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ストレス研究memo

タニカワ久美子のストレス管理研究Vol.165

2024年11月8日更新

こんにちは、けんこう総研のタニカワです。今日も研究論文についての備忘録をかきます。論文投稿までしばし斜め読みでご笑覧ください。
現代の職場環境は、デスクワーカーにとって心身の健康に関する課題を抱えている。とくに長時間の座位作業は、運動不足やストレスの増加を引き起こし、心身の健康に深刻な影響を与えることが多くの先行研究で指摘されている。Thayerら(2010年)は、長時間の座位が自律神経系の不均衡を引き起こし、心拍変数の上昇やストレスレベルの増加と関連していることを報告している​。また、Healyら(2019年)²)は、職場における身体活動が心拍数の調整に及ぼす影響をメタ分析し、短時間の軽度な運動が心拍数を安定させ、ストレスを軽減する可能性があることを示唆している。

運動は一般的に、精神的および身体的健康に良い影響を与えるとされている。しかし、運動がどのように行われるかによって、その効果は大きく異なることが明らかになっている。BenSingh(2023年)の研究は、強制的または義務的な運動が心理的ストレスを増加させ、その結果として運動の健康効果が相殺される可能性があると示唆している。特に運動不足の人や、運動に対して苦手意識を持つ人にとっては、運動自体が新たなストレス源となり得る。このような場合、運動は心拍数の増加や生理的ストレス反応を引き起こし、リラクゼーション効果が得られにくいことがある。さらに、学校の体育授業や介護施設での運動プログラムのように、参加が義務付けられている状況では、個々の好みや準備状態に関わらず運動を行うことが求められるため、心理的なストレスが高まりやすい。これにより、運動が持つ本来の健康効果が十分に発揮されないこともある。

心拍数は、自律神経系の活動を反映し、ストレスや健康状態の指標として広く用いられている。通常、ストレス状態において交感神経が有意になると心拍数が増加し、リラックス状態では副交感神経の作用により心拍数が低下する。したがって、心拍数の変動を観察することで、心理的および生理的ストレス状態を評価することが可能である。

Kimら(2018年)は、ストレスが高い個人では交感神経系が優位になりやすく、運動を行っても心拍数がなかなか安定しないと報告している。このように心拍数の測定は心理的および生理的ストレスの評価において重要な役割を果たすことが分かる。特に、急激なストレス下では心拍数が急上昇し、慢性的なストレスでは心拍数が持続的に高い状態となることが多い。

近年、ウェアラブルデバイスを用いた心拍数のモニタリングが普及し、日常生活や運動中のストレスレベルを手軽に測定できるようになっている。これにより、個人の生理的ストレス反応を即時的に観察し、管理することが可能である。これらのデバイスは比較的安価で一般ユーザーにも普及し、医療器レベルの精度に近い測定も可能にしている。そのため、ウエアラブルデバイスを使用した心拍数とストレスに関する研究は近年急増しており2)3)4)、臨床研究や健康管理の分野で注目を集めている。

本研究では、勤務中にデスクワーカーを対象に、手首型ウェアラブルデバイスを装着し、職場での運動をセミナー形式で実施し、APIを用いてオフラインでデータを収集し、その後に心拍数の詳細な変動を解析する。先行研究に基づき、義務的な運動が心理的ストレスを引き起こす場合でも、運動が生理的にどのような影響を及ぼすかを観察することで、個別化されたストレス管理プログラムの設計に寄与する知見を得ることを目的とする。

仮説としては、運動習慣のある者は心拍数が安定し、ストレスレベルが低いことが予測される。一方で、顕在性不安度が高い群では、交感神経の活性化が影響し、運動によっても心拍数が安定せず、ストレスレベルが下がりにくいと推測される。本研究は、こうした状況において、運動がもたらす心理的および生理的な影響を包括的に理解し、より効果的な職場でのストレス管理手法を探ることを目指すものである。

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