健康リーダー応援コラム
過労死が英語で通じる日本の長時間労働とメンタルヘルス
2024年6月9日更新
こんにちは、けんこう総研のタニカワです。
長時間労働によるメンタルヘルスの影響についての講演で社員の労働安全衛生意識を高めるために必要なポイントをいくつかお話しします。
問題の明確化
まず長時間労働になると何が問題なのかを、はっきりと明確にさせましょう。
長時間労働の定義
最初に、長時間労働とは具体的にどのくらいの労働時間を指すのでしょうか?
長時間労働とは、上記の法定労働時間を超える労働時間を指します。具体的には、日本の労働基準法に基づいた定義や基準があります。
労働基準法における労働時間の規定
日本の労働基準法では、労働時間に関して以下のような基本的な規定があります:
1.法定労働時間
1日8時間、1週40時間が原則です(労働基準法第32条)。
2.法定休日
使用者は労働者に対し、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない(労働基準法第35条)。
3.時間外労働(残業)
1日8時間、1週40時間を超える労働がこれに該当します。
企業は労働基準法第36条に基づき、労使協定(36協定)を締結し、労働基準監督署に届け出ることで、法定労働時間を超える労働をさせることができます。
4.過労死ライン
過労死(過労による死亡)の危険が高まるとされる基準があり、これは一般的に以下のように定義されます:
1ヶ月の残業時間が100時間を超える場合。
2〜6ヶ月の平均で1ヶ月の残業時間が80時間を超える場合。
長時間労働の抑制策
政府や企業は、長時間労働を抑制するための様々な取り組みを行っています。
1.働き方改革関連法
2019年4月から施行された働き方改革関連法では、時間外労働の上限規制が設けられました。
原則として月45時間、年間360時間を超える時間外労働は認められません。
特別な事情がある場合でも、月100時間未満、年間720時間以内に制限されています。
2.労働時間の適正な管理
企業は労働時間の適正な管理を行い、労働者の健康を確保する責任があります。
3.ワークライフバランスの推進
政府や企業は、ワークライフバランスを重視し、労働者が健全な生活を送れるよう取り組んでいます。
長時間労働は労働者の健康に深刻な影響を与える可能性があるため、法律や企業の取り組みを通じて適切に管理・抑制することが求められています。
日本および世界における長時間労働の現状とトレンド
日本は伝統的に長時間労働が一般的であり、その影響で「過労死」という言葉が生まれました。
「過労死」は、今やそのまま英語でも通じます。これは、日本の特有の現象として国際的に認識されているためです。特に、日本の労働文化に関連する問題として認識されており、英語圏でもそのまま「Karoshi」という言葉が使われています。
「過労死」の英語での使用
1. 辞書での定義
オックスフォード英語辞典やメリアム・ウェブスター辞典などの主要な英語辞書には、「Karoshi」という項目があり、「過労による突然死」を意味するものとして説明されています。
2. 国際的な認識
「Karoshi」という言葉は、特にビジネスや医学の分野で広く認識されており、日本の労働環境に関する議論や研究において頻繁に用いられます。学術論文や国際労働機関(ILO)の報告書などでも、「Karoshi」は一般的な用語として使用されています。
アメリカ・イギリスメディア
日本のNHK的存在の国営放送BBCや、CNNといったイギリス報道機関でも「Karoshi」という言葉で、日本の労働者が長時間労働による健康問題に直面している現状を報じています。またThe New York Timesといったアメリカの新聞も日本の過労死の事例やそれに対する政府の対策について詳しく説明しています。これらの報道機関は、日本の過労死問題を国際的な視点から報じており、「Karoshi」という言葉が英語圏でも広く理解されていることを示しています。
日本の年間労働時間
日本の年間平均労働時間は1,607時間です。この数字は過去数十年間で減少していますが、依然として高い水準にあります
働文化と生産性
日本では依然として長時間労働が一般的であり、多くの企業で週40時間を超える労働が期待されています。しかし、労働時間の長さに対して生産性は低いという課題があります。2018年のデータによると、日本の時間当たり生産性は46.8ドルで、これは他のG7諸国と比べて低い数値です。
政府の取り組み
過労死の増加を受けて、日本政府は働き方改革関連法を導入し、時間外労働の上限を設けるなど、長時間労働の抑制に努めています。これにより、月45時間、年間360時間を超える時間外労働が原則禁止され、特別な事情がある場合でも月100時間未満、年間720時間以内に制限されています。
長時間労働は日本のみならず世界的な課題であり、特に日本では過労死の問題が深刻です。政府の改革や企業の取り組みにより改善が図られているものの、文化的な背景や企業の期待によって、長時間労働が根強く残っています。他国と比較しても、日本の労働時間は依然として高く、生産性向上やワークライフバランスの改善が重要な課題となっています。