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ストレス研究memo

スマートウオッチによる精神的ストレス研究Vol.128

2024年8月23日更新

ストレス研究の分野では、日々新しい発見がされていますが、最近特に注目されているのが、脳波(EEG)と皮膚の電気活動(GSR)を組み合わせたシンプルなシステムについての研究です。
このシステムは、通常の複雑な装置とは異なり、1つの測定点からデータを収集するだけで、非常に高い精度で私たちのストレスレベルを判断できるというものです。

ふつう、脳波を測定するには、頭に複数の電極を取り付け、脳のさまざまな部位からデータを集めます。しかし、この研究では、特定の1つの場所からだけデータを収集するというアプローチを取りました。1ケ所だけでも、ストレスを見分けるために必要な情報を十分に得ることができることがわかったのです。

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ウェアラブルデバイスを使用したストレス評価は、低コストでユーザーフレンドリーなストレスモニタリングツールとしての可能性を示しており、今後の応用範囲が広がることが予測されます


この新しい技術は、簡単に使用できるだけでなく、私たちの健康管理に大きく貢献する可能性を秘めています。今日のブログでは、この研究の詳細や、どのようにしてこの技術が日常生活で役立つのかをさらに掘り下げていきたいと思います。

参考文献はこちらです。

Lamis Abdul Kader,Fares Al-Shargie ,Usman Tariq,Hasan Al-Nashash,「One-Channel Wearable Mental Stress State Monitoring System」Sensors Journal,2024, 24(16), 5373

調査対象者と人数

この研究では、20名が参加しました。参加者は年齢や性別などの背景が異なり、さまざまな日常的なストレス要因に対して異なる反応を示すことが予測されました。ですので、システムの汎用性と信頼性を評価するための多様なデータが収集されました。

方法

実験では、被験者の前頭前皮質と腹側前頭前皮質に1チャンネルの電極を装着し、脳波(EEG)と皮膚電気活動(GSR)のデータを同時に取得しました。EEGの信号は、特定の周波数帯域でのパワースペクトル(信号の周波数成分がどのようにエネルギーとして分布しているか)を推定することでストレスレベルを評価しました。GSRデータは、皮膚の導電性の変化を計測し、これもストレスレベルの指標として使用されました。

ストレス研究のあんちょこ

「皮膚の導電性の変化」とは、皮膚の表面(汗腺活動)が電気をどれだけ通すかの変化をみます。

皮膚の導電性は、「ガルバニック皮膚反応(GSR)」か「皮膚電気活動(EDA)」として測定します。
これは、皮膚の表面が汗で湿ると導電性が増すという原理に基づいています。ですので、ストレスや緊張を感じると、交感神経が活性化され、汗腺がより多くの汗を分泌します。この結果、皮膚の導電性が上がり、これがGSRセンサーによって検出されます。

この変化は非常に敏感で、微妙な感情の変化やストレスレベルの変動を捉えることができるため、ストレスモニタリングにおいて重要な指標となります。GSRは簡便で非侵襲的な方法であり、リアルタイムでの感情やストレスの評価に広く使用されています。

こうして収集されたデータは5つの異なる機械学習分類器により処理されました。これにより、被験者が経験しているストレスレベルを2つのレベルに分類しました。EEGのデータのみを使用した場合の最大分類精度は70.3%でしたが、EEGとGSRのデータを融合した場合、精度は84.6%に向上しました。

考察

この研究の成果は、従来の多チャンネルEEG装置やコントロールされた環境下での実験に比べ、コスト効率が高く、現実の環境でも使用可能なシステムの開発に貢献するものでした。特に、1チャンネルのみで高精度のストレス評価が可能であることは、ウェアラブルデバイスの設計において重要な進展です。これにより、デバイスの装着が容易で、日常的な使用に適した設計が可能になりました。

限界点

この研究にはいくつかの限界点もあります。まず、被験者の数が限られているため、データの一般化には慎重さが求められます。また、1チャンネルのシステムであるため、データの解像度が多チャンネルシステムと比較して低く、より複雑なストレス状態を評価する際には限界がある可能性があります。さらに、GSRデータの取得には皮膚の状態が影響を与えるため、デバイスの精度にばらつきが生じる可能性があります。

この研究はウェアラブルデバイスを使用したストレス評価において重要な貢献をしており、さらなる研究と開発が期待されます。このシステムは、低コストでユーザーフレンドリーなストレスモニタリングツールとしての可能性を示しており、今後の応用範囲が広がることが予測されます。

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