ストレス研究memo
ストレスの父セリエ研究メモNo.75
2024年5月20日更新
心身についてのストレスを唱えた第一人者、言わばストレスの父であるハンス・セリエ博士博士の論文を一昨日からわかりやすく解説してきました。今日は、ようやく最終回です。
ここでちょっと復習しましょう。
ハンス・セリエが1946年に発表した「一般適応症候群と適応疾患 (The General Adaptation Syndrome and the Diseases of Adaptation)」は、ストレス研究の基礎を築いた重要な論文があります。この論文の中でストレスに身体はどのように反応するかについて、3段階に分けられると書かれています。
一昨日のブログに書いた警告反応(Alarm Reaction)
きのうのブログに書いた抵抗期(Resistance Stage)
そして最終回の今日は、 長期間のストレスにより、身体の適応能力が限界を迎え、疲弊し、病気になる可能性が高まります。疲憊(ひはい)期(Exhaustion Stage)について説明をします。
疲憊(ひはい)期の定義
疲憊(ひはい)、聞きなれない言葉ですね。疲憊(ひはい)は、極度に疲れ果てることや疲れ切ることを意味しています。まさに身も心も極限状態で、特に長期間にわたるストレスや過労によって生じる深い疲労を表現する際に用いられます。
疲憊(ひはい)期は、セリエの唱えるストレス反応の第三段階です。長期間にわたりストレスにさらされて身体が適応能力を失い、パフォーマンスが低下する時期です。疲憊期の段階では、身体はもはやストレスに対して効果的に反応できなくなり、深刻な健康問題が生じる可能性があります。
疲憊期の特徴
1. 適応能力の喪失
抵抗期において身体がストレスに対処するために動員していた
・グルコース
・コルチゾール(ホルモン)
・アドレナリン・ノルアドレナリン(ホルモン)
・免疫システム
・セロトニン・ドーパミン(神経伝達物質)
・身体的エネルギー
が枯渇し適応能力が限界に達します。この段階では、ホルモンのバランスが崩れ、免疫機能が著しく低下します。
2. 健康問題の発生
疲憊(ひはい)期では、身体がもはやストレスに対する防御を維持できなくなるため、さまざまな健康問題が発生します。これには、心血管疾患、消化器系の問題、免疫力の低下、精神的な障害(例えば、うつ病や不安障害)などがあります。
3. 症状の悪化
長期間にわたるストレスにより、慢性的な疲労、睡眠障害、集中力の低下、体重減少や増加などの症状が現れます。これらの症状は、身体がストレスに対して効果的に反応できないことを示しています【8†source】。
疲憊期の影響
1. 免疫機能の低下
ストレスが長引くと、コルチゾールなどのストレスホルモンの持続的な分泌が免疫系を抑制し、感染症や病気にかかりやすくなります。
2. 精神的健康への影響
疲憊期において、ストレスが精神的健康にも深刻な影響を与えます。うつ病、不安、パニック障害などのリスクが増加し、精神的な安定が損なわれます。
疲憊期の管理
1. ストレスの緩和
疲憊期に達した場合、ストレスを緩和するための積極的な対策が必要です。これには、深呼吸法や静的ストレッチといったリラクゼーション技術や、心理カウンセリング、有酸素運動、バランスの取れた食事、十分な睡眠などが重要です。
参考文献
ハンス・セリエの原著論文:一般適応症候群と適応疾患(臨床内分泌学ジャーナル)
ストレスの段階は初期段階の「警告反応」と、中期の「抵抗期」と、今日お話しした「疲憊期」があるのを理解いただけたでしょうか。
ストレスを適切に管理することで、ストレスが健康に与える悪影響を最小限に抑えていきましょう。