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ストレス研究memo

タニカワ久美子のストレス管理研究Vol.155

2024年10月16日更新

こんにちは、けんこう総研のタニカワ久美子です。
日本ストレス学術総会に向けた私の研究の続報です。今回は、運動習慣の有無および不安顕在度(高・標準)がストレスレベルに与える影響を4群で比較した結果について報告します。

8日のブログから来る11月の日本ストレス学術総会での研究発表の備忘録を書いていきます。
8日のブログ(研究背景)はこちらです。
9日のブログ(研究結果と解釈)はこちらです。
10日のブログ(研究結果と解釈)はこちらです。
13日の検定結果はこちらです。

論文をいまいちど推敲して書き直してみました。全貌を一目したい方はどうぞ日本ストレス学術総会11月3日にいらっしゃってください。お待ちしています。

東京大学での倫理審査委員会承認結果表

本研究は、ウェアラブルデバイスを使用し、デスクワーカーを対象に、心拍変動(HRV)とストレスレベルの変動をリアルタイムで評価し、運動習慣や顕在性不安度が生理的指標にどのような影響を与えるかを検証したものです。この実証研究は、ストレス管理の新しいアプローチとして、健康経営や職場のストレス対策に貢献します。

<研究の新規性を強調した研究方法と再考察

研究方法

1. 研究背景

現代社会において、デスクワーカーは日常的に高いストレスにさらされ、心身の健康リスクが高まっていることが広く認識されている。特に、心拍変動(HRV)は自律神経系のバランスを反映する生理的指標として、ストレス管理やメンタルヘルス改善のために注目されている。しかし、従来の研究の多くは、制御された実験環境で行われ、日常的な職場環境におけるリアルタイムのHRVとストレスレベルのモニタリングに焦点を当てた研究は限られている。

本研究では、実際の職場環境でデスクワーカーのHRVとストレスレベルをリアルタイムで評価し、運動習慣や心理的特性との関連を探る点にある。具体的には、Garmin製ウェアラブルデバイスを使用し、リアルタイムのデータ収集を行った。APIを活用して生理的データをリアルタイムでクラウドに同期し、職場内の運動習慣とストレスレベルの変動を評価する手法は、従来の研究にはない新しいアプローチである。

2. 研究目的

本研究の目的は、デスクワーカーのHRVおよびストレスレベルに与える運動習慣と顕在性不安度の影響を現実の職場環境で検証することにある。さらに、ウェアラブルデバイスを用いてリアルタイムでこれらの指標をモニタリングすることで、運動がストレス管理にどの程度効果を発揮するかを評価し、個別化されたストレス管理プログラムの基盤を提供することを目指す。

特に、職場でのセミナー形式でインパクトファクターの高い先行研究でストレス軽減効果が実証された運動プログラムを実施し、運動習慣の有無や顕在性不安度によってHRVおよびストレスレベルにどのような変化が見られるかを詳細に観察した。このような実践的なアプローチにより、これまでにない新しい視点でこれらの関係性を解明したい。

考察

1. 運動習慣とストレスレベルの関係

本研究では、運動習慣がHRVやストレスレベルに与える影響を検討したが、期待されていたほどの有意な差(p=0.150)は見られませんでした。従来の研究では、運動がストレス軽減に寄与することが多く報告されているが、本研究では特定の運動習慣がストレスレベルに大きな影響を及ぼすことが確認されなかった。

 この結果の要因として考えられるのは、サンプルサイズの小ささや運動の頻度・強度の違いである。運動習慣がある被験者の中でも、日常的に行う運動の種類や強度が異なり、これがストレスレベルへの影響にばらつきを生じさせた可能性がある。特に、個別の運動習慣の違いがストレス管理効果に与える影響については、今後の研究でさらに詳細に分析する必要がある。

2. 顕在性不安度とストレスレベルの関係

顕在性不安度がストレスレベルに与える影響についても、有意差(p=0.150)は確認されなかった。これまでの研究では、不安度の高い人ほどストレス反応が強く、HRVの低下が顕著であることが示唆されてきたが、今回の調査では、運動によるストレス管理効果が顕在性不安度によって変化することは確認されなかった。

この結果についても、サンプルサイズの制約が要因となっている可能性がある。さらに、運動の実施状況や心理的コンディションなど、外的要因が複雑に絡み合っているため、今後はより多くのサンプルを対象に、不安度とストレスレベルの関連を明確にするための追加検証を必要とする。

3. リアルタイムモニタリングの有効性

Garmin製ウェアラブルデバイスを使用したリアルタイムモニタリングの活用は、本研究の新規性の一つである。この手法により、デスクワーカーの勤務中におけるストレスレベルやHRVの変動を、リアルタイムで観察できたことは大きな成果である。これにより、従来の研究では捉えきれなかった現実的な職場環境での生理的変化を詳細に分析することができた。

特に、APIを活用したデータ処理により、運動実施時の心拍数やストレスレベルの変動を個別に解析できるため、今後の研究ではさらに多様な生理的指標を取り入れ、ストレス管理の個別化を図るための基礎データとなるであろう。このような職場でのリアルタイムモニタリングを活用したストレス管理は、今後の職場環境での健康経営にも貢献する可能性があり、実用的な意義が大きいと考えられる。

まとめと新規性のポイント

1. 実際の職場環*で、デスクワーカーの日常的なストレスレベルとHRVをリアルタイムでモニタリングし、運動習慣や顕在性不安度との関連を検証した点。
2. Garmin製ウェアラブルデバイスを使用したリアルタイムデータ収集により、従来の実験室ベースの研究では難しかった職場でのストレス管理効果を実証した点。
3. 運動習慣や顕在性不安度によるストレス管理プログラムの個別化を検討し、現実的なアプローチでのストレス管理効果の測定手法を提案した点。

これにより、従来の研究にはない新しい観点で、ストレス管理の実践的な評価が可能となったことが、本研究の最も重要な新規性です。今後は、サンプルサイズを拡大し、さらなる実証を通じて、運動習慣の持つ可能性をより広範に明らかにしていくことが求められる。

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