ストレス研究memo
有酸素運動がストレスの軽減に与える影響/ストレス研究Vol.110
2024年7月26日更新
こんにちは、けんこう総研のタニカワです。今日も暑くなりますが熱中症にならにように気を付けて運動行ってくださいね。
今日は、『運動、特に有酸素運動がストレスの軽減に与える影響』についての論文を解説していきます。
出典De Geus, E. J. C., & Stubbe, J. H. (2007). Aerobic exercise and stress reduction. In G. Fink (Ed.), Encyclopedia of stress, pp. 73-78. New York: Academic.
1. 有酸素運動はストレスに対する身体の反応を調整する
有酸素運動は、心肺機能を向上させる運動です。ジョギング、サイクリング、水泳などの身体運動は、有酸素運動です。有酸素運動は、酸素の消費を増加させ、体内の酸素供給を効率的に行うために、心臓と呼吸器系の強化します。このような身体的な適応は、ストレスに対する身体の反応を調整するのに重要な役割を果たします。
2. ストレスとその生理的反応
ストレスは、身体的または心理的な脅威や要求に対する反応のことを言います。
ストレス反応は、
・交感神経系の活性化
・ホルモンの分泌(特にコルチゾール)の分泌
といった緊急事態への即時対応を可能にします。
こうしたストレス反応は、短期的には適応的で、危機的状況において適切な行動を取るのに役立ちます。
しかし、慢性的なストレスは身体に悪影響を及ぼし、心血管疾患や免疫機能の低下、精神的な問題を引き起こす可能性があります。
3. 有酸素運動のストレス軽減効果
De GeusとStubbeは、有酸素運動がどのようにしてストレスを軽減するかについてのメカニズムをいくつか説明しています。
まず、有酸素運動は、交感神経系の過剰な活動を抑制し、副交感神経系の活動を促進することで、ストレス反応を調整します。これにより、心拍数や血圧が低下し、リラクゼーションが促進されます。
次に、有酸素運動は、脳内の神経伝達物質であるエンドルフィンの分泌を増加させることが知られています。エンドルフィンは「幸福ホルモン」としても知られ、痛みの感覚を和らげ、快感をもたらす効果があります。これにより、運動後には気分が向上し、ストレスが軽減されることがあります。
さらに、定期的な有酸素運動は、ストレスに対する心理的なレジリエンス(抵抗力)を高める効果もあります。運動を通じて自己効力感や達成感が得られることで、ストレスに対する対処能力が向上し、ストレスフルな状況に対する反応が改善されるとされています。
4. 実証的な研究結果
著者たちは、さまざまな実証的な研究を通じて、有酸素運動がストレス軽減に与える効果を裏付けています。
たとえば、有酸素運動を行った被験者は、運動を行わなかった被験者に比べて、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が減少し、心理的なストレス感が軽減されたと報告されています。また、運動プログラムに参加した人々は、心理的なウェルビーイング(幸福感)の向上と、ストレスに関連する身体的症状の減少を経験しました。
5. 実際の応用と注意点
この研究は、有酸素運動がストレス軽減に有益であることを示していますが、個々の健康状態や運動の強度・頻度に応じて適切に調整することが重要です。過度な運動は逆にストレスを増加させる可能性があるため、適度な運動量を維持することが推奨されます。また、運動はストレス管理の一部であり、他のストレス管理技術と併用することが効果的です。
タニカワからの疑問
De GeusとStubbeの研究は、有酸素運動が身体的および心理的なストレス軽減に寄与する多くのメカニズムについて述べられています。この知見は、日常生活におけるストレス管理や健康増進のための運動プログラムの設計に役立つでしょう。ストレス社会と呼ばれる今、運動を通じたストレス軽減の方法を探ることは、健康で充実した生活を送るために不可欠です。
とは言え、
運動習慣のない人や運動嫌いな人が運動を行ってもストレス軽減があるのでしょうか?
疑問に対する論文からの回答
E.J.C. De GeusとJ.H. Stubbeの論文「Aerobic Exercise and Stress Reduction」において、運動習慣のない人が運動を始めた場合でもストレス軽減効果が得られるとされています。
具体的には、論文は以下の点を示唆しています:
初めての運動でも効果がある: 運動習慣がない人でも、有酸素運動を始めることでストレス軽減効果が期待できます。これは、運動が神経伝達物質のバランスを改善し、心理的なウェルビーイングを向上させるためです。
初期の適応: 初めて運動を行う人々は、運動の効果を強く感じることが多いです。運動による新たな体験や達成感が、ストレス軽減に寄与することがあります。
段階的な増加が重要: 運動習慣がない人は、急激な運動負荷を避け、徐々に運動量を増やすことが推奨されています。これにより、身体が運動に適応し、ストレス軽減効果を最大限に引き出すことができます。
ということは、やっぱり
運動がストレス管理に有効であることを強調しており、運動習慣がない人でもその効果を享受できるんですね。ただし、適切な強度と頻度で運動を行うことが重要ですよ!。
運動習慣のない人が運動を始めた場合でも心理的ストレスが軽減される論文の根拠
1.神経伝達物質のバランス改善:
運動はエンドルフィンやセロトニンといった神経伝達物質の分泌を促進します。これらの物質は「幸福ホルモン」とも呼ばれ、気分の向上やリラクゼーション効果をもたらします。
2.自己効力感の向上
運動を通じて新たなスキルを習得したり、目標を達成することで、自己効力感が高まります。これにより、ストレスに対する心理的なレジリエンス(抵抗力)が向上します。
3.身体的健康の改善
運動によって身体的な健康状態が改善されると、それに伴って心理的なストレスも減少します。健康状態の改善は、自己認識の向上やポジティブな自己評価に繋がるためです。
4.ストレス反応の調整
有酸素運動は交感神経系の活動を抑制し、副交感神経系の活動を促進します。これにより、心拍数や血圧が低下し、ストレス反応が和らぎます。
これらの効果は、運動習慣のない人でも運動を始めることで得られるため、心理的ストレスの軽減が期待できます。ただし、運動の強度や頻度は個人の健康状態や体力に合わせて調整する必要があります。運動の始めは
無理をせず、徐々に運動量を増やすことが推奨されます。
さらなるタニカワの疑問
そうは言っても、この研究の調査対象者はどうなってる?まさかアスリートとか、運動部の学生とか、青年とか、運動に何の抵抗もない群での包括的レビューになってない?
論文をよ~く読み込むと
E.J.C. De GeusとJ.H. Stubbeの「Aerobic Exercise and Stress Reduction」の論文自体が個別の調査データを報告しているかどうかについては書かれていません。この論文は、有酸素運動とストレス軽減の関係についての包括的なレビューであり、様々な研究から得られたデータや知見を総合的にまとめたものだからです。
一般的ストレス研究において調査対象となる研究
1.成人男女
多くの研究が成人男女を対象としており、年齢層は若年成人から中高年に至るまで幅広い。
2.運動習慣の有無
運動習慣のある人とない人を比較する研究が多い。これにより、運動の有無がストレス反応にどのように影響するかを評価できる。
3.健康状態の多様性
健康状態に応じたストレス反応の違いを評価するために、健康な人だけでなく、特定の健康問題を抱える人々も対象とすることがある。
4.具体的な調査対象者の詳細は、この論文の中で引用されている各研究のデザインやサンプルに依存します。レビュー論文では、個別の研究結果を統合して全体的な結論を導くため、対象者の特定は一般化されています。
もしかして偏りがあるってことよね
E.J.C. De GeusとJ.H. Stubbeの「Aerobic Exercise and Stress Reduction」という論文は、システマティックレビューではなく、より一般的なレビュー論文として分類されます。
システマティックレビューは定義が必要
システマティックレビューとは、特定の研究質問に対して厳密な方法論に基づいて既存の研究を包括的に収集、評価、統合するものです。
これには、研究の選択基準、データ抽出方法、バイアス評価などが明確に定義されている必要があります。
一方、この論文は有酸素運動とストレス軽減の関係についての全体的な理解を提供するために、既存の文献や研究結果を総合的にレビューしているものでした。システマティックレビューほどの厳密な方法論を採用しているわけではありません。したがって、特定の研究質問に対する厳密な評価よりも、広範な視点からの概観を提供することを目的としています。
そこを明確にしてるシステマティックレビューでも実態調査でもないってわけか
「より一般的なレビュー論文」とは、特定のテーマに関する既存の研究や文献を総括し、そのテーマについての全体的な理解や洞察を提供する論文を指します。
このタイプのレビューは、システマティックレビューとは異なり、厳密な選択基準や方法論を使用せず、対象とする文献の選定や評価においてより柔軟なアプローチを取ります。
実態調査とも異なります。
実態調査は新データの収集分析が必要
実態調査(empirical research)は、新たなデータの収集や実験、観察を通じて直接的な証拠を得ることを目的としています。実態調査では、特定の質問や仮説に対する回答を得るために、定量的または定性的なデータが収集され、分析されます。
一方、一般的なレビュー論文では、既存の研究結果や文献を整理、分析し、総括的な見解や知見を提供します。
一般的なレビュー論文
広範な文献の検討
特定のテーマについて多くの文献を取り上げ、それらを比較、対照し、重要なポイントを抽出します。
総括的な解説
既存の研究や知見を総括し、そのテーマに関する全体的な理解を促進します。
特定の方法論の不使用
システマティックレビューのように厳密な方法論や基準を使用せず、対象となる文献の選定や評価が著者の裁量に任されることが多いです。
したがってE.J.C. De GeusとJ.H. Stubbeの「Aerobic Exercise and Stress Reduction」の論文は、この意味での一般的なレビュー論文。、有酸素運動とストレス軽減の関係に関する既存の研究を総括しています。しかし、新たなデータ収集を行っているわけではありません
論文「Aerobic Exercise and Stress Reduction」主要ポイントのまとめ
E.J.C. De GeusとJ.H. Stubbeの論文全体像をざっと把握する、言い換えると概観して『運動がストレス軽減に有効であることが確認できました。