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ストレス研究memo

最新ストレス研究Vol.119ストレスホルモンが与える心血管の健康

2024年8月5日更新

暑中お見舞い申し上げます、今日も朝から暑いですねお元気ですか?タニカワ久美子です。今日は、2023年に発表されたBen Singhらの画期的な研究論文「Association of Stress Hormones and The Risk of Cardiovascular Diseases」について詳しく解説していきます。この研究は、アメリカ心臓協会のScientific Sessionsから発表された、ストレスホルモンが心血管の健康に与える影響についての最新情報です。

タニカワ講師

メンタルヘルスの不調は多面的な原因によるものであり、治療や対策も総合的に行う必要があります。

ストレスホルモンと心血管疾患リスクの関連性に関する最新研究の背景と目的

この研究の目的は、ストレスホルモン(コルチゾール、ノルエピネフリン、エピネフリン、ドーパミン)が心血管疾患のリスクにどのように影響するかを明らかにすることです。ストレスは現代社会において避けられない要素であり、その生理的な影響が心血管系に及ぼす影響は広く議論されています。しかし、具体的なホルモンレベルとリスクの関連性についての詳細な研究は限られていました。

ストレスホルモンには、交感神経に作用するホルモンと副交感神経に作用するホルモンの2つの要素があります。それぞれのホルモンについてどちらに作用するかを見ていきましょう。

交感神経に働くストレスホルモン

交感神経は、「闘うか逃げるかを決める反応」です。身体を迅速に行動させるために必要な反応を引き起こします。
この神経に働く主なホルモン
1.コルチゾール
コルチゾールは副腎から出てくる神経伝達物質です。長い期間のストレスに対応するのを助けます。エネルギーを増やしたり、免疫力を弱めたりします。
交感神経に働きますが、主に長い期間のストレスに対応するために働きます。

2.ノルエピネフリン(ノルアドレナリン):
ノルエピネフリンは交感神経の末端から出て、心臓の拍動を速くしたり、血圧を上げたり、血糖値を上げたりして、すぐに「戦うか逃げるかの反応」を引き起こします。
交感神経に直接働きます。

3.エピネフリン(アドレナリン)
エピネフリンは、副腎の髄質から出る神経伝達物質です。ノルエピネフリンと似た働きをします。急にストレスがかかったときに心臓の拍動を速くしたり、血圧を上げたり、気道を広げたりします。
交感神経に直接働きます。

<h2副交感神経に働くホルモン

副交感神経は「休んで消化する」(rest and digest)働きをします。体をリラックスさせ、エネルギーを保存したり回復したりするのを助けます。

副交感神経に働くストレスホルモン

1.ドーパミン
ドーパミンは脳内で働く神経伝達物質です。快楽や報酬に関係しています。ストレスに直接は関係しませんが、気分を良くしたり、やる気を出させたりするので、心理的ストレスの緩和に役立ちます。
副交感神経にも影響しますが、さらに交感神経にも影響を与えます。ドーパミンはストレスの影響を調節する役割を持っています。

このホ4つのストレスに作用する物質は、身体のストレス応答を調整するために複雑に相互作用しています。

調査対象者と方法

この研究の対象となったのは、高血圧を持たない成人412名です。これらの参加者は、MESA(Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis)という多民族コホート研究に基づいて選ばれました。
12時間の夜間尿検査を通じて、ストレスホルモンのレベルが測定され、その後平均6.5年間の追跡調査が行われました。この追跡調査期間中に、参加者の高血圧や心血管イベント(胸痛、動脈開通処置の必要、心臓発作、脳卒中など)の発生を記録しています。ですが具体的にこの研究では、運動習慣が調査されたかどうかは明記されていません。

主要な結果

1. 高血圧のリスク増加
ストレスホルモンのレベルが2倍になるごとに、高血圧のリスクが21-31%増加しました。これは、ストレスホルモンが自律神経系を介して血圧の調節に影響を与えるためです。

2. 心血管イベントのリスク
特にコルチゾールレベルが2倍になると、心血管イベントのリスクが90%増加することが示されました。コルチゾールは、ストレスに対する体の反応を調節するステロイドホルモンであり、慢性的に高いレベルが持続することで、血糖値の上昇、炎症反応の促進などを通じて心血管系に負荷をかけます。

考察

この研究は、ストレスホルモンが心血管の健康に重大な影響を及ぼすことを明らかにしました。特に、コルチゾールの持続的な上昇が心血管イベントのリスクを大幅に高めることが示された点は重要です。この知見は、日常生活におけるストレス管理の重要性を再認識させ、健康維持のための具体的な対策を考える上で有益です。
ストレス管理には、適度な運動、バランスの取れた食事、十分な睡眠、リラクゼーション技術の習得などが含まれます。これらの方法は、ストレスホルモンのレベルを低下させ、心血管の健康を保つのに役立ちます。

研究の限界と今後の課題

この研究にはいくつかの制約がありました。まず、高血圧を持つ人々を含まない点です。このため、既に高血圧を持つ人々に対するストレスホルモンの影響を評価するためには、さらなる研究が必要です。また、尿検査のみでホルモンレベルを評価したため、他の測定方法を併用することで、より精度の高いデータを得ることが可能です。
さらに、ストレスは個人差が大きく、その影響を正確に測定することは難しいです。今後の研究では、より多様な対象者を含めた大規模な調査や、複数のホルモン測定方法を併用することが求められます。

まとめ

Ben Singhらの研究は、ストレスホルモンと心血管系の健康との関連性を深く理解するための重要なステップとなりました。この知見は、ストレス管理の重要性を強調し、予防医学における新たなアプローチを提案しています。ストレスホルモンの測定と管理を通じて、心血管疾患のリスクを減少させることが期待されます。

今後も引き続き、ストレスと心血管の健康に関する最新の研究を紹介していきますので、どうぞお楽しみに。

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