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スマートウオッチの自己追跡技術とストレス管理研究Vol.137
2024年9月21日更新
こんにちは、けんこう総研のタニカワです。
この『ストレス管理研究memo』ブログは、6回にわたり世界的にメジャーなSage学術誌に、今年4月に掲載された「Sensing a Heartbeat: A New Perspective on Self-Tracking Technologies through the Integration of Interoception(心拍を感じる:内受容感覚の統合を通じた自己追跡技術の新たな視点)」の論文をわかりやすく解説しています。
内受容感覚とは
interoception(内受容感覚)は、脳の内受容体と深く関係しています。
内受容感覚とは、体内の状態を感知し、体内環境に関する情報を脳に伝えるプロセスのことです。
たとえば、心拍、呼吸、血圧、消化活動などが内受容感覚の対象となり、これらの情報は、主に内受容器(interoceptors)と呼ばれる感覚受容体を介して脳に送られます。
この論文は、、こうした内受容感覚(インターオセプション)を通じてスマートウオッチなどの自己追跡技術に対する、今最も着目されている新しい視点の学術論文です。
・「ストレス管理とインターオセプション/内なる感覚が健康に与える影響」
・「ストレス管理とインターオセプション/内なる感覚が健康に与える影響」
・「体内感覚を活用した新しい習慣形成法」
・「ストレス管理Vol.135」のつづきです。
・内受容と自己追跡技術がストレス管理に与える影響Vol.136
さあ、今日は最終回です。今までのまとめを始めまていきしょう。
論文の目的
この論文の目的は、内受容感覚(インターオセプション)の重要性を再認識することです。
内受容感覚とは、私たちの身体の内部状態を感知し、それが感情や行動に大きな影響を与える
ものだからです。ウェアラブルデバイスを通じて、内受容感覚の意識を高めることで、私たちの感情状態や、身体および世界に対する認識が変化する可能性があります。
内受容感覚は生物心理社会的現象
内受容感覚は、単なる生物学的プロセスではなく、感情や認識を通じて身体を行動に向かわせる大事な要因です。
ですから、内受容感覚は、生物心理社会的現象として理解されています。
内受容感覚は、主体の生物学的構成や、過去の経験、社会環境といった広範な文脈の中で発展していきます。
内受容感覚と自己追跡デバイスの関係
デューイの「内的習慣」に関する理論や、フロストの「注意を払う身体」に関する概念を用いて、内受容感覚が身体と環境を結びつけるプロセスを明らかにしています。
これは、
スマートウオッチの自己追跡デバイスが、健康やフィットネスの習慣改善のために使用される目的に一致します。
フロストの議論を拡張すると、スマートウオッチといった自己追跡デバイスは、私たちの内受容感覚を強調し、身体が環境の変化にどう反応するかに対する注意を喚起します。
これにより、私たちの身体が社会の中でどのように影響を受けているのか、そして心身におこるプロセスが、その影響からどのように意味を作り出すかを理解しやすくなります。
データの提示形式と内受容感覚の影響
内受容感覚は、自己追跡デバイスからのデータ提示形式により異なる反応を示します。
象徴的または環境的なデータ提示では、デバイスがフィードバックを提供する瞬間に、内受容感覚がその時点の状態に対する意識を高める役割を果たします。一方、数値データの提示では、内受容感覚が過去の経験との結びつきを強化し、新しい戦略や将来の行動に対する動機づけを促進します。
技術と身体、環境の新しい結びつき
内受容感覚を通じて、デジタルデバイスと身体の結びつきを理解することで、自己追跡がデバイスを装着していない時でも続く理由が説明できます。内受容感覚が強化されることで、デバイスがない時でも、使用者の身体への敏感さや注意のスタイルに影響を与える可能性が高いのです。
この研究から、技術とユーザーの関係が非常に複雑であることが再確認されました。内受容感覚を通じて、データに対する感情的で内臓的な反応が起こり、それが動機づけられた行動につながります。このように、自己追跡デバイスを使用することで、私たちの身体、技術、環境の間にある関係が、絡み合い、絶えず展開していくものとして再定義されるのです。
最終回によせて
最終的に、私たちの身体と心は、日々の小さな変化やストレスに対して敏感に反応しています。自己追跡デバイスと内受容感覚の結びつきを理解することは、これらの変化に気付き、適切なケアを行うための第一歩です。自分自身の状態をしっかりと把握することが、健やかな心と体を保つ鍵となるでしょう。私たち一人ひとりが、自分自身に優しく向き合い、健康を守る手段を選び取ることが大切です。