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ストレス研究memo

最新ストレス研究Vol.120/プレッシャーを感じる運動について

2024年8月6日更新

皆さま、こんにちは。けんこう総研のタニカワ久美子です。今日は2024年8月6日、連日連夜パリオリンピックでのアスリートたちの熱戦が報じられています。選手たちの素晴らしいパフォーマンスを見ると、私たちも積極的に何か運動を始めたくなる気持ちになりますね。運動は心身の健康にとても良い影響を与えることは広く知られています。

今日は特に親御さんに向けて重要なメッセージをお伝えしたいと思います。それは、親が子供に強制して運動を薦めることが、子供のメンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性があるということです。

健康運動講師タニカワ久美子と受講生

運動をするにあたって、どのような状況で行うかが大切です。


本日紹介するのは、2023年に発表されたティモシー・オールズ (Timothy Olds) らの研究です。この研究は、運動が心理的なストレスに与える影響について詳しく調査し、特に強制的な運動がストレスを増大させることを説明しています。オリンピアンの活躍を見て運動を始めるのは素晴らしいことですが、無理強いではなく、自主的な運動の方が心理的にも良い影響をもたらすということを、ぜひご理解いただければと思います。
それでは、詳細な解説に入っていきます。

運動が心理的なストレスに与える影響

ティモシー・オールズ (Timothy Olds) らによる2023年の研究は、運動が心理的なストレスに与える影響、特に強制的な運動がどのようにストレスを増大させるかについて検討しています。
ティモシー氏らの研究は、定期的な運動が健康に良いとされる一方で、運動の経験や認識が個人によって大きく異なることを強調して説明しています。
特に、運動が強制的であると感じる場合、一部の人々にとっては心理的なストレスと不快感を増大させる可能性があるとも言っています。

調査対象者

ティモシーらの研究は、成人を対象としたランダム化比較試験 (RCT) の系統的レビューおよびメタアナリシスを基にしています。調査対象者は、全体で128,119人の成人で、うつ病、ストレス、または不安を抱えている個人が含まれます。

あんちょこ

系統的レビュー

:文献収集を行い、既存のエビデンスを統合する広範な方法のこと。

メタアナリシス

:その一部として数値データを統計的に解析し、全体的な効果を定量的に評価する手法です。

方法

1. データ収集
うつ病、不安、心理的苦痛に対する運動の影響を評価するために、ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial, RCT)での系統的レビューとメタアナリシスを実施しました。

2. 解析手法
メタアナリシスにより、運動がうつ病、不安、心理的苦痛に与える影響を統計的に解析しました。
効果の大きさを標準化平均差 (SMD) を用いて評価しました。うつ病に対する運動の効果は−0.43、不安に対する効果は−0.42、心理的苦痛に対する効果は−0.60と報告されています。

考察

1. 運動の有益性
研究は、運動がうつ病、不安、心理的苦痛を軽減する効果があることを明確に示しています。特に、高強度の運動はより大きな改善効果をもたらすことが確認されました。
うつ病、HIV、腎疾患を持つ人々、妊娠中および産後の女性、そして健康な個人に対して、運動が顕著なポジティブな効果をもたらすことが示されています。

2. 心理的ストレスの緩和
強制されない自発的な運動が特に心理的なストレスを軽減する効果があることが強調されています。これにより、運動は心理的健康の向上に寄与する有効な手段として位置づけられています。

3. 運動のモードと強度*
さまざまな種類の運動が有効であることが確認されていますが、特に高強度の運動が最も効果的であることが示されました。これにより、運動プログラムを設計する際には、個々のニーズや好みに応じた柔軟なアプローチが推奨されます。

限界点

1. 研究デザインの異質性
対象とした研究は多様であり、運動の種類、強度、頻度、持続時間が異なるため、結果の統一性に欠ける部分があります。これはメタアナリシスの一般的な制約ですが、特にこの研究では、異質性が高いため結果の解釈に注意が必要です。

2. サンプルの偏り
一部の研究は特定の集団(例えば、うつ病患者やHIV患者)に焦点を当てているため、一般化可能性に限界があります。

3. 自己報告バイアス
多くの研究が自己報告に基づいており、これは結果の信頼性に影響を与える可能性があります。参加者が自身の運動習慣や心理的状態を正確に報告するかどうかは不確実であり、これが結果に影響を与える可能性があります。

4. 長期的な効果の不確実性
この研究では、短期的な運動の効果に焦点を当てているため、長期的な効果についての理解はまだ十分ではありません。

ティモシー・オールズらの研究は、。運動が義務やプ運動がどのような状況で行われるかが大切だということを述べています。プレッシャーと感じられる場合、それはストレスを軽減するどころか増大させることがあります。これは、一般的にストレスの軽減や精神的な健康の改善と関連付けられる自主的な運動とは対照的です。

この研究では、多次元的なアプローチを使用してストレス反応を評価しており、生理的および心理的な反応の両方を考慮しています。すべての運動が精神的な健康に有益であるわけではなく、特に義務感から行われる運動は心理的なストレスを悪化させる可能性があることが示されました。

さらに詳しい情報は、以下のリンクから研究の全文をご覧いただけます
ブリティッシュ・ジャーナル・スポーツ医学

皆さま、いかがでしたか?今日の解説では、ティモシー・オールズ (Timothy Olds)氏 らの研究を通じて、運動が心理的ストレスに与える影響について学びました。オリンピックの熱戦を見て、積極的に運動を始めることは素晴らしいですが、無理強いせず、楽しく続けることが大切だということを再確認できましたね。親御さんは、子供たちに運動を強制するのではなく、彼らが自発的に楽しんで運動に取り組めるようにサポートしてあげてください。心と体の健康は両立してこそ、本当の意味での健康と言えるのではないでしょうか。
今日はここまでとさせていただきます。明日もお楽しみに!けんこう総研のタニカワ久美子でした。またお会いしましょう

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