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ストレス研究memo

行動変容を導く健康管理の為のウェアラブル使用法Vol.138

2024年9月22日更新

こんにちは、ストレス研究専門家のタニカワです。さて今日は、行動変容や健康管理の分野で特に重要な『自己追跡デバイスがどのように少数のサンプルでも効果的に使用できるか』といった疑問を解決できそうな論文の解説をわかりやすくしていきます、

けんこう総研とGarminの協力によるDXストレス研修のプロモーション画像。左側には「働き方改革のメンタルヘルス」の本と、右側にはGarminのヘルスウォッチの写真がある。背景には山岳の景色と走る人のシルエットが描かれている。

ウェアラブルを用いた行動変化に関する最新の研究をわかりやすく解説。セルフリーダーシップとITベースのリーダーシップがどのように健康管理に影響を与えるかを、50名の長期ウェアラブルユーザーのインタビュー結果から詳しく説明します。企業の健康経営に役立つ実践的なインサイトも提供中。

けんこう総研の経済産業省から経営革新計画として採択されたウエアラブルデバイスを腕につけてのストレスケア研修はこちら

小規模なサンプルであっても、ユーザーの行動変化や動機付けに有用な論文

論文名は、「Behavior change through wearables: the interplay between self-leadership and IT-based leadership(ウェアラブルを通じた行動変容~自己リーダーシップとITベースのリーダーシップの相互作用~)

Christiane Lehrer,et.ai.:Electronic Markets(31)747-764,(2021)

健康管理やウェアラブルデバイスのユーザーがどのように行動を変えるか

「身体の不活動は、世界的な公衆衛生問題であり、個人の健康リスクを高めます。しかし定期的な身体活動や健康的な食生活を促進するウェアラブルデバイスは、これらの課題に対処する大きな可能性があり医療システムに統合されてきました。

しかし、既存の研究によると、ウェアラブルデバイスがユーザーの健康行動に与える効果には賛否両論があります。
重要なのは、ウェアラブルを通じてユーザーがどのように体系的に行動を変えるかです。
医療システムの建設的なデジタル化には、一部のユーザーが行動を変える一方で、変えないユーザーについて理解することが不可欠です。

今日、タニカワがとりあげる「ウェアラブルを通じた行動変容研究」では、セルフリーダーシップ理論に基づき、50人の長期ウェアラブルユーザーに対するナラティブインタビューを分析しました。
その結果、異なる行動結果をもたらす4つのウェアラブル使用パターンを特定しました。それは、「フォローする」「無視する」「組み合わせる」「自己リードする」です。

セルフリーダーシップ理論とは?

セルフリーダーシップ理論とは、個人が自分自身を効果的に導くための考え方を言います。簡単に言うと、他人の指示を待つのではなく、自分で自分の行動や思考をコントロールし、目標達成に向けて積極的に行動する力を育てることを意味します。
自分で目標を設定し、モチベーションを維持しながら、ポジティブな習慣や考え方を取り入れることで、より良い結果を得ることができます。この理論は、自己管理や自己成長に役立つもので、仕事や健康管理などさまざまな場面で応用されています。

ナラティブインタビューとは?

ナラティブインタビューとは、個人の経験や物語を引き出すことを目的としたインタビュー方法です。
通常の質問形式とは異なり、インタビュー対象者に自由に話してもらい、彼らが自分の経験や思いを物語のように語るのを促します。この手法では、単なる事実を聞くのではなく、対象者がどのようにその出来事を理解し、意味付けているかを深く探ることができます。
ナラティブインタビューの特徴としては、オープンエンドな質問が多く、対象者が自分のペースで自由に話を進めることができる点が挙げられます。この方法は、心理学や社会学、教育学などで、個人の内面や価値観を深く理解するために用いられています。

研究のデータ収集方法

この研究では、定量研究で一般的な、あらかじめ定義された仮説を検証するのではなく、質的研究アプローチを選択しています。
このアプローチは、経験的データ(今回の場合はインタビューデータ)からパターンやつながりを発見し、理論構築を可能にするからです (Tesch 1990)。

行動アプローチは、個人が実際に何をしているか、どのように行動しているかに焦点を当てており、個々の特性や能力に注目するものではありません (Northouse 2019)

研究の参加者

ヨーロッパで最もウェアラブルの普及が進んでいる市場の一つであるスイス在住の長期ウェアラブルユーザー50名が対象です。2019年のスイスにおけるウェアラブルの市場浸透率は7.8%でした (Statista 2019b)。選択的サンプリング法 (Miles and Huberman 1994) を用い、少なくとも6か月以上ウェアラブルを使用している長期ユーザーのみを対象としました。この条件内で、年齢、性別、職業、利用目的(例:医療管理、スポーツパフォーマンスの向上、データ収集)やデバイスの種類(ライフスタイル向けとスポーツ向け)において最大限の多様性を持たせることを目指しました。

Küsters (2009) のガイドラインに従い、インタビュー対象者のストーリーテリングを促すために、あらかじめ用意した刺激文を使用しました。「ウェアラブルを手にした時から現在に至るまでのストーリーを教えてください」と依頼し、インタビュー対象者が物語を終えた後にのみ、質問を行いました。調査の第1段階(すなわち、内在的段階)では、初期のナラティブで言及されたテーマのみを取り上げ、さらなる話を引き出しました。すべてのナラティブが尽きた後にのみ、インタビュー対象者が以前に言及していなかったテーマや概念を持ち出しました。

50名のインタビュー対象者から得られた豊富で詳細なナラティブを含めることは十分であると考えました。なぜなら、ある時点から使用例や利用履歴が繰り返され始め、テーマの飽和状態が確認できたからです (Faulkner and Trotter 2017)。さらに、自己リーダーシップ理論からの概念をデータに適用するためのコード化を行うことで、要素が繰り返され、新しい要素が見つからないという理論的飽和が観察できました (Saunders et al. 2018)。

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