ストレス管理
ストレス研修で比べて黙る社員へ|安心して話せる場づくり
ストレス研修で「自分のストレス解消法を話してみましょう」と促したとき、一部の社員が急に黙ってしまう場面を経験した企業担当者は結構いらっしゃいます。
ほかの社員は、運動、趣味、家族との時間、旅行、音楽などを話している。けれど、ある社員は「自分には特にありません」と小さく答える。その表情を見ると、単に発言が苦手なのではなく、「自分だけうまく対処できていないのでは」と感じているように見えることがあります。
この記事では、ストレス解消法そのものを紹介するのではなく、研修中に他人と比べて苦しくなる社員を、人事総務・健康経営担当者がどう見るかを整理します。
ストレス解消法を持っていない社員を責めない
ストレスと向き合う方法は、人によって違います。話すことで楽になる人もいれば、一人で静かに過ごすことで落ち着く人もいます。身体を動かすことが合う人もいれば、まず眠ることが必要な人もいます。
そのため、研修で「あなたのストレス解消法は何ですか」と聞いたとき、すぐに答えられない社員がいても、それは問題社員という意味ではありません。
ストレス解消法を言葉にしたことがない人もいます。強い疲労の中にいて、何をしても楽になった感じがしない人もいます。周囲の発言を聞いて、「自分には立派な方法がない」と感じてしまう人もいます。
人事総務が見たいのは、社員が前向きな答えを言えるかどうかではありません。安心して自分の状態を言葉にできる場になっているかです。
一般的なストレス対処法の共有では動かない理由
ストレス研修では、参加者同士で対処法を共有することがあります。うまく設計されていれば、「そんな方法もあるのか」と気づきが広がります。
しかし、設計を誤ると、研修は比較の場になります。「あの人はうまく切り替えている」「自分は何もできていない」「自分だけストレスに弱いのでは」と感じる社員が出てきます。
この状態で「自分に合う方法を探しましょう」とだけ伝えても、必要な社員ほど黙ってしまいます。研修では、方法を出し合う前に、比べなくてよい空気をつくる必要があります。
専門職でも迷う判断構造
研修中に発言しない社員が、安心して聞いているのか、比較して苦しくなっているのかは外から見えにくいものです。表情、声の小ささ、発言後の反応を見ながら、場の圧力を調整する必要があります。
社内で動かす難しさ
研修の場づくりは、資料の内容だけでは決まりません。人事総務、管理職、講師が、発言を強制しないこと、前向きな答えを求めすぎないこと、沈黙を否定しないことをそろえる必要があります。
タニカワ久美子の研修では比較で黙る社員の反応を見る
タニカワ久美子の企業研修では、参加者同士でストレスとの向き合い方を話す時間を入れることがあります。そこで見えてくるのは、対処法そのものよりも、社員が他人の話を聞いたときの反応です。
ある研修で、参加者の一人が「私はそこまでのストレスレベルじゃないんですけど……」と小さく話したことがありました。強く困っているわけではない。けれど、ほかの人が運動や趣味、家族との時間を話しているうちに、「自分は何もできていないのでは」と感じているようでした。
この場面で必要なのは、すぐに正解を教えることではありません。「ストレス解消法がすぐに思いつかないことも、おかしいことではありません」と場を整えることです。
社員は、正しい答えを出そうとすると緊張します。けれど、「自分はこういうときに少し疲れやすい」「人と話すより一人の時間が必要かもしれない」「休むと少し戻る」と言葉にできると、表情が少しゆるむことがあります。
タニカワの研修では、ストレス解消法を競わせません。発言の上手さや前向きさを見るのではなく、社員が自分の状態を安心して言葉にできるかを見ます。ここが、一般的なセルフケア資料だけでは設計しきれない部分です。
「比べなくてよい」が伝わらないと研修は負担になる
ストレス研修は、明るく前向きな対処法を発表する場ではありません。社員が、自分の疲れ方や回復の仕方に気づく場です。
運動が合う人もいれば、静かに休む方が合う人もいます。人に話すことで楽になる人もいれば、話すこと自体が疲れる人もいます。
この違いを認めないまま研修を進めると、社員は「自分も何か言わなければ」「前向きな方法を持っていなければ」と感じます。すると、ストレス対策の時間そのものが新しいストレスになります。
人事総務が見るべき研修中の違和感
人事総務・健康経営担当者が研修中に見たいのは、誰が良い発言をしたかではありません。発言しにくそうな社員がいないか、前向きな答えを無理に探していないか、他人と比べて表情が硬くなっていないかです。
社員が黙っているとき、それは関心がないからとは限りません。自分の状態をどう言葉にしてよいか分からない場合もあります。ほかの人と比べて、話すのをためらっている場合もあります。
その反応を見ずに、研修を予定通り進めると、必要な社員ほど置き去りになります。
医療的な対応が必要な場合
この記事は、職場のストレス管理と不調予防の視点から書いたものです。医学的な診断や治療を行うものではありません。
強い不眠、不安や落ち込み、出勤困難、食欲低下、涙が止まらない、仕事や日常生活への支障が続く場合は、自己判断せず、医療機関や専門職につなぐ必要があります。職場は診断するのではなく、以前との違いに気づき、相談しやすい状態を作ることが役割です。
比べずに話せるストレス研修をつくるために
ストレスと上手に向き合う方法は、全員で同じ答えを持つことではありません。社員が自分の状態に気づき、他人と違っていても大丈夫だと感じられることです。
人事総務・健康経営担当者が見るべきなのは、社員が立派なストレス解消法を持っているかどうかではありません。研修の場が、比較ではなく安心して言葉にできる時間になっているかです。
ストレス対策を本人任せにせず、社員が比べて苦しくならない研修設計を行いたい場合は、けんこう総研の企業向けストレスマネジメント研修をご確認ください。
文責:タニカワ久美子
研修テーマが未定でも、対象者・職場状況・実施時期に合わせて整理します。