感情労働ストレス
感情労働のセルフ管理を個人責任にしない|人間相手の仕事の判断課題
人と関わる仕事では、自分の感情をそのまま出せない場面が多くあります。
お客様、利用者さん、患者さん、生徒、保護者、取引先、上司、部下、同僚。相手がいる仕事では、言葉づかい、表情、態度、声の出し方まで調整しながら働く必要があります。
このように、自分の感情を整えながら相手に対応する働き方を、感情労働と呼びます。
ただし、この記事では感情労働全般ではなく、人間相手の仕事で「セルフ管理」が社員本人の努力に戻されやすい職場判断課題として扱います。
感情労働ストレス全体の考え方は、感情労働ストレスの考え方でも確認できます。
セルフ管理で済ませていませんか
人事総務や管理職は、社員に「自分のストレスに気づきましょう」「無理をしないようにしましょう」と伝えることがあります。
その言葉自体は間違いではありません。しかし、セルフ管理だけを強調すると、感情労働ストレスが社員本人の責任に戻ってしまうことがあります。
人と関わる仕事では、相手の反応を読み、怒りや不安を抑え、場の空気を壊さないように対応します。接客、医療介護、教育、営業、管理職、社内調整、リモートワークでも、この負担は発生します。
現場で企業担当者が見たいのは、社員が自分の状態に気づけているかだけではありません。その気づきを、職場が受け止める流れまであるかです。
感情負担を個人責任にしない
この課題は、知識として理解するだけでは職場で動きません。
人と話したあとに強い疲れが残る。クレームや相談対応のあとに気分を引きずる。仕事中の笑顔が作業のように感じる。相手の反応を過剰に気にする。休んでも気持ちが戻りにくい。
こうした変化を、本人のメンタルの弱さや気分転換の不足として扱うと、職場は同じ負担を繰り返します。
感情労働のセルフ管理は、ひとりで我慢するためのものではありません。本人が気づいた変化を、管理職の声かけ、人事総務への共有、業務分担の確認につなげるための判断材料です。
人事総務が見るべき社内責任
この問題は、現場の本人努力や管理職の気づきだけで処理しきれるものではありません。
人事総務が先に確認したいのは、誰が不調者を見つけるかではなく、どの感情負担を組織として扱うべきかです。
対応が上手な社員に難しい相手が戻り続けていないか。管理職が部下の不満や相談を一人で抱えていないか。社内調整役の社員に、部署間の板挟みが集中していないか。研修後に、声かけ、共有、記録、業務調整の流れまで決まっているか。
ここが曖昧なままでは、研修を実施しても職場は変わりません。
専門職でも迷う判断ポイント
人間相手の仕事で起きる感情労働ストレスでは、専門職でも判断に迷う場面があります。
社員の疲れを、セルフケア不足として見るのか。対人対応の偏在として見るのか。クレーム後の落ち込みを、本人の回復力の問題として扱うのか。職場の回復設計の不足として扱うのか。
また、社員に「早めに相談して」と伝えるだけでよいのか、相談後に管理職がどこまで業務調整し、人事総務に何を共有するのかまで設計する必要があるのかも判断が分かれます。
不調者が出てから研修を企画すると、研修内容は対症療法になりやすくなります。感情労働ストレスへの対応は、セルフ管理、管理職の声かけ、相談体制、職場内共有を含めて準備する必要があります。
研修導入前に、社内説明や講師選定、研修後の定着まで整理したい場合は、感情労働ストレス研修の選び方で確認できます。
研修前に整理すべき判断課題
研修前に整理したいのは、社員に「自分の感情をコントロールしましょう」と伝えることではありません。
どの業務で感情労働が発生しているのか。誰が人の感情を受け止める役割を担っているのか。対応後に回復する時間があるのか。社員がセルフ管理で気づいた変化を、誰が受け止め、どこまで職場調整につなげるのか。
この判断課題を整理しないまま研修を行うと、感情労働ストレスは社員本人の努力に戻ってしまいます。
タニカワ久美子の研修で扱う実装領域
タニカワ久美子の研修では、感情労働を「個人の心の問題」として扱うのではなく、現場で起きている違和感を、組織の判断材料に変えていきます。
社員が「自分が弱いから疲れる」と思っている状態。管理職が「対応できているから大丈夫」と見落としている状態。人事総務が「どの疲れを職場課題として扱えばよいのか」と迷っている状態。
これらを、感情負担の偏在、管理職の関与範囲、相談後の共有基準、回復時間の確保、研修後の振り返り方法に落とし込むことが、感情労働ストレス研修で扱う実装領域です。
セルフ管理を職場支援につなげていますか
人と関わる仕事では、感情労働をなくすことはできません。
しかし、感情労働を社員本人の性格や気合いに任せると、対応力の高い社員ほど消耗します。
実際に研修として動かすには、職場ごとの対人業務、管理職の関与範囲、人事総務への共有基準、研修後の振り返り方法まで設計する必要があります。
このテーマを、社員本人のセルフ管理や管理職の善意に戻さず、研修後の職場運用まで含めて設計できていますか。
文責:タニカワ久美子
研修テーマが未定でも、対象者・職場状況・実施時期に合わせて整理します。