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ストレス研究memo

タニカワ久美子のストレス管理研究memoVol.145

2024年10月5日更新

こんにちは、けんこう総研の代表研修講師タニカワ久美子です。
不安やストレスが心拍数の上昇に関連していることについての研究論文は、非常に多くあります。

その中でもよく引用されている研究の一つに、2000年に発表された”A model of neurovisceral integration in emotion regulation and dysregulation(感情調整と自律神経の関係:「神経内臓統合モデル」)”があります。
今日は、この論文の解説をしていきます。

社内研修参加者

ThayerとLaneが提唱した「神経内臓統合モデル」に基づき、心拍変動(HRV)と感情調整、自律神経の関係について解説します。HRVが高いほどストレスに柔軟に対応でき、心身の健康が保たれます。HRVを高める方法やその実践により、企業や個人の健康経営にも役立つストレス管理法を学びましょう。

原著論文について

著者は、Thayer, J. F., & Lane, R. D.の2名です。
発表したジャーナルは、Journal of Affective Disorders
論文「感情の調整と調整不全における神経内臓統合モデル」(Thayer & Lane, 2000)は、こちらからアクセスできます。
ただし、この記事へのアクセスには購読や所属機関を通じたアクセスが必要な場合があります。もしアクセスできない場合、オープンアクセスのリポジトリで探してみてください。

では始めていきますね。

感情調整と自律神経の関係:「神経内臓統合モデル」とは?

感情調整**と**自律神経**の関係について理解することは、**ストレス管理**や**メンタルヘルスケア**において非常に重要です。本記事では、ThayerとLaneによる「**神経内臓統合モデル**」をもとに、感情調整における自律神経の役割とその影響について解説します。

神経内臓統合モデルの基本

「**神経内臓統合モデル**」は、脳と心臓を含む**自律神経系**がどのようにして**感情調整**に関与しているかを説明する理論です。このモデルでは、脳と心臓の相互作用、特に**心拍変動(HRV)**が感情のコントロールに大きく影響するとされています。

心拍変動(HRV)は、心臓の拍動の間隔の変動のこと

・心拍変動が高い=ストレスや感情に柔軟に対応できていると言えます。
心拍変動がが低い=ストレス耐性が低下し、感情の調整がうまくいかなくなります。心拍変動がが低い人は、特にメンタルヘルス不調の人が多いことは明らかになっています。

脳の前頭前野でおこなわれる感情調整

脳の前頭前野は、感情調整の中心的な役割を果たしています。前頭前野は、感情の制御やストレスへの対応を助ける働きをしています。前頭前野が適切に機能することで、感情をコントロールし、適切な反応を選択することが可能になります。

前頭前野と心臓との迷走神経の関係

前頭前野と心臓は、迷走神経を通じて連携しています。

迷走神経の役割

迷走神経は、心拍数をコントロールするだけでなく、リラクゼーションを促進し、感情調整の柔軟性を高めます。
迷走神経が働くことで、ストレスに対する適応力が向上していきます。

感情調整不全と心拍変動の低下

感情調整不全は、心拍変動(HRV)の低下と関連しています。
先程もお伝えしましたが、
心拍変動が低いと、感情的に不安定な状態を示し、ストレスへの対処能力が低下していることを示します。

慢性的なストレスにさらされると、脳の前頭前野の機能が低下し、感情調整が難しくなります。この結果、感情的な過剰反応やストレスが悪化し、心理的な問題がさらに進行してしまいます。

自律神経のバランスと感情調整

自律神経は、交感神経系と副交感神経系に分かれてます。交感神経系と副交感神経系のバランスが感情調整において、とても重要です。
交感神経系は、ストレスや危機に対応するための「戦うか逃げるか(fight or flight)」反応を引き起こします。
副交感神経系は、リラックスや回復を促進します。
交感神経系と副交感神経系のバランスが崩れると、感情調整が困難になり、ストレスに対して過剰に反応してしまう可能性があります。

心拍変動を改善する方法

繰り返しますが
心拍変動(HRV)は、ストレス管理には、非常に重要な評価指標です。
心拍変動(HRV)を高める方法には、深呼吸や、静的ストレッチ、リラクゼーション技法などが効果的です。これらの運動を数分間でも行うことで、副交感神経系が活性化し、感情調整を向上させましょう。

まとめ

今日、ご紹介した論文は、心拍数変動性(HRV: heart rate variability)と情動調整に関する神経生理学的モデルについて書かれています。ストレスや不安が自律神経系に与える影響についての重要な研究論文です。とくに論文では、不安が心拍数上昇と関連していることを強調しています。
私もこの心拍変動について「日本ストレス学会学術総会」で発表します。現代社会において、メンタルヘルスやストレス管理はますます重要なテーマとなっています。ThayerとLaneの「神経内臓統合モデル」は、私たちが心と体のバランスを保つための新しいアプローチを提供してくれました。特に、企業や個人にとってこのモデルを活用することは、ストレスを軽減し、健康経営の推進にもつながります。

ぜひ、皆さんもご自身の心拍変動(HRV)に意識を向けて、日常のストレス対策に役立ててみてください。小さな変化が、心身の健康を大きく改善するかもしれません。

次回のブログでは、実際にHRVを測定し、ストレス管理に活用する具体的な方法についてご紹介しますので、お楽しみに!

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