働き方 × 健康支援
「過労死」は英語で Karoshi と表記されるほか、意味を説明する場合には death from overwork や death due to overwork などの表現が使われます。
Karoshi は日本語の「過労死」に由来する語で、海外の報道、研究、国際機関の資料でも日本の長時間労働問題を説明する言葉として使われています。
ただし、企業の英文資料や海外向け説明では、すべてを Karoshi と書けばよいわけではありません。
日本特有の社会問題・概念として示すのか、過重労働による死亡という意味を英語で説明するのかによって、表現を使い分けます。
過労死は英語で「Karoshi」と表現されます
過労死とは、過重な業務負荷を背景として、脳・心臓疾患などにより死亡する問題を指します。英語では Karoshi や death from overwork と説明されます。
企業で見るべきなのは、死亡という最終結果だけではありません。その前段階には、長時間労働、睡眠不足、疲労の蓄積、心理的負荷、集中力や判断力の低下などが重なっていることがあります。
職場では、残業時間だけでなく、「社員が回復できているか」「同じ部署で負荷が繰り返されていないか」まで確認する必要があります。
Karoshiとdeath from overworkの違い
一般に「過労死ライン」と呼ばれる時間数がありますが、これは「この時間以内なら安全」という境界線ではありません。
脳・心臓疾患の労災認定基準では、発症前1か月におおむね100時間を超える時間外労働、または発症前2~6か月間に月平均おおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合、業務と発症との関連性が強いと評価される目安とされています。
また、その時間数に達していなくても、勤務間インターバルが短い勤務、不規則勤務、拘束時間の長さ、深夜勤務など、労働時間以外の負荷要因を含めて評価されます。
したがって、人事総務が行うべき判断は「80時間を超えたかどうか」だけではありません。
なぜ日本語の「過労死」がKaroshiとして海外でも使われるのか
| 確認する情報 | 人事総務が見るポイント |
|---|---|
| 労働時間 | 残業、休日労働、深夜勤務が特定部署へ集中していないか |
| 休息 | 睡眠、休憩、勤務間隔が確保できているか |
| 職場行動 | ミス、確認漏れ、反応低下、口調の変化が増えていないか |
| 心理的負荷 | ストレスチェックや相談状況に変化がないか |
| 業務構造 | 欠員、繁忙期、属人化、特定社員への業務集中がないか |
タニカワ久美子の研修現場でも、「忙しい時期なので休憩を取れない」「上司も忙しく相談しにくい」という社員の声が出ることがあります。
これは社員個人のセルフケアだけの問題ではありません。休みにくい業務設計や、管理職へ相談しにくい職場運用まで確認すべきサインです。
企業の英文資料ではKaroshiをどう使えばよいか
企業の英文資料で「過労死」を説明するとき、単に日本語を Karoshi に置き換えればよいわけではありません。
タニカワ久美子が企業や福祉施設を訪問して職場を見ていると、制度や規程に書かれている言葉と、実際に職場で起きていることとの間には、しばしば距離があります。
だから海外拠点向けの安全衛生資料や外国人社員向けの説明資料に Karoshi と記載する場合にも、「長時間働くと危険である」という説明だけでは十分ではありません。
何を職場の変化として見るのか。誰が気づくのか。気づいた後に、勤務、業務量、休息、相談、管理職の対応をどう変えるのか。
ここまで示されて、初めて企業の安全衛生資料として機能します。
寒川ホームを訪問した際にも、タニカワ久美子が注目したのは、制度の名称そのものより、職員が困ったときに声を上げられるか、連絡の行き違いをどう減らしているか、といった日常の運用でした。今日の判断が積み重なって、事故や健康障害を防ぐ職場になります。
これは英文資料でも同じです。
海外本社への報告書、海外拠点向けの労働安全衛生資料、外国人社員への説明、健康経営に関する英文資料で Karoshi を使用するのであれば、言葉の説明だけで終わらせず、
- 長時間労働や深夜勤務など、どのような勤務状態を確認するのか
- 睡眠不足、疲労、ミス、反応の低下など、どのような変化を見るのか
- 本人の「大丈夫です」という申告だけに判断を依存しないこと
- 管理職、人事、安全衛生担当者が、どの段階で業務調整や相談につなげるのか
まで具体化する必要があります。
Karoshiという言葉を英訳することと、過労死を防ぐ仕組みを説明することは別です。
企業が英文資料で伝えるべきなのは、日本に「過労死」という言葉があるという知識ではありません。
長時間労働や疲労が見えたときに、職場として何を確認し、誰が判断し、次に何を変えるのか。その運用まで伝えてこそ、Karoshi prevention は企業の安全衛生活動になります。
Karoshiを理解するときに注意したい「過労死ライン」
残業時間、ストレスチェック、相談・面談、休職・離職などの数字を取得していても、施策との関係や次の対応が決まっていなければ、KPIは報告資料で止まります。
「健康経営KPI・施策評価設計シート」では、現在持っているKPIと施策を棚卸しし、数値が悪化・横ばいだったときに次の改善を判断できる設計になっているか確認できます。
過労死予防で企業が判断するのは「何時間なら安全か」ではありません
過労死予防では、労働時間を把握することは必要です。しかし、時間数だけを見て安全・危険を二分することはできません。
労働時間、休息、社員の変化、ストレスチェック、相談状況、業務集中を組み合わせ、どの職場に負荷が蓄積し、次に何を変える必要があるのかを判断することが企業側の実務です。
すでに労働時間管理やストレスチェック、研修、面談を実施していても、情報が分断されて次の改善判断につながっていない場合は、健康経営施策そのものではなく「実施後の運用」を整理する必要があります。
参考資料
研修テーマが未定でも、対象者・職場状況・実施時期に合わせて整理します。