ストレス研究memo
タニカワ久美子のストレス管理研究Vol.150
2024年10月10日更新
こんにちは、けんこう総研のタニカワ久美子です。
じつは、おとといのブログから来る11月の日本ストレス学術総会での研究発表の備忘録を書いていきます。
おとといのブログ(研究背景)はこちらです。
きのうのブログ(研究結果と解釈)はこちらです。
今日も分析結果とその解釈について、書いていきます。
運動習慣の有無による10:30〜10:57の間の1 MET活動におけるストレスレベルの比較結果
図6は、運動習慣の有無による10:30〜10:57の間の1 MET活動におけるストレスレベルの比較を示している。この比較には、マン・ホイットニーU検定を用いた。運動習慣あり群のストレスレベルの中央値は38.0、運動習慣なし群の中央値も38.0であった(図6)。U統計量は583.5、p値は0.737であり、両群間に有意差は見られなかった(p > 0.05)。
研究の解釈
この検定では、運動習慣の有無が短時間の軽度活動時(1 MET)におけるストレスレベルに及ぼす影響を調査したが、運動習慣あり群と運動習慣なし群の間に有意差は認められなかった(p = 0.737)。この結果から、短期間の軽度運動(1 MET程度)は、運動習慣に関わらずストレスレベルに対して即時的な影響を与えない可能性が示唆される。
考察
運動が長期的にはストレス軽減効果を持つとされる多くの先行研究がある一方で、短時間の軽度運動の即時的な効果に関しては一貫性が見られないことがある。ただし、運動習慣の種類や運動強度、また測定されたストレス指標が影響を与えた可能性があるため、今後の研究ではこれらの要因を考慮した検討が必要である。
運動習慣の有無による2〜3 MET活動時(AM 10:57〜11:12)のストレスレベルの比較結果
図7は、運動習慣の有無による2〜3 MET活動時(AM 10:57〜11:12)のストレスレベルの比較を示している。この比較には、マン・ホイットニーU検定を使用した。運動習慣あり群のストレスレベルの中央値は46.0、運動習慣なし群の中央値は52.0であった(図7)。U統計量は91.5、p値は0.284であり、両群間に有意な差は認められなかった(p > 0.05)。
研究の解釈
本研究における2〜3 METの活動(軽度から中程度の活動)時のストレスレベルに関する解析では、運動習慣あり群と運動習慣なし群の間に統計的な有意差は認められなかった(p = 0.284)。運動習慣なし群の中央値(52.0)は運動習慣あり群の中央値(46.0)よりも高かったものの、この差は有意ではなかった。
これらの結果は、軽度から中程度の身体活動においては、運動習慣の有無が即時的なストレス反応に顕著な影響を与えないことを示唆している。また、短期的なストレスレベルに対する影響は運動強度や活動時間に依存する可能性があると考えられる。
考察
先行研究では、運動習慣がストレス耐性やストレス軽減に有益であることが示されているが、即時的な影響については今後さらなる検討が必要である。
本研究の結果から、運動の効果を検討する際には、運動の頻度、強度、またストレス測定のタイミングが重要であることが示唆される。特に、長期的な習慣としての運動が心理的ストレスに与える影響をより深く理解するためには、さらなる長期的な追跡研究が求められる。
図8および表6・表7の結果
図8および表6・表7は、頭在性不安の段階別(I・III・IV・Vの4群)における運動時の心拍数の分布を比較したものである。この比較には、クラスカル・ウォリス検定を用いた。
表6に示す通り、各群の中央値は以下の通りであった。高不安群(I度)は74.0、標準群(III度)は70.0、低不安IV度群は73.5、低不安V度群は62.5であった。クラスカル・ウォリス検定の結果、検定統計量H値は48.40、p値は1.75e-10(p < 0.001)となり、統計的に有意な差が認められた(表7)。
研究の解釈
本研究におけるクラスカル・ウォリス検定の結果から、頭在性不安の段階別に心拍数に有意な差が存在することが明らかとなった(p < 0.001)。具体的には、高不安群(I度)および低不安(V度)群の心拍数の中央値に顕著な違いが見られた。高不安群の心拍数中央値は74.0と比較的高く、一方で低不安V度群の心拍数中央値は62.5であり、最も低い値を示した。 これらの結果は、不安の程度が運動時の心拍数に影響を与える可能性を示唆している。先行研究においても、心理的ストレスや不安が心拍数の上昇と関連していることが報告されており、本研究の結果はこれを支持するものである。特に、高い不安を感じている被験者では、運動時に心拍数が上昇しやすいことが示された一方で、低不安V度の被験者では運動時の心拍数が低い傾向にあることが確認された。
考察
運動が心理的ストレスや不安の調整において有効な手段である可能性を示唆しており、今後の研究では、運動強度や運動の種類がこれらの心理的指標に与える影響について、さらなる検討が必要である。