ストレス研究memo
タニカワ久美子のストレス管理研究Vol.160
2024年10月28日更新
運動習慣がなく、さらに顕在性不安が高い人が運動をすると、HRV(心拍変動)は一時的に低下する可能性が高いと予想されます。これは、顕在性不安が高い人は交感神経系が過剰に働きやすく、運動による負荷に対してもストレス反応が強く出るためです。しかし、定期的な運動を継続することで、長期的にはHRVが改善される可能性もあります。
予想される短期的な反応
1. 交感神経の過剰反応
顕在性不安が高い人は、ストレスに敏感で、交感神経系が過度に活性化していることが多いです。
運動は通常、交感神経を一時的に活性化し心拍数を上げるため、運動中のストレス反応として交感神経がさらに強く働き、HRVが低下します。特に、運動習慣がない人では心臓や自律神経系が適応しきれず、HRVの一時的な低下が起こると考えられます。
2. 副交感神経の抑制
副交感神経は,リラックスや回復を司る役割があります。
しかし顕在性不安の高い人では、この副交感神経がうまく機能しにくい状態です。運動習慣がない場合、運動による交感神経の活性化に対して副交感神経が十分に回復できず、HRVが低い状態が続く可能性があります。
長期的な変化の予測
運動習慣がない人が運動を開始した場合、初期段階ではHRVが一時的に低下するかもしれませんが、定期的に運動を継続することで、自律神経系のバランスが改善し、HRVが徐々に高くなってきます。
1. 自律神経の適応
運動を継続すると、徐々に自律神経系が適応し、交感神経と副交感神経のバランスが取れるようになります。特に、副交感神経の活動が改善され、運動後の回復期にHRVが上昇することが期待されます。この変化により、顕在性不安が高い人でも、運動習慣を持つことでHRVが改善することが予想されます。
2. ストレス耐性の向上
定期的な運動は、ストレスに対する体の耐性を向上させる効果があります。これにより、顕在性不安が高い人でも、ストレス反応が緩和され、HRVが徐々に回復していく可能性があります。つまり、運動習慣が身につくことで、運動中や運動後にHRVが高い状態を保つことができるようになります。
エビデンスに基づく知見
1) Hansen Å M,Johnsen S ,Sollers J J.Heart rate variability in stress and anxiety.Scandinavian Journal of Public Health;2004,32(5):35-41.
この研究では、ストレスや不安が高い人々におけるHRVの低下が確認されていますが、運動習慣を持つことでHRVが改善する可能性が示唆されています。特に、定期的な運動によって自律神経のバランスが改善されることが報告されています。
2) Dishman R K,Nakamura Y,Garcia M E.The effects of aerobic exercise on anxiety and heart rate variability.Psychosomatic Medicine;2000,62(6):63-67.
この研究では、有酸素運動が不安症状の改善とHRVの上昇に関連していることが示されています。運動を継続することで、自律神経の回復力が向上し、不安が軽減され、HRVが向上することが報告されています。
まとめ
運動習慣がなく顕在性不安が高い人が運動を始めた場合、最初はHRVが一時的に低下することが予想されます。
これは、交感神経系が過度に活性化され、体がストレス反応を強く示すためです。しかし、運動を継続することで、自律神経系のバランスが整い、HRVが改善される可能性が高いです。最終的には、運動習慣を身につけることで、不安の軽減とHRVの向上が期待できます。