ストレス研究memo
ストレス状況下での行動制御と問題行動の対処法Vol.87
2024年6月11日更新
今日のストレス研究は、災害や事故が人々にもたらす心理的影響について、行動分析学の観点から解説します。
災害・事故がもたらす心理的影響と行動分析学の知見
多くの人が人災や天災に遭遇すると、精神状態が不安定になり、睡眠不足、集中力の低下、過剰な興奮などの症状を訴えます。このような精神状態を情動反応と呼びます。情動反応は、行動分析学では「レスポンデント条件付け」によって説明されます。例えば、津波の体験者は海や船、土砂を見るだけで激しい恐怖反応を示すようになります。これは、悲惨な体験がこれらの中性刺激と結びつき、条件刺激として反応するようになった結果です。
トラウマを抱えている社員へのストレス対処法
例えば、製造業の社員が大きな機械音や工場内の火災報知器の音に対して過剰な恐怖反応を示す場合を考えてみましょう。これは、過去に大きな機械の故障や火災といった恐ろしい出来事を経験したことが原因かもしれません。このような場合、以下のような手順で恐怖反応を軽減することができます。
1.段階的ばく露の計画
最初に、恐怖刺激(例えば、火災報知器の音)を非常に短時間、低い音量で再生します。このとき、社員がリラックスできる環境で行うことが重要です。
社員が音に慣れたら、徐々に音量を上げ、再生時間を延ばしていきます。
2.リラクゼーション技法の導入
音を聞かせる前後に、深呼吸や瞑想などのリラクゼーション技法を実施します。これにより、恐怖反応を軽減しやすくなります。
3.段階的ばく露の実施
最初は短い時間、低い音量から始め、徐々に音量と再生時間を増やしていきます。社員が過度の恐怖を感じない範囲で進めることが重要です。
4.定期的な評価と調整
各段階で社員の反応を評価し、必要に応じて進行ペースを調整します。社員が音に対して恐怖を感じなくなった時点で次の段階に進みます。
5.最終段階
最終的には、実際の火災報知器の音量と同じレベルで音を再生し、社員が冷静に対処できるようにします。
レスポンデント条件付けの解除
過剰な情動反応は、適切な手続きを踏むことで軽減することができます。レスポンデント条件付けの解除には、条件刺激を単独で繰り返し提示することが有効です。パブロフの犬で有名な実験では、メトロノーム音をエサなしで繰り返し聞かせることで、唾液の分泌反応が消失しました。このように、嫌悪的な状況に対する恐怖反応も、計画的に対処することで軽減できます。
行動分析学の知見は、大災害や事故後の心理的影響を理解し、適切に対処するための重要な手段となります。被災者の早期の心理的回復と健やかな未来を祈ってやみません。
今後も、ストレス状況下での行動制御と問題行動の対処法について詳しく解説していきます。
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