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ストレス研究memo

タニカワ久美子のHRVとストレス管理研究Vol.158

2024年10月26日更新

こんにちはけんこう総研のタニカワ久美子です。
きのうのブログで、心拍数が上がったり下がったりが激しい人は健康な証拠!というお話をしました。

秋空と運動の爽やかなイメージ写真

今日のブログでは、運動習慣がない状態で顕在性不安が高い場合のHRVへの影響を取り上げています。研究結果に基づき、運動が心拍数を上げる一方で、ストレスが強いと心拍変動(HRV)が一時的に低下することを解説します。


HRV(心拍変動)が低いことがストレス、疲労、過度の身体的負荷と関連しているというエビデンスを示す学術論文を2件ご紹介します。

1) Thayer J F, Yamamoto S S, Brosschot J F. The relationship of autonomic imbalance, heart rate variability and cardiovascular disease risk factors. International Journal of Psychophysiology,2010; 78(2):176-184.

この研究では、HRVの低下が自律神経のバランスの乱れを反映し、心血管疾患のリスクを増加させることが示されています。特に、交感神経が優位に働いている状態(ストレスや疲労)がHRVの低下と関連しており、心臓が柔軟に適応できないことを示す重要な指標とされています。

2) Kim H. G., Cheon E. J., Bai D. S., et al. Stress and heart rate variability: A meta-analysis and review of the literature.Psychiatry Investigation, 2018;15(3):235-245.

このメタ分析では、HRVの低下が心理的および身体的なストレスの指標として強く関連していることが確認されています。ストレスや過度の身体的負荷による交感神経の過活動が、HRVを低下させるメカニズムについて詳細に説明されており、疲労やストレスがHRV低下に与える影響が明確にされています。

これらの研究は、HRVが低いことがストレスや身体的負荷と密接に関係しているというエビデンスとなります。

運動で心拍数は上がっても顕在性ストレスがあるとHRVは低い

運動をすると通常、心拍数は上がりますが、元々顕在性ストレスのある人においては、運動中に心拍数が上がってもHRV(心拍変動)は低い状態が維持されることがあります。
これは、顕在性ストレスが交感神経系を過度に活性化させているために、副交感神経系の働きが抑制され、HRVが十分に回復しないためです。

理論的な背景

健康な人の運動反応

運動中は心拍数が上昇し、一時的に交感神経が優位になります。しそして運動後は副交感神経の活動が増加し、HRVが回復します。このバランスが取れていることが、健康的な自律神経系の反応を示します。

顕在性ストレスの影響

顕在性ストレスが高い状態では、交感神経系が常に活性化されているため、運動中にさらに交感神経が優位になります。その結果、心拍数は通常どおり上がりますが、HRVが回復せず、低いままとなります。この状態は、ストレスや不安が体に負担をかけ続けていることを示唆します。

先行研究に基づく背景

1. HRVとストレスの関係

前述したKimら(2)のメタ分析では、ストレスがHRVに与える影響が強調されています。ストレスが高い人は交感神経系が優位になりやすく、運動をしても副交感神経が十分に働かず、HRVが低いままになることが多いと報告されています。

3) Dishman R K, Nakamura Y, Garcia M E, et al.Reduced heart rate variability and prolonged recovery after acute mental stress in individuals with high perceived stress.Psychosomatic Medicine.2000;62(5):652-657.

ストレスと運動の相互作用に関する研究
この研究では、精神的ストレスが高い人々が、運動後にHRVの回復が遅く、ストレスの影響で副交感神経系の回復が妨げられることが示されています。特に、運動によって心拍数は上がっても、HRVが低い状態が続くことが観察されました。

このように、運動によって一時的に心拍数が上昇しても、顕在性ストレスが高いとHRVが低く、心身の柔軟な回復力が低下している可能性が高いと考えられます。

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