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まじめで努力家が陥りやすいバーンアウト/ストレス研究メモvol.21
2022年3月8日更新
バーンアウトはまじめで努力家がなりやすいストレス不調
バーンアウトとは、対人サービスにおいて相手からの感情面の要求に応えようとする努力家が多く発症するものです。仕事の真面目な程度とバーンアウトは、相関関係が見られまる。
感情労働には、表層演技と深層演技の2種類ある。
表層演技の仕事とは、感情ではなく声や笑顔といった表出行動を仕事中に行うことです。
深層演技の仕事とは、本心を隠すことで職務に適した行動を行うことです。
表層演技は、本心と行動との不一致(感情的不協和)を引き起こすために心理的ストレスが高まります。
・“情緒的消耗感”と“脱人格化”は、“表層演技”と正の相関関係。
・“個人的達成感”は、“表層演技”とは弱い負の関係。
・“深層演技”では、中程度の正の相関関係
出所:対人援助職に携わるビジネスマン(筆者注釈:対人援助職とは、医療従事者などの深層演技を行う職業であって、表層演技も行うが比重は深層演技のはず)を中心に行われた調査(Brotheridge& Grandey, 2002; Grandey, 2003; 榊原,2011)。
h2>バーンアウトの高ストレスが進行していくほど、仕事に対するやりがいや満足感が低下
バーンアウトの高ストレスが進行していくほど、仕事に対する情熱はなくなってきます。
↓
仕事を続けるる動機づけが低下する。
MBI(ストレス尺度) には、
職務上の有能感や達成感の高さ=“個人的達成感”因子
・バーンアウト傾向と、職務内容に対する満足感・職場への肯定的評価・仕事を継続する意思の高さとの比較では、負の相関関係。
・負の相関関係は、特に“個人的達成感”との間で強い。
出所:ホームヘルパーや助産師を対象とした調査(秋月・藤村,2007;中谷・杉浦・三上,2009
以上のような傾向が本研究でも確認されれば,日本版 MBI-ES の妥当性が高いことの根拠となるはずである。
信頼性を尺度得点についての評価
他の尺度との相関関係も潜在特性値ではなく尺度得点間の相関係数をもとに検証する。
方 法
日本版 MBI-ES の作成MBI-ES の原版を日本語に翻訳。原版と同様 22 項目から成る日本版 MBI-ES を完成。翻訳に当たっては,MBI-ES の版権を所有している MindGarden, Inc. の許諾済。
質問紙調査内容
回答者の属性
・ 性別・年齢・勤続年数・学校種(小学校・中学校・中等教育学校)・職種(教諭・講師・養護教諭・管理職)
頻度は7 件法(0 点:全くない─ 6 点:いつも)で回答。
精神的健康 GHQ30を用いた(30項目・4件法)。
一般的疾患傾向・身体的症状・睡眠障害・社会的活動障害・不安と気分変調・希死念慮うつ傾向 の6 つの下位尺度で構成。
感情労働 矢部・東條(2011)が作成した中学校教員用感情労働尺度(13 項目・5 件法)を小学校教員にも適用できるよう,各項目の“生徒”を“児童生徒”にして用いた。
教師がどのくらい感情労働に従事しているかを、自己の感情表出の操作・生徒感情の積極的認知・指導的感情表出の3つの因子から評価
原版の項目内容から,小学校教員に適用しても妥当性は損なわれないと判断した。
職務への満足度 河村(2001)が作成した教職のやりがい尺度(24 項目・4 件法)を用い、教職に対する主観的な満足度=子どもとの関わりと職場環境・対外的な評価・働く内容”“労働待遇の4つの因子によって評価
調査対象者
公立小中学校 34 校に勤務する全教員906 名(小学校 560 名,中学校 346 名)。有効回収率 84.1%)。A
調査手続き
2013 年 2 月実施。データの統計処理はすべて R 3.1.1(R CoreTeam, 2014)を用いて行われた。
項目分析
Table 1 日本版 MBI-ES の項目得点の平均・標準偏差と、各下位尺度得点(項目得点の和)から当該項目の得点を引いたものとの相関(項目―全体相関)
本論文では Cohen(1988)に従い、相関係数の小・中・大を,|r| = .1, .3, .5 を基準に解釈する。なお,標本サイズが大きいため、絶対値が .1 以上の相関係数はすべて 5% 水準で統計的に有意であった。
※内容をシンプルに明確化するため、敢えて割り切った語尾を使用しております。