることがあります
運動が苦手だから動きたくない場合と、疲労が強くて動けない場合は、同じではありません。
睡眠不足、長時間労働、強い緊張、対人対応などが続いているときに、さらに運動を追加すると、爽快感より消耗感が強くなることがあります。
次のような状態では、運動量を増やすことよりも、まず回復状態を確認します。
- 朝から強い疲労感がある
- 寝ても疲れが取れない
- 仕事中の集中低下や反応の遅れが増えている
- 肩や背中のこわばりが強い
- 運動後の疲労が長く残る
- 「健康のための行動」そのものが負担に感じる
このような場合は、軽い動きだけにする、今日は休む、睡眠や休憩を見直す、業務負荷を確認するといった判断も必要です。
運動強度をどの程度にするかは、ストレス対策の運動強度はどう選ぶ?肩こり・腰痛を悪化させない職場セルフケアで詳しく整理しています。
職場研修に運動を入れる場合は「全員同じ」にしない
ストレス管理研修に軽い運動やストレッチを入れる場合も、判断の中心は運動種目ではありません。
誰が、どの方法なら無理なく参加できるかを先に決めます。
たとえば、「簡単な運動だから全員できる」と考えると、疲労が強い社員や、人前で身体を動かすことに抵抗がある社員を置き去りにする可能性があります。
| 研修で確認すること | 避けたい設計 | 参加しやすい設計 |
|---|---|---|
| 参加方法 | 全員に同じ動きを求める | 座位・立位・見学を選べる |
| 強度 | 元気な社員を基準にする | 低負荷を基本に各自で調整する |
| 疲労 | 全員が動けることを前提にする | 休息を選べるようにする |
| 人前での実技 | 大きく目立つ動きを中心にする | 周囲と比較されにくい動きにする |
| 体調への配慮 | 最後まで参加する前提にする | 痛みや違和感があれば中止できる |
| 評価 | 運動量や参加率だけを見る | 自分の緊張や疲労に気づけたかを見る |
研修で身体を動かす目的は、社員を頑張らせることではありません。
自分の緊張、疲労、呼吸、身体のこわばりに気づき、対処方法を選べるようにすることです。
管理職の声かけでも負担は変わります
施策そのものが選択式でも、管理職の言葉によって参加圧力が生まれることがあります。
とくに「やる気がない」「運動不足」と本人の意志の問題にしてしまうと、疲労が強い社員ほど自分を責めやすくなります。
| 避けたい声かけ | 職場で使いたい声かけ |
|---|---|
| 少しは運動したほうがいいよ | 疲れがたまりやすい時間帯はありますか |
| やる気を出してください | 今日は無理のない範囲で大丈夫です |
| みんな参加していますよ | 参加しやすい方法を選べるようにしましょう |
| これくらい簡単ですよ | 体調に合わせて、座ったままでも大丈夫です |
| 運動すればストレスは減るよ | 休息や業務量も含めて考えましょう |
| 頑張れば続きます | 続けやすい形に変えてみましょう |
つまり、管理職の役割は社員に運動をさせることではありません。
本人が負担を感じる背景を確認し、無理なく選べる方法を一緒に考えることです。
人事総務が運動施策・研修を決める前に確認したいこと
人事総務・健康経営担当者は、次の点を確認します。
- 運動が苦手な社員にも参加しやすいか
- 「運動したくない」背景に疲労や回復不足がないか
- 参加を強制する印象になっていないか
- 座位・立位・見学・休息などを選べるか
- 体力差、年齢差、疲労、健康状態に配慮しているか
- 痛みや違和感があれば中止できるか
- 歩数や参加率の競争になっていないか
- 管理職が本人を「やる気の問題」と決めつけていないか
- 運動の目的が「頑張ること」ではなく、ストレス反応への気づきになっているか
この条件が整えば、運動施策は単なる健康イベントではなく、社員が自分の状態に気づき、対処方法を選ぶための職場支援になります。
自社のストレスマネジメント研修を、社内で検討するために
ここまで確認して、「運動を取り入れるかどうか」だけでは判断できないと感じた場合は、研修内容を決める前に、御社で何の行動を変えたいのかを整理しておく必要があります。
そこで、人事総務・健康経営担当者が社内検討に使える「ストレスマネジメント研修 行動変容設計シート」を用意しました。
このシートでは、次の項目を整理できます。
- 現在、社員や管理職にどのような行動上の課題があるか
- 行動できない原因が、知識・心理的抵抗・疲労・業務量・職場環境のどこにあるか
- 研修で変えることと、研修だけでは変えられないこと
- 研修後に増やしたい具体的な行動
- セルフケア研修・管理職研修・職場環境改善のどれが必要か
- 研修実施後に何を成果指標として確認するか
「ストレスについて教える研修」から考えるのではなく、「御社では誰の、どの行動を変える必要があるのか」から研修を設計するためのシートです。
ストレスマネジメント研修 行動変容設計シート
会社・団体名と法人メールアドレスをご入力ください。
社内で研修内容を検討する際の判断資料としてお使いいただけます。
タニカワ久美子の企業研修では「運動量」より「気づき」を扱います
タニカワ久美子の企業研修では、強い運動や難しい体操から始めません。
まず、受講者自身に現在の身体状態を確認してもらいます。
- 呼吸が浅くなっていないか
- 肩に力が入っていないか
- 腰や背中が重くなっていないか
- 疲れを我慢していないか
- 今日は身体を動かす余力があるか
その後、椅子に座ったままできる呼吸、肩回し、足首の上下運動、背中を伸ばす動きなどを取り入れます。
ここでも目的は体力づくりではありません。
自分のストレス反応と疲労状態に気づき、「今の自分なら何を選ぶか」を判断できるようにすることです。
研修の現場では、短い実技のあとに「運動というより身体を戻す感覚ならできそう」「疲れているときほど肩に力が入っていた」「やる気がないのではなく、今日は回復できていなかったのかもしれない」と気づく社員さんがいます。
したがって、御社で必要なのが運動量を増やす施策ではなく、運動が苦手な社員や疲れて動きたくない社員にも届くストレス管理であれば、研修もその前提で設計する必要があります。
御社の課題を、どの研修設計につなげるか
ストレスマネジメント研修を検討するときは、「運動を入れるか」「ストレッチを入れるか」といった研修メニューから決めるのではなく、現在の職場課題と、研修後に変えたい行動を対応させると社内でも検討しやすくなります。
| 御社で起きている状態 | 必要な判断 | けんこう総研が提供する支援 | 目指す変化 |
|---|---|---|---|
| 「運動しましょう」と伝えても参加が広がらない | 運動不足なのか、心理的抵抗や参加設計の問題なのかを分ける | 運動が苦手な社員にも届くストレス管理研修 | 運動の強制ではなく、本人が選べる対処方法が増える |
| 「運動したくない」「身体が動かない」という社員がいる | 運動嫌いなのか、疲労・睡眠不足・回復不足なのかを確認する | 疲労状態への気づきと低負荷セルフケア | 頑張らせる前に、自分に必要な回復行動を選べる |
| 歩数イベントや体操が一部社員にしか届いていない | 参加率ではなく、参加障壁を確認する | 低負荷・選択式の健康支援設計 | 運動が得意でない社員も参加しやすくなる |
| 管理職が「少し運動した方がいい」と声をかけている | 励ましが本人責任や参加圧力になっていないか確認する | 管理職向けの声かけ・ラインケア設計 | 本人の状態に合わせた支援がしやすくなる |
| 研修に運動を入れたいが、安全な進め方が決まっていない | 強度、参加方法、中止基準、休息・見学可否を決める | ストレス管理研修の実技設計 | 全員一律ではなく、選べる参加方法になる |
たとえば、運動施策への参加が広がらない場合でも、必要なのが「運動の啓発」とは限りません。
運動への心理的抵抗が強いのか、疲労が強く行動する余力がないのか、勤務中に実践する時間がないのか、管理職の声かけが参加圧力になっているのかによって、必要な研修設計は変わります。
けんこう総研では、御社の場合に「どの問題を、どの研修で、どの行動変容につなげるか」まで整理して研修を設計します。
まとめ|運動したくない社員には、強制より回復と選択肢が必要です
運動はストレス軽減に役立つ可能性があります。
しかし、本人に合わない方法を無理にすすめれば、かえって心理的な負担になることがあります。
また、「運動したくない」「身体が動かない」という反応の背景には、運動嫌いだけでなく、睡眠不足、業務負荷、緊張、休憩不足などによる回復不足が隠れている場合があります。
そのため、職場で重要なのは「運動させること」ではありません。
呼吸、軽い動き、短い歩行、姿勢を変える、休息などから、本人が無理なく選べる状態をつくることです。
運動が苦手・したくない社員へのストレス対策は、自己責任として運動を求めることではなく、本人が自分の状態に気づき、回復と対処方法を選べる職場支援です。
運動が苦手な社員にも届くストレスマネジメント研修を検討しているご担当者様へ
けんこう総研では、運動やストレッチを一律に実施するのではなく、社員の疲労、心理的抵抗、参加方法、業務環境まで確認したうえで研修を設計します。
座学、呼吸、座ったままできる軽い身体活動、管理職の声かけなどを組み合わせ、研修後に職場でどの行動を増やすのかまで設計します。
研修テーマが未定でも、対象者・職場状況・実施時期に合わせて整理します。