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教員用感情労働スケールを作るには/ストレス研究MEMOVol.18
2022年2月23日更新
質問項目の収集と選定の一考
「対人援助職就労者を対象とする感情労働尺度」荻野ら(2004)⇒項目を教師の職務に合致した表現に修正・追加⇒4領域のテーマ・21項目・5件法
1「生徒へのネガティブな感情表出」
2「生徒への共感・ポジティブな感情表出」
3「感じている感情と表出している感情の不協和」
4「感情への敏感さ」
調査内容
・並存的妥当性検討⇒「自覚症状調べ」出所:日本産業衛生協会産業疲労研究会
5「注意集中の困難」を査定する10項目
6年齢
7性別
調査対象者
「情緒的消耗感」、「脱人格化」など、バーンアウトの中核症状とされる状態にまで至っていない公立中学校教員(教頭をのぞく一般教員)798名
(有効回答率43.9%)。対象者の平均年齢は40.9才(SD = 9.37)
「注意集中の困難」状態は、慢性疲労のいわば前駆的状態を捉えるものとして選定
探索的因子分析(最尤法・斜交プロマックス回転)
因子分析における斜交回転法のひとつ。
近年は、斜交回転が一般的に利用されている。プロマックス回転(promax rotation)は、代表的な斜交回転法。回転の目的は、因子の解釈を容易にすること。
斜交回転は、直交回転よりも解釈しやすい結果を与えることが多い。
なぜ斜交回転するのか
解釈は直交回転解よりも容易になる。「解釈しやすい=単純構造」の状態を求めやすくなる。
直交回転だけしか実行しないと、その判断の機会を失ってしまう。斜交回転しても直交回転の結果とほとんど変化しないデータもある。そのデータは本質的に直交モデルが適しているのである。
因子間に相関がある場合、その相関の大きさに関する情報を得ることができ、より発展したモデル構築の役に立つ。
つまり直交回転で得られる知見は、斜交回転ですべて得られ、さらにより多くの知見が追加されるので、斜交回転をしない積極的理由はない。
信頼性の検討
1クロンバック(Cronbach)のα係数指標
複数の検者が検査・測定を行ったときに値がどれくらい一致するか,検者どうしの一貫性およびバラツキを表す指標
性格検査の質問項目のような、各質問項目(変数)が全体として同じ概念や対象を測定したかどうか(内的整合性)を評価する信頼係数。
0から1までの値をとり、1に近いほど信頼性が高い
2折半法
1つのテストに含まれる複数の項目を、奇遇法(odd-even method)などで2つに分割することによって、信頼性係数を推定しようとする方法。
被験者を2群に分けて両群のテスト得点がどれほど一致しているかどうかをみるというものです。基本的な考え方は再検査法と同じ。
スピアマン―ブラウン(Spearman-Brown) の公式により2分された項目得点間の関係
※Spearman-Brown の公式とは
同一の特性について測定する個の平行テストがあるとき、全平行テストによる合計得点の信頼性係数は次のスピアマンーブラウンの公式を用いて計算することができる。
妥当性の検討
・交差妥当性の検討を行うため、確認的因子分析
※交差妥当性とは
ある標本で重回帰式などの予測式が成り立つとき、別の標本でもその予測式が成り立つかどうかを確認すること。誤差が少なければ交差妥当性が高い。
※確認的因子分析とは
すでにある仮説モデルでデータをうまく説明できるかどうかを確認することを目的とした分析。
・構成概念妥当性の検討を行うため、性別を独立変数に、本尺度の各下位尺度得点を従属変数としたt 検定
※t検定とは
仮説検定で用いられる方法のひとつ。2つの独立した母集団があり、それぞれの母集団から抽出した標本の平均に差があるかどうかを検定することを「2標本t検定」と言う。
第2因子の「積極的感知」
相手の感情に反応しようと敏感になったり、理解しようと努力したりする項目によって構成されている。
“感情への敏感さ” 荻野ら(2004)
“クライエントの感情への敏感さ”Zapf et al.(1999)
教員は、相談場面のみならず日常生活の中で交わす何気ない会話場面においても生徒に影響を与えている。
教員の必要な資質として、共感性の高さや共感性を言語で表出する能力(鈴木,2007)
第2因子は、このような教員が日常的に行う生徒への情緒的配慮が反映
第3因子の「指導的表出」
生徒のより妥当な感情喚起を目的とする。怒りや厳しさの意図的な表出。
教員が生徒を指導する際、時として厳格な態度や叱責を示す必要があるという実情に即していると考えられる。 ≒ “ネガティブな感情表出”荻野ら(2004)
単にネガティブな感情を表現するのではなく、必要に応じて自らの感情表現に教育的意味を内包させるといった教員特有の性質を強調する⇒「指導的表出」
顧客に快を提供するという単なるサービス業ではない、教育、医療、福祉などこの種の対人援助職に特有の感情労働と捉えられる