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ストレス研究memo

タニカワ久美子のストレス管理研究Vol.153

2024年10月14日更新

こんにちは、けんこう総研のタニカワ久美子です。
日本ストレス学術総会に向けた私の研究の続報です。今回は、運動習慣の有無および不安顕在度(高・標準)がストレスレベルに与える影響を4群で比較した結果について報告します。

じつは、6日前のブログから来る11月の日本ストレス学術総会での研究発表の備忘録を書いていきます。
6日前のブログ(研究背景)はこちらです。
5日前のブログ(研究結果と解釈)はこちらです。
4日前のブログ(研究結果と解釈)はこちらです。
一昨日の検定結果はこちらです。

ストレスとの相関関係図

心拍変動HRVとストレスの間には有意な負の相関があり、HRVとメンタルヘルスの間には正の相関が認められました。


今日はいよいよ考察を書いていきます。全貌を一目したい方はどうぞ日本ストレス学術総会11月3日にいらっしゃってください。

考察

本研究では、運動習慣の有無および顕在性不安度の高低がストレスレベルに与える影響を検討した。

1. 運動習慣とストレスレベルの関係

運動習慣がストレスレベルに及ぼす影響についての検証結果は、予想に反して有意な差が見られませんでした(p=0.150)。
これにより、運動習慣がストレスレベルに直接的な影響を与えるという仮説は支持されませんでした。
運動習慣がストレスに対して一定の影響を及ぼすことは、多くの先行研究で示唆されてきましたが、本研究ではその効果は確認されませんでした。
運動がストレスを軽減する機序としては、自律神経の調整やエンドルフィンの分泌などが考えられますが、今回の調査ではこれらの効果が顕著に表れなかった可能性があります。

この結果の要因として考えられるのは、サンプルサイズの問題です。
運動習慣有りと無しの被験者数がそれぞれ5名と少数であり、統計的な検出力が十分でなかった可能性があります。また、運動の強度や頻度の違いが影響した可能性も考慮すべきです。運動習慣がある被験者の中でも、日常的に行っている運動の内容が異なるため、ストレスレベルに及ぼす影響が均一でなかったと考えられます。これにより、全体として有意差が見られなかった。

2. 顕在性不安度とストレスレベルの関係

顕在性不安度とストレスレベルの関係についても、有意な差は確認されませんでした(p=0.150)。
一般的に、不安度が高いほどストレスレベルが高まる傾向があることが多くの研究で示されているが、
本研究ではその関連性は明確化できなかった。
顕在性不安は、持続的な心理的負荷や日常生活におけるストレスの感じ方に影響を与える要因であり、ストレスレベルとの関連が予測されるものでしたが、今回の結果からは、運動時のストレスレベルにおいて顕在性不安の影響が限定的であることが示唆される。

3. 本研究の限界点

本研究において、サンプルサイズが非常に少ないことが結果に大きな影響を与えている。特にKruskal-Wallis検定は非パラメトリック検定であり、小サンプルでは検出力が低下しやすいため、今回のような小規模なサンプルサイズでは有意な結果を見出すことが難しい。運動習慣の有無や不安度の影響を正確に評価するためには、より多くの調査者を対象とした研究が必要である。また、被験者の背景(年齢、性別、職業など)も考慮し、より多様なサンプルを収集することで、より一般化可能な結果が得られると考える。

4. 今後の課題

今回の研究では、運動習慣と顕在性不安度がストレスレベルに及ぼす影響を検証したが、
運動強度や運動頻度、被験者の心理的なコンディションなど、考慮すべき変数は他にも多く存在する。
今後の研究では、運動の種類(有酸素運動、無酸素運動など)や運動の強度・頻度を詳細に分類し、それらがストレスレベルや心拍数にどのように影響を与えるかを検討する必要がある。
また、長期的な運動習慣の有無による生理的・心理的な変化を追跡することで、運動がストレスに与える影響のメカニズムをより深く理解できると考えられる。

さらに、心理的なストレス評価だけでなく、ストレスホルモン(コルチゾールなど)や心拍変動(HRV)の測定を組み合わせることで、ストレス反応を多角的に評価することが重要であろう。
これにより、主観的なストレス評価だけでは捉えきれない生理的な変化を把握し、より正確なストレス評価が可能になる。

5. 研究の意義

本研究は、運動習慣と顕在性不安度がストレスレベルに与える影響を検証するための初期的な試みであり、サンプルサイズの制約や統計的な限界があるものの、運動とストレス管理の関係性を理解するための貴重なデータを提供した。特に、運動がストレスに対してどのような影響を与えるかは、現代社会において非常に重要なテーマであり、今後の研究の発展が期待される。

結論

本研究の結果から、運動習慣や顕在性不安度がストレスレベルに及ぼす影響は確認されなかったが、これにはサンプルサイズの制約や運動内容のばらつきが影響している可能性が高いと考えられる。今後は、より多様なサンプルと詳細な運動評価を組み合わせ、運動とストレスの関係をより精緻に解明していくことが求められる。

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