ストレス研究memo
タニカワ久美子のストレス研究memoVol.175
2024年12月1日更新
先行研究
心拍は、交感神経と副交感神経によって拮抗的に支配されている。そのため自律神経活動の静的なバランスはしんぱくに反映される。
1. 井上 博. 循環器疾患と自律神経機能. 東京,第2版医学書院,2001
2.鵜飼和寿,下内章人,森麻里子ほか.健康成人におけるストレスと心拍数の関連.日本生理学会.2005;
ストレスは、精神的ストレスと身体的ストレスに分類されます。
心拍数(HR)と身体活動(PA)の回帰直線からのHRの偏差を用いて、精神的ストレスを評価できる可能性を報告した。
身体的ストレスは、様々な種類のPAへの耐性による影響がある可能性があり、HRおよびPAとの統計的に有意な相関は示されなかった。
一方で、被験者の半数において、精神的ストレスが身体的ストレスと有意な相関を示しました。
精神的および身体的ストレスを定量化するには、HRに加えて他のバイオマーカーが必要である可能性が示唆される。
高津浩彰,宗像光男,小関修ほか.心拍変動による精神的ストレスの評価についての検討.電気学会論文誌.2000;120(1):104-110.
主観的なストレス値と心拍変動(HRV)の定量的な関係を評価した研究。
特に、R-R間隔(RRI)と呼吸性洞性不整脈(RSA)の平均値を用いて、精神的負荷が心拍変動に与える影響を分析しています。
松本佳昭,森信彰,三田尻涼ほか.心拍揺らぎによる精神的ストレス評価に関する研究.ライフサポート.2010;22(3):19-25
心拍変動から呼吸性洞性不整脈成分(RSA)の影響を低減させた幾何学的図形解析手法を提案し、精神的ストレスを定量的に評価している。
・~~~ごとのばらつきが大きかった
ることがわかった。
・なお、~~~においてストレスレベルも並行して計測したが、欠損値が大半を占めていたため、本稿でデータとして取り上げることを断念した。今後,より詳細で精度の高い実験をするために,計測のタイミングなどを再検討する必要がある。
ストレス負荷後も緊張状態(興奮状態)が継続していたのではないかと推測される.しかしながら,今後,適切に実験を行うためには,ストレス負荷前後に,確実にリラックスさせる工夫が必要であると考えられる.
・ いずれの調査者に対しても~~~
・この結果見ると,いずれのステージにおいても、~~~に対して~~~の方が、有意な差が出ている割合が高いことがわかる.
・Fig.~に,調査者Cに対して実施した結果の一例を示す.
・~~~に比べて明確に変化が見て取れることがわかる。
開始直後の心拍数の差を検定する
・ストレス状態と安静状態の結果に有意な差あるかを定量的に評価するため,51 回の実験に対して,ストレス前とストレス負荷中(Relax→Stress),ストレス負荷中とストレス後(Stress→Relax)の各ステージにおける評価結果について,Student の t 検定に基づいて,5%の危険率で有意差検定を行った。
南谷晴之.ストレスを計る.電子情報通信学会.1997;80(7):754-757
この論文は、ストレス状態を評価するための生理的信号の測定方法について解説されています。
特に、ストレッサー(ストレス因子)による刺激が生体の恒常性(ホメオスタシス)に与える影響を検討し、心拍変動や自律神経活動などの生理指標を用いてストレスを定量的に評価する手法.
ストレス評価における生理的指標の有用性を示している。
雪下岳彦,大谷悟,小林弘幸.メンタルヘルスと自律神経:心拍変動解析を用いたきゃかん的なストレス評価.日本抗加齢医学会.2015;11(1):42-47
心拍変動解析を用いてメンタルストレスと自律神経活動の関係を客観的に評価
Moein Razavi, Anthony McDonald, Ranjana Mehta, et al.Evaluating Mental Stress Among College Students Using Heart Rate and Hand Acceleration Data Collected from Wearable Sensors(大学生におけるウェアラブルセンサーで収集した心拍数と手の加速度データを用いた精神的ストレスの評価).Computer Science.2023;
これらの先行研究を総合的にまとめると、ストレスと心拍数の関係について以下のような知見が得られます
1. 心拍数はストレスの重要な指標の一つである
- 精神的ストレスと心拍数: 心拍数の変動(HRV)や平均心拍数が、精神的ストレスと関連している可能性が多くの研究で示されています。ストレスが高まると交感神経が活性化し、心拍数が上昇する傾向があります。
- 身体的ストレスと心拍数: 身体的活動に伴うストレスでは、心拍数が増加するものの、活動の種類や個人の身体的耐性によって相関が変動するため、単純な心拍数だけでは正確な評価が困難な場合があります。
2. 心拍変動(HRV)の解析が有効である
- ストレス状態を評価する際、単純な心拍数ではなく、心拍変動(HRV)を用いることで、より精緻なストレス評価が可能となることが示されています。特に、HRVの低下が精神的ストレスの増加と関連しているとされます。
- ただし、一部の研究では、スペクトル解析などの詳細なHRVパラメータがストレスと直接的な相関を示さない場合もあり、他の指標を補完的に用いる必要があるとされています。
3. ストレス評価には心拍数以外のデータも必要
- 心拍数やHRVに加え、身体活動(加速度)や主観的ストレスの自己報告を組み合わせることで、ストレスの検出精度が向上することが報告されています。特に、ウェアラブルデバイスによる連続データ取得は、自然な日常環境でのストレス評価に有効です。
- 例: Razaviらの研究では、手の加速度と心拍数の標準偏差などを組み合わせた機械学習モデルが高精度のストレス検出を実現しました。
4. 精神的ストレスの検出が身体的ストレスよりも難しい場合がある
- 身体的ストレスは一般に活動量や心拍数と関連が見られますが、精神的ストレスは個人差が大きく、一部の研究では有意な相関が得られない場合も報告されています。
- このため、より多様なバイオマーカーや心理的評価指標の併用が求められます。
5. 機械学習やリアルタイムモニタリングが有望
- 機械学習を活用したストレス検出モデルは、心拍数や加速度、その他のデータを統合的に解析し、ストレスエピソードを特定する有力なアプローチです。これにより、ストレス評価がより実用的かつリアルタイムで可能になると考えられています。
結論:
心拍数はストレスの生理的指標として非常に有用であり、特に精神的ストレスの評価において重要な役割を果たします。ただし、心拍数のみでは不十分な場合もあるため、心拍変動(HRV)、加速度データ、自己報告などの補助的なデータと組み合わせて使用することで、より正確なストレス評価が可能となります。また、ウェアラブルセンサーと機械学習技術の進展により、ストレス評価の実用性がさらに高まることが期待されています。