健康リーダー応援コラム
研修で本当にメンタルヘルス対策ができるのか?
2024年11月16日更新
こんにちは、けんこう総研のタニカワ久美子です。
今日は、職場で行われる研修がメンタルヘルス対策として本当に効果的なのか、一緒に考えてみましょう。
私自身が研修講師として現場に立つことが多いため、このテーマはとても大切だと感じています。現代の職場における「研修」という場が持つ意味合いとその課題について、具体的にお話ししていきますね。
研修の本来の役割とは?
そもそも研修とは、職場に必要なスキルや知識を身につけるための場です。
新しい知識を吸収し、スキルを習得して職場に戻ることが目的です。しかし、研修の結果が期待にそぐわなかった場合はどうなるでしょう?場合によっては、研修が評価や査定の一部と見なされてしまうこともあります。それがプレッシャーとなり、逆にメンタルヘルスに悪影響を及ぼすこともあるのです。
研修は人事評価の一環なのか?
研修を企画する際には、具体的で明確な目的を設定し、社員が強制参加を求められる状況を避けることが重要です。
強制参加型の研修は、効果が薄れるばかりか、受講者に「選ばれる過程」や「ふるい落とし」のようなプレッシャーを与えてしまいます。気を付けなければならないのは、抽象的な言葉ばかりが飛び交う研修です。たとえば「実践レベルに落とし込む」といった言葉などです。なにをどうすることが、落とし込むになるのか?全然わかりませんよね。とくに、ビジネスIT用語といったカタカナ語は、聞いた人に質問をしづらくさせ、実際には理解が浅くなってしまうケースを多く見てきました。
あいまいな研修の落とし穴
さらに、「コミュニケーション能力」や「アサーション」の研修プログラムは多く存在しますが、その内容は多岐にわたるため、どれも似たり寄ったりです。さらに具体的な行動や成果が不明確なため、実質的な改善につながらないことが多いのです。その結果、職場でうまくいけば「コミュニケーション能力が高い」と評価され、失敗すれば「ハラスメント」と批判されてしまうリスクも生じます。つまり、抽象的な概念が重宝される一方で、実際には社員の助けにはならないのです。
社員にとっての適材適所とは?
人と接することが苦手な社員に、「挨拶のトレーニング」などの一律の研修を強制するのは、果たして有効でしょうか?
一部のサービス業では、新入社員に接遇研修を泊まり込みで行うことがあります。しかし、こうした昭和的な方法が今の時代に本当に必要かどうかは疑問です。社員一人ひとりの持つ資質や特性を尊重し、それに合った環境で働けるようにすることが重要です。無理に性格や行動を変えさせるのではなく、「適材適所」を考えることで、社員の本来の力を引き出せるのです。
職場では、各社員のスキルや個性が補完し合って働くことが理想です。研修プログラムに他者の視点を取り入れ、職場内外からフィードバックを受けることで、より実践的で有意義な内容になります。組織全体で相互にチェックし合い、影響を与え合うことで、社員一人ひとりが納得し、成長を感じられるような研修が実現できるのです。
対話できる職場環境の構築
では、どうすれば実質的な効果を持つ研修を行えるのでしょうか?
その答えは、「対話ができる環境」を作ることです。研修に頼りきるのではなく、社員同士が自由に意見交換し、対話を通じて理解し合うための場を提供することが求められます。具体的には、チームごとに意見を出し合うワークショップや、部門を超えたディスカッションの場を設けることで、自然とコミュニケーション能力や理解力が育まれます。職場が社員にとって安心して意見を述べられる場所であれば、それが組織全体のメンタルヘルスにも良い影響を与えるのです。
まとめ~研修の意義を再考する~
結局のところ、コミュニケーション能力とは単なるスキルではなく、対話のための寛容さと理解能力を持つことです。研修は、単なる知識の詰め込みではなく、職場での「共に働く力」を育む場であらねばなりません。職場全体が対話と共感の空気を大切にすることで、社員は安心して自分らしく働くことができます。社員が本当に必要としているのは、自分の強みを活かし、安心して成長できる職場環境ではないでしょうか?
これからの研修は、「実体のないキーワード」から脱却し、社員一人ひとりの個性やニーズに寄り添った内容にしていきましょう。これこそが、メンタルヘルス対策としての研修の真価を発揮する道です。
読んでくださりありがとうございます!これからも、皆さんと一緒に働きやすい職場環境をつくっていきましょう。