ストレス研究memo
肥満の低活動女性の運動へのストレス研究Vol.112
2024年7月28日更新
おはようございます、けんこう総研のタニカワです。今日ご紹介する研究論文は、「より効率的かもしれませんが、その代償は?肥満の低活動女性における高強度インターバル運動への快感と楽しさの反応」というタイトルの研究論文です。
キャッチーさを狙ったタイトルなのでしょうか?研究論文では少し度肝を抜くタイトルではありますね。かく言う私も肥満の低活動助成に属するのでドキッとするタイトルです(大汗)。この研究はこの研究は、高強度インターバル運動(HIIT)が効率的である可能性があるが、その運動がもたらす快感や楽しさに対する反応についての疑問を投げかけています。特に、肥満の低活動女性を対象にしている点に注目しています。
<概要
今日のストレス研究論文の詳しい内容はこちらをご覧ください。
「More efficient, perhaps, but at what price? Pleasure and enjoyment responses to high-intensity interval exercise in low-active women with obesity和訳:より効率的かもしれませんが、その代償は?肥満の低活動女性における高強度インターバル運動への快感と楽しさの反応)」
それではこの研究論文の中身を一緒に紐解いていきましょう。
推奨される身体活動レベルは肥満者でなくとも難しい
アメリカの肥満女性では、推奨される身体活動レベルに達しているのは1.5%未満です。アメリカでの成人の推奨される身体活動レベルは、一般的に週に150分の中強度の有酸素運動、または週に75分の高強度の有酸素運動とされています。また、筋力トレーニングなどの筋肉を強化する活動も週に2回以上行うことが推奨されています。これは、肥満者でなくとも一般成人のほとんどが困難案件ですね。
なのに、論文ではさらなる高みの、高強度インターバル運動(HIIE )日本でも運動愛好者に最近静かなブームになっているヒートのメリットを述べています。この上、おデブに何をさせろと言うんじゃ!
ヒートは、利益を早期に得られ、時間的なコミットメントを減らせるという二重の利点に基づいて、低活動の問題の解決策として論文では提案しています。しかし、HIIEの魅力と持続可能性について懸念が示されています。当たり前じゃあ。
目的とデザイン
本研究の目的は、HIIEとより長く、等カロリーの中強度連続運動(MICE)の運動中の感情的評価と運動後の楽しさを比較することでした。
同じ被験者が異なる条件下で実験を行う「被験者内実験」。
被験者内実験のメリット
1.個人差の影響が少ない
同じ参加者が異なる条件を経験するため、個々の違いによる変動を最小限に抑えることができます。
2.統計的なパワーの向上
同じ人数の被験者を使用した場合、被験者内実験の方が統計的なパワーが高くなる傾向があります。これは、各参加者が自分自身のコントロールとして機能するためです。
ただし、被験者内実験には順序効果(順番による影響)が発生する可能性があるため、実験の条件の順序をランダムにするなどの対策が必要です。
方法
低活動の肥満女性(N = 24)は、
1. 3分間のウォームアップ
2.ベンチサイクルで換気閾値の115%で行う3分間の4回のインターバル
3.換気閾値の85%で行う2分間の4回のアクティブリカバリー
4. 5分間のクールダウンからなるHIIEの1セッション
5. 3分間のウォームアップ
6. 換気閾値の90%で行うベンチサイクルでの25分間のMICEの1セッション
を順番に行いました。
運動中には
6. 「Feeling Scale(FS)」
クールダウン後には
7. 「Physical Activity Enjoyment Scale(PACES)」。
結果発表!
FS(条件と時間の相互作用は、p < 0.001, η2 = 0.27)およびPACES(p = 0.04, d = −0.38)において、どちらもMICEが優れている結果が見られました。
高強度の運動よりも中強度の連続運動は快感で楽しい!?
HIIEに比べてMICEでの快感と楽しさが高いことは、低活動の肥満女性にとってHIIEの生理的適応だけでなく、その魅力と持続可能性も考慮する必要があることを著者は強調しています。
このことは、HIIEがMICEよりも感情的な快感や楽しさの点で劣るという意味です。
具体的には、この研究では運動中と運動後の感情的な評価と楽しさを比較しており、HIIEの方がMICEよりも低いスコアを示しています。つまり、参加者は中強度の連続運動よりも高強度のインターバル運動の方が快感を感じにくく、楽しいと感じにくいと報告しています。
運動処方へのアプローチ
運動処方には大きく2つのアプローチがあります。
一つは、伝統的な中強度連続運動(MICE)で、長時間の運動を推奨しています。
MICEを推奨するの三つの理由
1) 臨床的に意味のある心代謝パラメータの適応を促進する刺激を提供する
2) けがや他の有害事象のリスクが低い
3) 大多数の人々にとって耐えうると考えられている。
争点
HIIEとMICEの議論は非常に分かれており、双方から強い意見が表明されています。HIIEの支持者は「HIIEがMICEよりも優れている」と確信しており、「高強度運動を全体的に普及させる時期が来た」と信じています。
HIIEの魅力と方法論的課題
HIIEの魅力は、さまざまな集団において未解明のままです。HIIEの「効果と著しい時間効率性」の対価は「深い疲労感」であるとされています。研究は運動中の感情的評価(快-不快)と運動後の楽しさという二つの中心的な要素に焦点を当てています。
本研究
HIIEの核心的特徴は、「全力」の努力または「VO2ピークを引き起こす強度」に近い強度の間隔(数秒から数分)と、「休息または低強度運動」の回復期(数分)の交互にあります。この研究では、異なる集団のためにHIIEの強度と量を適切に調整することを目指しています。
参加者
運動中の感情的評価における二つの依存変数の比較において、24名の参加者が必要とされました。参加者は、米国中西部の大規模な大学の教職員や学生に送られた招待状や掲示されたチラシを通じて募集されました。
操作確認
HIIE/全力間欠運動(AIT)のカロリー消費量とMICEのカロリー消費量の比較は有意ではありませんでした。HIIE/AITセッション中の%VO2ピークは高強度の間隔で平均90.12%、アクティブリカバリーの期間で平均64.92%でした。
ディスカッション
HIIEは、フィットネスと健康の利益を加速し、時間不足という主要な運動参加の障壁を回避できる有望なアプローチとして広く評価されています。しかし、運動に誘発される適応の多くは、非遵守や中断後に迅速に逆転するため、この方法が公衆衛生の分野で成功するかどうかは、持続可能性にかかっています。
論文の大まかな解説は異常となります。私の経験を少しお話しますと、確かにHIIE、所謂 筋トレは短時間で終わる、というより長時間できませんので長時間の中強度負荷の運動より「時間が短くて終わる!」ということは運動を開始する最初の「一歩」としてはハードルが低く感じます。けれども慣れない強度の負荷がかかった運動後にくる筋肉痛というリバウンドを乗り越えて定期的に運動ををするかというと出来るわけがありません。最初から高強度負荷の運動を開始すると、運動を習慣化させられないので長期スパンを考慮に入れておくことが必要ですね。