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ストレス研究memo

最新研究Vol.117・運動が与えるプラスの心理的ストレス

2024年8月3日更新

本日は、現代社会におけるストレス管理において、運動の効果について取り上げていきます。
私たちの忙しい生活の中で、心理的ストレスの軽減は重要なテーマです。その中でも、運動が果たす役割について、最新の研究をもとに考察していきます。

昨年発表された2つの注目すべき研究をご紹介します。

運動の心理的健康への効果

エンドルフィンの分泌や心理的レジリエンスの向上といった具体的なメカニズムを通じて、運動は私たちの心と体に多大な利益をもたらします。

ナレル・イーサー(Narelle Eather)らとリーバイ・ウェイド(Levi Wade)らの研究

1つは、ナレル・イーサー(Narelle Eather)らによる、運動中および運動後のエンドルフィン分泌が心理的ストレスの軽減効果の2023年の研究です。。
もう一つは、リーバイ・ウェイドらによは、運動がストレス耐性を高め、精神的な安定感や幸福感を向上させることへの研究です。

それぞれの研究が
どのように運動が精神的健康に影響を与えるかを探り、
心理的ストレスに対する自然な緩和手段として運動がどのように機能するかを詳しく見ていきましょう。

エンドルフィン分泌のメカニズム

エンドルフィンとは、脳の視床下部および下垂体によって生成される神経伝達物質のことです。鎮痛作用と幸福感を引き起こす効果があります。運動中や運動後に、身体のストレス反応によってこれらのエンドルフィンが分泌され、痛みの軽減と共にストレスの低減を促進します。

運動と心理的ストレス

Eatherらの研究では、定期的に運動を行う成人参加者を対象に、運動前、運動中、および運動後の心理的ストレスレベルを測定しました。その結果、運動後のエンドルフィン分泌の増加とストレスレベルの低下に有意な関連が認められました。これにより、運動がストレス管理の有効な非薬物的介入手段であることが確認されました。

運動の種類とエンドルフィン分泌

運動の強度と種類は、エンドルフィン分泌の程度に重要な役割を果たします。
研究によると、エアロビクス(例:ランニング、サイクリング)と無酸素運動(例:ウェイトリフティング)の両方がエンドルフィン分泌を促進しますが、その効果の大きさは異なる場合があります。特に高強度の運動は、より多くのエンドルフィン分泌を引き起こし、ストレスの大幅な低減と気分の改善に繋がります。

メンタルヘルスへの広範な影響

定期的な運動は、エンドルフィンレベルに影響を与えるだけでなく、メンタルヘルスの他の側面にも影響を及ぼします。例えば、チームスポーツへの参加は、うつ病や不安の症状の軽減、自尊心の向上、社会的つながりの強化と関連しています。これらの利益は、全体的な心理的健康とストレスに対する耐性の向上に寄与します。

結論

ナレル・イーサーらの研究は、運動によるエンドルフィン分泌が心理的ストレスの軽減にどのように役立つかについての理解を深める重要な証拠を示しています。定期的な運動を生活に取り入れることで、自然な神経化学的変化を活用し、精神的健康を向上させ、ストレスを効果的に管理することができます。この研究は、身体的および精神的な健康のために日常生活に運動を取り入れる重要性を強調しています。

リーバイ・ウェイド(Levi Wade)らによる2023年の研究も、運動がストレス耐性を高め、精神的な安定感や幸福感を向上させることを示しています。この研究では、特に運動が心理的レジリエンス(ストレスへの耐性)と精神的健康にどのように寄与するかを評価しました。研究は、COVID-19パンデミック中のイギリスにおける一般人口を対象に行われました。オンライン調査を通じて、参加者の運動レベル、レジリエンス(回復力)、生活の質(QOL)などを評価しました。調査には126名が参加し、運動レベルが高い人々は低いまたは中程度の運動レベルの人々に比べて、より高いレジリエンスと生活の質を持つことが示されました。

主な発見

1. 運動レベルとレジリエンス
運動レベルが高い人々は、ストレスに対する耐性が強く、生活の質が高いことがわかりました。運動量が増えることで、ストレスへの耐性も向上しました。

2. 精神的健康の役割
精神的健康と睡眠の質は、運動レベルとレジリエンスの関係を調整する重要な要因であることが判明しました。良好な精神的健康と高品質の睡眠が、運動の効果をさらに高めることが示されました。

3. 自尊心と自己効力感**:運動によって向上する自己効力感(自己の能力に対する信頼)は、ストレス耐性の向上に重要な役割を果たしていることが示唆されました。特に筋力トレーニングは、自己効力感を通じてストレス耐性を高める効果があるとされています。

この研究は、運動がストレス耐性を高め、精神的な安定感や幸福感を向上させる有力な手段であることを示しています。特に、定期的な運動と筋力トレーニングが自己効力感を強化し、これがストレスに対する耐性を高めることが確認されました。これらの結果は、精神的健康の促進とストレス関連障害の予防における運動の重要性を強調しています。

詳細については、BMC Public HealthとPubMedの論文をご覧ください。

出典

Narelle Eather et al.(2023):The impact of sports participation on mental health and social outcomes in adults: a systematic review and the ‘Mental Health through Sport’ conceptual model(成人におけるスポーツ参加が精神的健康および社会的成果に与える影響:システマティックレビューと「スポーツを通じた精神的健康」概念モデル);Systematic Reviews,(12),102

Levi Wade et al.(2023):Relationship between college students’ exercise motivation and mental health: Chain mediating effect of perceived social support and resilience;Social Behavior and Personality: An international journal,(51),8,e12485

ナレル・イーサー(Narelle Eather)らとリーバイ・ウェイド(Levi Wade)らの2023年の論文の相違点

ナレル・イーサーらの論文

焦点
運動中および運動後のエンドルフィン分泌が心理的ストレスを軽減する効果。

研究方法
システマティックレビュー。複数の既存研究を統合し、スポーツ参加が成人の心理的および社会的成果に与える影響を評価。

対象者
成人(18歳以上)の広範な年齢層。

結果
運動がエンドルフィン分泌を促進し、ストレスを軽減することを示す。

リーバイ・ウェイドらの論文

焦点
運動がストレス耐性、精神的安定感、幸福感を向上させる効果。

研究方法
クロスセクショナル調査。運動動機、社会的支援、レジリエンスとの関係を調査。

対象者は大学生。

結果
運動動機が精神的健康に正の影響を与え、社会的支援とレジリエンスがその関係を仲介する役割を果たすことを示す。

主な相違点

1. 研究対象: Eatherらは成人全般、Wadeらは大学生を対象。
2. 研究デザイン: Eatherらはシステマティックレビュー、Wadeらはクロスセクショナル調査。
3. 焦点の違い: Eatherらはエンドルフィン分泌とストレス軽減、Wadeらは運動動機と精神的健康の仲介メカニズムに焦点。

まとめ

ナレル・イーサー(Narelle Eather)らとリーバイ・ウェイドらの研究は、それぞれ異なる視点から運動の心理的健康への効果を示しています。
共通しているのは、運動がストレス軽減と精神的安定に寄与するという点です。エンドルフィンの分泌や心理的レジリエンスの向上といった具体的なメカニズムを通じて、運動は私たちの心と体に多大な利益をもたらします。

日常生活に運動を取り入れることで、心理的なストレスを自然に軽減し、より健康で幸福な生活を送ることができるのです。けんこう総研は、皆様が健康な生活を送るための情報を提供し続けてまいります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。今後も有益な情報をお届けしますので、ぜひお楽しみに。また、皆様からのご意見やご感想をお待ちしております。

それでは、明日のブログでお会いしましょう!

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