感情労働ストレス
教員バーンアウトとMBI-ES|学校人事総務が見る判断課題
教員のバーンアウトを、「疲れている先生がいる」「やる気が落ちている先生がいる」だけで見てしまうと、学校として必要な支援が見えにくくなります。
教育現場では、授業準備、保護者対応、生徒指導、校務分掌、部活動、会議、同僚や管理職との関係が重なります。そのうえ教員は、生徒の前では落ち着いて、保護者には丁寧に、職員室では周囲に配慮しながら働いています。
学校の人事総務・健康経営担当者・管理職が見たいのは、先生が疲れているかどうかだけではありません。どの負担が、教員本人の努力ではなく、学校として扱うべき職場課題になっているかです。
感情労働ストレス全体の考え方は、感情労働ストレスの考え方でも確認できます。
先生の疲れを本人の問題で止めていませんか
教員のバーンアウトを見るとき、MBI-ESでは、情緒的消耗感、脱人格化、個人的達成感の低下という3つの側面が使われます。
ただし、人事総務が確認したいのは、尺度名そのものではありません。
朝から授業に向かう前に気力が出ない。保護者対応の後に、気持ちが戻らない。生徒の相談を受けても、以前のように心が動きにくい。授業や支援に意味を感じにくくなっている。
こうした変化を「その先生の疲れ」「その先生の性格」として見てしまうと、職場にある負担が残ります。
バーンアウトを個人責任にしない
この課題は、知識として理解するだけでは学校で動きません。
情緒的消耗感が高い先生に「早めに休んでください」と伝えるだけでは、同じ業務に戻ったとき、また同じところで消耗します。
保護者対応が特定の先生に集まっていないか。若手教員が相談する前に抱え込んでいないか。部活動や校務分掌が、対応できる先生に戻り続けていないか。管理職が一人で聞き役を抱えていないか。
ここを見ずに研修だけを行うと、学校は「先生自身がセルフケアしましょう」で止まってしまいます。
人事総務が見るべき学校側の責任
教員のバーンアウトは、現場の本人努力や管理職の気づきだけで処理しきれるものではありません。
人事総務や学校運営側が先に確認したいのは、誰が限界に近いかだけではなく、どの負担を学校として扱うべきかです。
授業外対応が増えすぎていないか。保護者対応の引き受け基準が曖昧になっていないか。生徒指導後に、教員が気持ちを立て直す時間があるか。研修後に、声かけ、共有、記録、業務調整の流れまで決まっているか。
ここが曖昧なままでは、研修を実施しても職場は変わりません。
専門職でも迷う判断ポイント
教員バーンアウトでは、専門職でも判断に迷う場面があります。
情緒的消耗感を、休息不足として見るのか。保護者対応や校務分掌の偏りとして見るのか。生徒への関わりが事務的になっている状態を、教員の冷たさとして見るのか。限界に近づいた防衛反応として見るのか。
また、個人的達成感の低下を、本人の意欲の問題として扱うのか。承認、役割、学校方針への納得感が弱まっているサインとして扱うのかも判断が分かれます。
不調者が出てから研修を企画すると、研修内容は対症療法になりやすくなります。教員のバーンアウト対策は、管理職の声かけ、相談体制、保護者対応の共有、校務分掌の見直しまで含めて準備する必要があります。
研修導入前に、社内説明や講師選定、研修後の定着まで整理したい場合は、感情労働ストレス研修の選び方で確認できます。
研修前に整理すべき判断課題
研修前に整理したいのは、先生に「無理しないでください」と伝えることではありません。
どの場面で教員の感情労働が強くなっているのか。保護者対応、生徒指導、部活動、校務分掌のどこに負担が偏っているのか。管理職は、どこまで声をかけ、どこから組織対応に切り替えるのか。人事総務は、どの変化を学校全体の支援課題として扱うのか。
この判断課題を整理しないまま研修を行うと、バーンアウト対策は先生本人のがんばりに戻ってしまいます。
タニカワ久美子の研修で扱う実装領域
タニカワ久美子の研修では、教員の疲れを「弱さ」として扱うのではなく、学校で起きている違和感を、職場改善の判断材料に変えていきます。
先生が「生徒の前では明るくしているけれど、職員室に戻ると何も考えられない」と感じている状態。管理職が「声はかけているが、その後の業務調整まで決めていない」状態。人事総務が「どの疲れを学校側の責任として扱えばよいのか」と迷っている状態。
これらを、保護者対応の共有、校務分掌の確認、管理職の声かけ、相談経路、研修後の振り返り方法に落とし込むことが、教員の感情労働ストレス研修で扱う実装領域です。
先生のバーンアウトを学校運用で支えていますか
教員の仕事では、生徒や保護者の前で感情を整える力が求められます。
しかし、その力を先生本人の責任感や善意だけに任せると、情緒的消耗、距離を取る反応、達成感の低下が進みます。
実際に研修として動かすには、学校ごとの業務分担、管理職の関与範囲、人事総務への共有基準、研修後の振り返り方法まで設計する必要があります。
このテーマを、先生本人の努力や管理職の善意に戻さず、研修後の学校運用まで含めて設計できていますか。
参考文献
- MBI-ES日本版および教員バーンアウトに関する先行研究をもとに作成。
文責:タニカワ久美子
研修テーマが未定でも、対象者・職場状況・実施時期に合わせて整理します。