ストレス研究memo
タニカワ久美子のストレス管理研究Vol.152
2024年10月12日更新
こんにちは、けんこう総研のタニカワ久美子です。
日本ストレス学術総会に向けた私の研究の続報です。今回は、運動習慣の有無および不安顕在度(高・標準)がストレスレベルに与える影響を4群で比較した結果について報告します。
じつは、4日前のブログから来る11月の日本ストレス学術総会での研究発表の備忘録を書いていきます。
4日前のブログ(研究背景)はこちらです。
3日前のブログ(研究結果と解釈)はこちらです。
2日前のブログ(研究結果と解釈)はこちらです。
きのうの検定結果はこちらです。
まだまだ分析をしているので、今日も研究結果と結果の解釈について書いていきます。全貌を一目したい方はどうぞ日本ストレス学術総会11月3日にいらっしゃってください。
運動習慣の有無および不安顕在度(高・標準)がストレスレベルに及ぼす影響4群の比較検定結果
本研究は、運動習慣の有無および不安顕在度(高・標準)がストレスレベルに及ぼす影響を4群で比較した。各群のストレスレベルは運動中に測定し、Kruskal-Wallis検定を用いて群間の差を検証した。結果として、ストレスレベルに統計的に有意な差は認められなかった(p=0.150)。ペアワイズ比較(Mann-Whitney U検定)も実施したが、いずれの比較においても有意差は確認されなかった。
方法
被験者は運動習慣の有無および不安顕在度に基づいて以下の4群に分類した。
1. 運動習慣無し群(n=5)
2. 運動習慣有り群(n=5)
3. 高顕在性不安群(n=3)
4. 標準および低顕在性不安群(n=7)
ストレスレベルは運動時に測定し、Figure 11では各群のストレスレベルの分布が箱ひげ図として示す。Kruskal-Wallis検定を実施して群間の有意差を確認し、p値の有意性を確認するためにBonferroni補正を行なった。また、Mann-Whitney U検定を用いて各群間のペアワイズ比較も実施した。
結果
Figure 11で示す通り、各群のストレスレベルにおいて目立った群間差は確認されなかった。Kruskal-Wallis検定の結果、H値は5.32、p値は0.150であり、統計的に有意な差は認められなかった(**Table 16**)。また、table 15に示すように、各群のストレスレベルの中央値と平均ランクは
– 運動習慣無し群:中央値 41.0、平均ランク 39.20
– 運動習慣有り群:中央値 47.0、平均ランク 46.26
– 高顕在性不安群:中央値 37.5、平均ランク 39.19
– 標準および低顕在性不安群:中央値 40.0、平均ランク 39.44である。
ペアワイズ比較の結果(Table 14)、Bonferroni補正後のp値は全ての比較で有意ではなく、群間での差は確認されなかった。
結果の解釈
本研究では、運動習慣の有無や不安顕在度がストレスレベルに影響を与える可能性を検討したが、統計的に有意な差は見られなかった。この結果は、運動習慣や不安顕在度がストレスレベルに直接的な影響を及ぼすかどうかについては明確な結論を得られない。
一方で、運動習慣有り群が他の群よりも若干高いストレスレベルを示している点は興味深い。これは、運動習慣を持つ者が、運動によって一時的にストレスレベルが上昇する可能性を示唆するものかもしれない。しかし、これが統計的に有意ではないため、今後の研究では運動の種類、強度、頻度など、ストレスレベルに影響を与える他の要因を検討する必要がある。
また、ペアワイズ比較においても有意な差が確認されなかったことから、顕在性不安の影響はストレスレベルにおいて顕著ではなかったと考えられる。この結果は、顕在性不安が必ずしも生理的ストレス反応に直接反映されるわけではないことを示唆している。
結論
運動習慣の有無および不安顕在度に基づいたストレスレベルの群間比較において、有意な差は確認されなかった。運動習慣や不安顕在度がストレスレベルに与える影響を明確にするには、さらなるサンプルサイズの増加や、運動強度や心理的ストレス因子などの他の要因を考慮した研究が必要である。
これで検定結果はすべてです。明日からは考察にはいります。