ストレス研究memo
タニカワの運動習慣とHRVとストレス管理研究Vol.159
2024年10月27日更新
こんにちは、けんこう総研のタニカワです。
運動習慣がある人は、一般的にHRV(心拍変動)が高い傾向にあります。
運動習慣があると、定期的な運動が自律神経系に良い影響を与え、特に副交感神経系の活動を促進し、HRVを向上させるためです。今日のけんこう総研ブログは、運動と心拍変動とのメカニズムを説明していきます。
今日のブログは昨日のHRVの説明の続きです。
運動習慣とHRVの関係
1. 自律神経のバランス向上
・ 定期的な運動は、心臓を含む全身の循環器系を強化します。運動は副交感神経の活性が促進され、心拍数が下がり、HRVが高まります。副交感神経は体をリラックスさせ、ストレスからの回復を助けるため、HRVが高い状態は身体が柔軟にストレスに対応できることを示します。
・運動後の回復期には、心拍数が落ち着くと同時に副交感神経の働きが活性化し、HRVが向上することが観察されています。
2. 運動の種類による影響
・有酸素運動(ウォーキング、ランニング、サイクリングなど)は特にHRVの改善に効果的とされています。これらの運動は持続的な心血管系の負荷をかけることで、副交感神経の活動が高まりやすく、HRVの向上を促します。
・反対に、過度な運動や極度の疲労状態では、逆に交感神経が過剰に働き、HRVが一時的に低下することがありますが、適度な運動習慣ではHRVの向上が期待できます。
エビデンス
いくつかの研究が、運動習慣とHRVの間には正の相関があることを示しています。
1)Michael S, Graham K S,Davis G M. Cardiovascular responses to exercise and post-exercise recovery in endurance-trained and active individuals.Frontiers in Physiology;2017,8:1-12.
この研究では、運動習慣のある人(特に持久力トレーニングを行っている人)は、運動後の回復期においてHRVが高く、心臓がより効率的に自律神経を調整できることが示されています。運動習慣が副交感神経の活動を増加させ、HRVを向上させる効果が確認されています。
2)Sandercock G R, Bromley P D,Brodie D A.The effect of exercise on heart rate variability: In normal and heart disease populations.Clinical Autonomic Research;2005,15(6):382-390.
このレビュー研究では、運動習慣がHRVを改善するエビデンスが提示され、特に健康な人々において、有酸素運動がHRVを向上させると報告されています。また、心疾患のリスクがある人においても、適度な運動はHRVを改善することで予防効果を持つことが示唆されています。
運動がHRVを高めるメカニズム
副交感神経の向上
定期的な運動は、運動中に交感神経を活性化し、その後の回復期に副交感神経が優位になるため、自律神経の柔軟性が向上します。これがHRVの改善につながります。
心血管系の強化
運動習慣により心臓が強化されることで、少ない心拍数で効率的に血液を循環させることができ、心拍数の変動が増加します。これがHRVの増加として現れます。
まとめ
運動習慣がある人は、心臓と自律神経系が効率的に機能し、HRVが高い状態にあることが多いです。これは、身体がストレスや負荷に対して柔軟に反応できる能力を持っていることを示しています。ただし、運動の強度や頻度によってはHRVに一時的な影響が出ることがあるため、適度な運動を心がけることが重要です。
運動習慣がない人は、一般的にHRV(心拍変動)が低い傾向にあります。これは、運動が自律神経系、特に副交感神経系の働きを強化し、HRVを高める効果があるためです。運動習慣がない場合、この副交感神経の働きが十分に活性化されず、HRVが低くなることがよく見られます。
運動習慣の欠如とHRV低下のメカニズム
1. 自律神経の不均衡
運動が自律神経、特に副交感神経の活動を強化する効果があるのに対し、運動習慣がないと自律神経のバランスが崩れ、交感神経の優位状態が続きやすくなります。これがHRVの低下を引き起こします。交感神経が優位になると、心拍間の変動が少なくなり、HRVが低くなるのです。
2. 心血管系の弱化
運動習慣がない人は、心血管系が鍛えられておらず、心臓が効率的に血液を送るための適応が進んでいません。そのため、心拍数は比較的高いままで、HRVが低い傾向があります。心臓がストレスや変化に対して柔軟に対応できないため、HRVの低下が見られるのです。
3. 慢性的なストレスの影響
運動不足は、ストレス耐性を低下させ、慢性的なストレスの影響を受けやすくします。慢性的なストレスは交感神経系の過剰な活性化を引き起こし、これによりHRVが低下します。運動がもたらすリラックス効果がないため、ストレスから回復するための副交感神経の働きが十分に発揮されません。
エビデンスに基づく知見
運動習慣の欠如がHRVの低下と関連していることを示す研究は多くあります。
1)Nunan D, Sandercock G R,Brodie D A.A quantitative systematic review of normal values for short-term heart rate variability in healthy adults. Cardiology Research and Practice;2010:1-21.
このシステマティックレビューでは、運動習慣のない人々のHRVが、運動習慣のある人々と比較して低いことが報告されています。特に、定期的な運動を行っている人のHRVは高く、心臓と自律神経系が効率的に機能していることが確認されています。
2)Soares-Miranda L, Sattelmair J, Chaves P, et al.Physical activity and heart rate variability in older adults: the Cardiovascular Health Study Circulation;2014,129(21):2100-2110.
この研究では、定期的な身体活動を行っていない高齢者がHRVの低下を示すことが明らかにされています。運動が心血管系と自律神経系に与える影響が強調されており、運動習慣のない人々は心拍数の調整能力が低く、HRVが低い状態が続くことが示されています。
まとめ
運動習慣がない人は、一般的にHRVが低くなります。これは、運動が自律神経系のバランスを整え、心臓の柔軟な調整機能を強化する効果を持つためです。運動習慣がないと、この自律神経系の調整能力が低下し、ストレスに対する反応が弱くなるため、HRVが低い状態が続きます。HRVが低いということは、身体がストレスや外的負荷に対して柔軟に対応できない状態を示しており、これは健康リスクの増加にもつながる可能性があります。
適度な運動を取り入れることは、HRVを高め、心身の健康を保つことが重要です。