ストレス科学ラボ・用語バンク
ソーシャルワーカーの感情規則の特徴/ストレス研究memo
対人援助職とは―コミュニケーションが主たる業務
ソーシャルワーカーをはじめとする対人援助職は、日々の業務で人とのコミュニケーションが不可欠な職業です。自身の感情だけでなく、他者の感情にどう対処すべきかという課題に直面します。クライエントや関係者との関係構築が不可欠であり、コミュニケーションを通じた信頼関係の構築が業務の基盤となっています。
感情労働と感情規則の重要性
対人援助職では、「すべての対面的な相互作用は感情的である」(ターナー)と言われるほど、感情の取り扱いが重要です。ホックシールド博士(Hochschild, 1983)が提唱した「感情労働」とは、文化や経験で形成される「望ましい感情(感情規則)」と、実際の感情との差を埋めるために自己の感情や表現を調整するプロセスです。対人援助職は、こうした感情規則に基づき感情管理を行い、専門職として働いています。ただし、感情規則は職種や現場ごとに異なる点が特徴です。
日本における感情規則の具体例
看護職では「職務上の合理性」と「好意的な心的状態」を保ち患者と関係を築く感情規則があります(三井, 2006)。教職では、自身の負の感情も意図的に表出し指導効果を高めるスキルが重視されています(Hosotani & Imai, 2011)。
ソーシャルワーカーの感情規則と専門性
ソーシャルワーカーは、クライエントへの直接的支援だけでなく、人間関係の構築そのものが本質的な業務です。南(2015)は、ソーシャルワーカーの感情労働はAIには代替できない専門的技能だと述べています。共感・受容しながら傾聴しニーズを探る援助原則が求められますが、同時に「いい人」像を追求する過度な期待や、専門性が否定される経験、情緒の消耗がストレスの要因となっています(松田・南, 2016)。
理想像と現実のギャップ、ストレス要因
共感や受容の感情規則が現場で機能しない場合もあり、理想像への過度な執着は情緒的消耗やストレスの増加を招きます(横山, 2008; 松田・南, 2016)。「共感」自体にも多様な意味があり(Decety & Ickes, 2009)、どの感情規則を教育し実践しているのか明確にすることが今後の課題です。
養成課程での感情規則教育の課題と展望
ソーシャルワーカー養成課程では、非現実的な理想像から脱却し、現実に即した感情規則教育と感情管理スキルの習得が重要です。現場の課題やストレス要因に対応できる教育体系の構築が求められています。
けんこう総研では、最新のエビデンスに基づいたストレス管理・感情労働に関する研修を通じて、組織の健康経営と人材育成を支援しています。ソーシャルワーカー、看護職、教職員向けに、感情規則・感情管理とストレスマネジメントを融合した実践的研修を提供しています。
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まとめ
ソーシャルワーカーなど対人援助職の感情労働は、専門性とストレス管理の両立が重要です。現場でのストレスマネジメントや感情規則教育の充実は、健康経営の推進にも不可欠です。けんこう総研では、各現場の課題に合わせた研修やご相談も承っています。
この記事を読んだ方によくある質問
- Q1. ソーシャルワーカーの感情労働がストレスに与える影響は?
- 感情労働によるストレスは、情緒的消耗やバーンアウト(燃え尽き症候群)、離職リスクの増加につながることがあります。感情規則やストレスマネジメントの研修による予防が有効です。
- Q2. 共感や受容の感情規則教育は現場でどう役立つ?
- 共感・受容の感情規則を現場で実践することで、クライエントとの信頼関係構築や支援の質向上につながります。一方で、理想像に縛られ過ぎず自己管理する力も大切です。
- Q3. 組織ができる感情労働・ストレス対策は?
- 職場内のコミュニケーション促進、ストレスチェック、感情規則やストレスマネジメント研修の導入などが推奨されます。健康経営担当者の継続的サポート体制も効果的です。
- Q4. 他職種との感情規則の違い、研修の工夫は?
- 感情規則は職種ごとに異なります。看護職は合理性や患者対応、教職は指導力、ソーシャルワーカーは共感や受容が重視されます。現場の実情に合わせたカスタマイズ研修が効果的です。
参考文献
札幌学院大学・桜井氏「ソーシャルワーカーの養成課程における感情規則の特徴」
※本記事は学術文献・最新エビデンスをもとに作成しています。
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