感情労働ストレス
責任感が強い社員の感情労働ストレス|抱え込みを見逃さない判断課題
責任感が強く、まじめに仕事へ向き合う社員ほど、職場では「安心して任せられる人」と見られます。
クレーム対応を落ち着いて受け止める。利用者さんやお客様に丁寧に向き合う。周囲が忙しいときに、自分から引き受ける。こうした社員は、組織にとって大切な存在です。
しかし人事総務が見落としたくないのは、その責任感に、難しい対人対応が戻り続けていないかです。
この記事では、バーンアウト全般ではなく、責任感が強い社員に感情労働の負担が集中している職場を、人事総務がどう判断するかに絞って扱います。
感情労働ストレス全体の考え方は、感情労働ストレスの考え方でも確認できます。
「あの人なら大丈夫」で任せ続けていませんか
現場では、対応が上手な社員ほど、難しい相手対応を任されやすくなります。
強い口調のお客様、感情が高ぶっている利用者さん、保護者や家族からの相談、社内の調整役。誰かが対応しなければならない場面で、責任感の強い社員が引き受けていることがあります。
管理職から見ると「頼れる人」でも、本人の中では「また自分に戻ってきた」「断ると迷惑をかける」「自分がやったほうが早い」という思いが重なっているかもしれません。
人事総務が見るべきなのは、その社員が強いかどうかではありません。職場がその強さに依存していないかです。
責任感を個人責任にしない
この課題は、知識として理解するだけでは職場で動きません。
「私がやったほうが早いので大丈夫です」「みんな忙しいので自分で何とかします」「お客様のためなので仕方ありません」という言葉は、一見すると前向きです。
しかし、その裏側に、感情を抑え続ける働き方が隠れていることがあります。
本人が笑顔で対応できている。落ち着いて話を聞けている。周囲に弱音を言わない。だから問題ない、と判断してしまうと、職場は負担の偏りを見落とします。
責任感の強さは、本人の長所です。ただし、それを支える職場の仕組みがなければ、消耗の入口にもなります。
人事総務が見るべき社内責任
この問題は、現場の本人努力や管理職の気づきだけで処理しきれるものではありません。
人事総務が先に確認したいのは、誰が限界に近いかだけではなく、どの負担を組織として扱うべきかです。
クレーム対応が特定の社員に戻り続けていないか。相談しやすい社員に、周囲の感情の受け止め役が集中していないか。管理職が「助かっている」で終わらせていないか。対応後に、声かけ、共有、記録、業務調整の流れまで決まっているか。
ここが曖昧なままでは、研修を実施しても職場は変わりません。
専門職でも迷う判断ポイント
責任感が強い社員への対応では、専門職でも判断に迷う場面があります。
本人の「大丈夫です」を、そのまま受け取ってよいのか。難しい対応を任せることを、信頼と見るのか。感情労働の偏在として見るのか。仕事への手応えが薄れている状態を、本人の意欲低下として扱うのか。職場負担のサインとして扱うのか。
また、本人に「無理しないで」と声をかけるだけでよいのか、管理職の引き継ぎ、チーム共有、業務調整、人事総務への共有基準まで設計する必要があるのかも判断が分かれます。
不調者が出てから研修を企画すると、研修内容は対症療法になりやすくなります。責任感が強い社員の感情労働ストレスは、管理職の声かけ、相談体制、対応後の共有、業務分担まで含めて準備する必要があります。
研修導入前に、社内説明や講師選定、研修後の定着まで整理したい場合は、感情労働ストレス研修の選び方で確認できます。
研修前に整理すべき判断課題
研修前に整理したいのは、社員に「ストレスをためないようにしましょう」と伝えることではありません。
どの対人対応が重いのか。誰に難しい案件が戻り続けているのか。管理職は、どの段階で声をかけるのか。対応後に、誰が共有し、どこまで業務を調整するのか。人事総務は、どの状態を職場課題として扱うのか。
この判断課題を整理しないまま研修を行うと、責任感の強い社員に「もっとセルフケアしましょう」と戻ってしまいます。
タニカワ久美子の研修で扱う実装領域
タニカワ久美子の研修では、責任感の強さを否定するのではなく、現場で起きている違和感を、組織の判断材料に変えていきます。
社員が「自分が引き受ければ丸く収まる」と思っている状態。管理職が「あの人なら任せられる」と判断している状態。人事総務が「離職や不調の前に、何を見ればよいのか」と迷っている状態。
これらを、感情負担の偏在、管理職の声かけ、対応後の共有、記録の残し方、業務調整、研修後の振り返り方法に落とし込むことが、感情労働ストレス研修で扱う実装領域です。
責任感の強い社員を職場運用で守れていますか
責任感が強い社員は、職場にとって大切な存在です。
しかし、その強みを本人の我慢や善意だけで支えると、対人対応の負担は見えないまま集中します。
実際に研修として動かすには、職場ごとの業務分担、管理職の関与範囲、人事総務への共有基準、対応後の振り返り方法まで設計する必要があります。
このテーマを、社員本人の責任感や管理職の善意に戻さず、研修後の職場運用まで含めて設計できていますか。
参考文献
- Brotheridge & Grandey, 2002; Grandey, 2003; 榊原, 2011; 秋月・藤村, 2007; 中谷・杉浦・三上, 2009 ほか、感情労働と燃え尽きに関する先行研究をもとに作成。
文責:タニカワ久美子
研修テーマが未定でも、対象者・職場状況・実施時期に合わせて整理します。