「心」「カラダ」を支えるけんこう総研ストレスマネジメント

ストレス管理(Self-Management)とは
|健康経営・職場実装のための制度設計・評価・KPIガイド


ストレス管理(Self-Management)とは、個人の「セルフケア」だけを指す言葉ではありません。
職場の要求(負荷)と、対処資源(裁量・支援・回復機会)を設計し、心身の反応を再現可能に安定化させるための、制度・運用・学習の統合モデルです。

産業ストレス管理専門講師タニカワ久美子によるストレス管理(Self-Management)研修の講師写真

ストレス管理(Self-Management)研修を監修する、産業ストレス管理専門講師タニカワ久美子。


🍀なぜ今「ストレス管理」が会社の課題になるのか

働き方の多様化、業務の複雑化、対人業務の増加により、ストレス要因は「個人の性格」ではなく「仕事の設計」と「関係の設計」に強く依存する構造になっています。
休職・離職・生産性低下は、単発のメンタル不調ではなく、要求と資源のミスマッチが蓄積した結果です。

したがって健康経営で問われるのは、福利厚生の“足し算”ではなく、
(1)要求の可視化(2)資源の設計(3)評価(KPI)の運用(4)学習(研修)の体系化です。

  • 要求(Demand):量・期限・責任・対人緊張・不確実性
  • 資源(Resources):裁量、上司支援、同僚支援、役割明確性、回復機会、スキル

同じ要求でも、資源が適切に設計されていれば「挑戦」として関与し、ユーストレス(良性ストレス)として機能します。逆に、資源が欠ければディストレス(悪性ストレス)に転じ、不調・離職・事故・顧客対応品質の低下へ波及します。

ユーストレス/ディストレスの定義と実務への落とし込みは、体系ページで整理しています。
👉 ユーストレス(良性ストレス)とは|最新研究・実務への応用


会社の制度として実装する設計図:方針・役割・運用

ストレス管理を「現場任せ」にしないために、制度としての最小セットを定義します。ここが曖昧なまま研修だけ打っても、定着しません。

1)方針(Policy)を固定する

  • ストレス管理の目的(一次予防/再発予防/生産性・定着)
  • 対象範囲(セルフ/ライン/組織設計/外部資源)
  • 守るべき基準(相談導線、機密、エスカレーション、ハラスメント)

2)役割(Role)を分解して割り当てる

  • 人事・総務:制度設計、KPI運用、教育体系、相談導線のガバナンス
  • 管理職:要求×資源の調整、早期サインの把握、面談・支援介入
  • 本人:セルフモニタリング、回復行動、相談行動(“我慢”を義務化しない)
  • 産業保健・外部資源:評価、専門介入、再発予防の設計

3)運用(Operation)を「行動」単位に落とす

  • 1on1/面談の頻度・観点・記録ルール
  • 部署の要求(繁忙・対人負荷・役割曖昧)を定期点検する仕組み
  • 回復機会(休憩・勤務間インターバル・業務切替)を“設計要件”として管理
  • 相談導線(匿名・早期・複線)を実際に機能させる運用

対人支援・感情労働が中心の現場では、要求の質が異なります。該当する職種・組織は、こちらの整理も併読してください。
👉 感情労働ストレスとは|職場で起きる特徴・症状・対処と実装への応用


KPI設計:成果KPI/先行KPI/逆KPIで“運用”する

ストレス施策は「やった感」で終わりやすい領域です。評価設計は、成果(遅行)行動(先行)リスク(逆指標)を分けて持つのが基本です。

成果KPI(遅行):結果として良くなったか

観点注意点
生産性ミス・手戻り・品質指標、欠勤による稼働損失部署差・繁忙差を補正する
健康休職率、再休職率、面談・相談の長期化“悪化してから”だけを追わない
定着離職率、早期離職、採用コスト増定性(面談記録)も併用

先行KPI:現場で「行動」が起きているか

観点設計ポイント
教育受講率、理解度、管理職の面談実施率階層別に必修項目を固定する
運用1on1実施率、業務調整の実施件数「相談」より前に介入できるか
回復勤務間インターバル、休憩取得、業務切替現場の“取れない構造”を潰す

逆KPI:リスクが溜まっていないか(早期警戒)

  • 高ストレス者比率(ストレスチェック)
  • 心理的安全性・相談のしやすさ(サーベイ)
  • 部署ごとの負担偏り(残業・突発対応・クレーム等)
  • ハラスメント兆候(申告・面談ログの増加)

逆KPIは「人を評価する」ためではなく、部署の設計を修正するために使います。ここを誤ると、施策が一気に形骸化します。


現場への落とし込み:業種・職種で崩れやすいポイント

同じ「ストレス管理」でも、要求の質が違えば設計ポイントは変わります。典型例だけ押さえます。

  • 介護・医療:共感疲労/人員不足による回復欠如 → 回復機会の制度化が最優先
  • 教育:対人要求+境界不明瞭 → 役割定義と相談導線の複線化
  • コールセンター:情動負荷+時間圧 → 業務切替とスーパーバイズ設計
  • 開発・専門職:不確実性+締切 → 要求の可視化と裁量設計(作業の分解・優先順位)

“小ワザ”は万能解ではありません。必要なのは、要求×資源のどこを直すかを先に特定し、現場で回る運用にすることです。


次の一手を検討される企業・担当者の方へ

制度や研修を導入しても、現場で回らなければ成果は出ません。重要なのは、考え方を「制度」ではなく「行動」と「評価」に落とし込むことです。