ストレス研究memo
タニカワ久美子のストレス研究memoVol.180
2024年12月19日更新
おはようございます。けんこう総研のタニカワ久美子です。
学会へ投稿する研究論文もようやく大詰めを超えようとしています。長かったです。構想着想段階をいれたら4年です。
このブログへは備忘録として書いています。けんこう総研としてのブログ本格始動は後しばらくお待ちください。突貫工事でがんばっています。
抄録
本研究は、デスクワーカーを対象に、運動習慣と顕在性不安レベルが心拍数の変化に与える影響を調査した予備的研究である。本研究では、職場環境下で運動が心拍数動態にどのように応答するかを中心に検討した。研究の目的は、運動や不安によって生じる心拍応答の個人差を明らかにし、職場での健康管理戦略における潜在的な示唆を得ることである。
本研究にはデスクワーカー10名が参加し、1時間の運動セッションに取り組んだ。このセッションは、職場で現実的に取り入れ可能な軽度から中程度の身体活動を想定して設計された。心拍数データは運動中および運動後に連続的に収集され、心拍数変動の大きさやパターンが分析された。
その結果、参加者間で心拍数応答に顕著な個人差が見られた。一部の参加者は運動中に大幅な心拍数の上昇とその後の徐々に回復する傾向を示した一方で、他の参加者はより穏やかな応答を示した。この差異は、運動が心拍数に与える影響が基礎体力、自律神経機能、個々のストレス感受性といった複数の要因に依存する可能性を示唆している。
顕在性不安レベルが高い参加者は、運動に対して一貫性のない心拍応答を示した。一部は心拍数の過剰反応を示したが、他の参加者は最小限の変化に留まった。この結果は、高い不安が必ずしも心拍数のストレス応答を増幅するわけではないことを示唆している。むしろ、心理的緊張、職場のストレス要因、および個々の生理的特性の相互作用が、独自の心拍応答パターンを生み出すと考えられる。また、性別による違いも観察された。男性参加者は運動中に心拍数の顕著な上昇を示す傾向があり、交感神経系の活性化が強いことを示唆している。一方、女性参加者は比較的穏やかな心拍応答を示し、副交感神経活動が安定していることを示唆している。
これらの結果は、職場での運動介入を設計する際の複雑性を強調している。画一的なアプローチでは、従業員の多様な心拍および心理的プロフィールに対応できない可能性がある。不安レベル、性別差、基礎体力を考慮した個別化された戦略が、従業員の健康と生産性の向上を目的とした運動介入を最適化するために不可欠である。
これらの知見は、生理的および心理的特性を考慮しない画一的な介入の限界を浮き彫りにしている。一方で、性差、不安度、運動習慣といった要因を踏まえた個別化されたストレス管理や運動プログラムの必要性を示唆している。しかしながら、本研究はサンプルサイズが小さく、参加者が限定的であるため、今後はより大規模かつ多角的な検討が求められる。