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ストレス研究memo

タニカワ久美子のストレス管理研究Vol.168

2024年11月18日更新

こんにちは、けんこう総研のタニカワ久美子です。今日は、感情とストレス、そして脳の解剖学的なつながりについてお話しします。最近、J・ダグラス・ブレムナー医師が2003年に出版した「ストレスが脳をダメにする」(青土社)という本を読み直し、その中に非常に興味深い内容がありました。ブレムナー医師はアメリカの精神科医であり、ストレスが私たちの脳に与える影響について数々の研究を行ってきた方です。今回は、その本から得られた洞察をもとに、ストレスと脳のつながりをわかりやすく解説していきます。

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ストレスが脳をダメにする」の内容を参考に、ストレスが脳に与える影響をわかりやすく解説。感情の脳解剖学や神経生理学的視点から、共感神経系や視床下部の役割を詳述します。けんこう総研のタニカワ久美子が、科学的知識をもとにストレス管理の重要性を紹介し、心身の健康維持に役立つ情報をお届けします

【脳と感情の科学的理解】ストレスと脳の関係を探る

20世紀初頭から現代に至るまで、医師や科学者たちは、トラウマ性ストレスや感情の神経生理学的なメカニズムを探求し続けてきました。その中で特に注目したいのが、ストレス応答の研究で知られるウオルター・キャノン博士の業績です。

闘争か逃走か応答とは?

ウオルター・キャノン博士は、ストレス因子に対して体がどのように反応するのかを初めて解明した科学者です。彼は、「闘争か逃走か応答」という概念を提唱し、これが生存に不可欠であると説明しました。例えば、危機的な状況では、体は胃や消化器系などの生存に即時的には関係ない部分への血流を制限し、代わりに脳や筋肉といった重要な部位に血液を集めてエネルギーを供給します。このプロセスは、短期的には命を救うために進化の過程で選ばれた適応です。

共感神経系とその役割

キャノン博士は、ストレス応答の中で共感神経系が果たす役割にも注目しました。この神経系は心臓の鼓動や発汗、筋肉の緊張を引き起こす働きをし、体が危険に対応する準備を整えます。このような応答は、たとえば突然の危険に直面した際に、全力で走って逃げたり、戦ったりするために必要です。

感情と脳の関係を探る

さらにキャノン博士は、動物を使って脳のさまざまな領域が感情の発生にどのように関与しているかを研究しました。脳には「大脳皮質」と呼ばれる部分があり、その下には「皮質下構造」と呼ばれる領域があります。皮質下構造には、進化の過程で非常に保存された部位である視床下部、偏桃体、海馬、帯状回などが含まれます。これらの領域は、感情の発生に重要な役割を担っているのです。

猫の実験から得た知見

キャノン博士は、大脳皮質を除去した猫を使って実験を行いました。その結果、脅威や未知の状況に対する恐怖反応が強まることがわかりました。具体的には、アドレナリンの分泌が活発になり、血圧の上昇、発汗、毛の逆立ちなどの反応が見られました。この一連の反応は「偽激怒」と呼ばれ、視床下部や他の皮質下構造が感情に関与していることを示しました。

視床下部と感情の座

キャノン博士は最終的に、視床下部が感情の制御に重要な役割を果たしていることを発見しました。この部位は、脳から体全体への自律神経応答を司る主要な「戸口」として働いています。たとえば、前頭皮質から送られる信号が視床下部を経由し、交感神経系を通じてストレス反応を引き起こします。

パペス回路の仮説

また、キャノン博士の研究をもとに、脳解剖学者のパペス氏は「パペス回路」と呼ばれる仮説を提唱しました。これは、視床下部、視床、海馬、帯状回といった脳の領域が相互に結びつき、感情を生み出す回路を形成しているというものです。この回路は「辺縁系」とも呼ばれ、感情や本能的な反応に深く関与しています。

まとめ:脳の古代の部位が感情に果たす役割

脳の辺縁系は、進化の歴史の中で最も古くから保存されている部分で、うさぎのような小さな哺乳動物にも見られます。これに対して、大脳皮質は人間のような高等な動物ほど発達しています。古代の脳は「嗅脳」とも呼ばれ、臭覚を通じた自己防衛などの基本的な行動にも関与しています。このように、原始的な脳構造は感情やストレス反応を担い、進化の中で重要な役割を果たしてきたのです。

このように、ストレスと脳の関係は非常に深いものがあります。私たちの健康を維持するためには、これらの知識を活かしてストレスを管理し、心身のバランスを保つことが大切です。皆さまの生活に、この情報が役立てば嬉しいです。

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